立場がわかるウォーキングのススメ | ことばのチカラLite

立場がわかるウォーキングのススメ

今日もD氏がボウフラのような格好でクネクネしながら歩いている。「前傾75度、あごを引き、後ろに残る足で蹴って前進するイメージで…」
何事も正しいフォームを身に着けるのは大切なことだ。

 Lesson.1)狭い歩道を歩いている。前から180cm近いスラッとした色男が歩いて来た。ちょうどすれ違うところに電信柱がある。
 そんなとき私は極力道を譲ることにしている。しかし今日の相手は私より一枚上手だった。私が立ち止まって相手を待とうとする先手を打って視線を合わせてきた。譲る動作が板についているばかりでなく、ジェスチャーまでつけて「どうぞ ^^)」。ニコッと笑う愛嬌に「こいつ俺のことが好きなんじゃないか?」と一瞬戸惑いながらも、なんとも言えず引き込まれ、不覚にも私も笑ってしまった。まったくいつもと逆の展開に調子を狂わされたのだが悪い気はしなかった。
 歩行者の立場はみんなわかっているが急いでいるときなどは中々この180cm氏のように道は譲れないものだ。

 Lesson.2)そういえば以前自転車で通勤していた頃歩道を走るのが大変だった。自転車にとって車道はあまりにも危険すぎる。ところが歩道では歩行者優先だ。そうかと言って降りて押していたら会社には間に合わない。これが自転車の立場だ。
 マウンテンバイクになると仏壇にあるような小さな鐘しかついておらず「チン」と一回しか鳴らない。それですぐ気づいてよけてくれる歩行者もいるがたいてい気づかないか、気づかない振りをしている。歩行者の歩道における歩行者優先意識というのは日本では実に絶大だ。
 翌週私は自転車ショップに行き大音量で人の声で注意を促すベルを購入した。「ピンポーン、ピンポーンすみませーん、自転車が通ります!」という音声を歩行者の後ろからいきなり大音量で流す。さすがにそれで道を開けてくれない人はいなくなった。

 Lesson.3)休日はドライブだ。交差点を左折するとき歩行者の信号はすでに「赤」になっている。自動車用の信号もすでに黄色だ。しかし歩行者はいつまでも渡っている。彼が渡り終わったとき結局車は一台も左折できず、『2回目の赤信号』を待つ羽目になる。これが自動車の立場だ。
 この事態を歩行者の意識を改めさせるのではなく、スクランブル交差点を作って歩行者用の信号と自動車用の信号に分けてしまう施策が全国で広まっている。日本では歩行者の横断歩道における歩行者優先意識というのも実に絶大だ。

 私は人の歩き方を見るとその人が運転免許証を持っているか、また自転車によく乗る人かどうかを当てることができる。すべての乗り物の立場を知っている人は、相対する歩行者に対して暗黙のうちに何が求められているかがわかるので自然に歩き方に差が出るのだ。
 どの学校でも自転車に乗る人のためにマナーと身を守るための交通ルールを教えてくれる。自動車の場合はもっと機会が多い。教習所、警察、街中の標語などなど。しかし歩行者に対する教育は意外に少ない。すべて歩行者優先で片付けられる日本では歩行者の歩き方など学ぶ必要はないのかもしれない。
 「立場がわかるウォーキング」を習得した人は、自転車や自動車を運転する人からだけでなく、すれ違うもう一人の歩行者からも一段と美しく見えるようになる。特別なトレーニングは必要なく、ここで言う立場を理解するだけで、今すぐマスターできるのだ。