Nommunication | ことばのチカラLite

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「アコ、イカウ、マハルキタ!」いつものように店内ではタガログ語が飛び交う。国際派を自称する私も一緒になってタガログ語を駆使し、場を盛り上げている。
 夕方の商談で仏頂面して私の話を聞いていたT部長はその日初めてお会いした取引先のキーパーソンだ。何を考えているのかわからないのでとりあえず池袋西口の安いフィリピンバーに連れてきたわけだ。
 これが同一人物かと目を疑うほどの変わりようにさすがの私もあきれたが、目の前のT氏はネクタイを頭に巻いてなんと『モーニング娘。』のヒット曲を激しい振りつきで踊っている。
 これが酒のチカラだ。

 有史以来人間には酒がついてまわっている。いろいろな効果、効用があるが最もシンプルな効果は気分がよくなること。そしてその場でともに飲んだ者同士が親しくなれること。これが一番おおきい。友となり、仲間となり「ここだけの話」が聞ける。
 個人的にはもともとそんなに強い方ではなく、ちょっと飲みすぎるとすぐ事故を起してしまう。取引先の社長に抱きついたり、店の備品を壊して出入り禁止になったりしたこともある。明るいほうに壊れるので恨みをもたれることがない点が唯一救われるところだ。

 効力の高い薬はたいてい副作用も大きい。痛風で苦しんでいる人を何人も見ているが、本当につらそうだ。またアルコール中毒になり出社しなくなった同僚もいた。酒は理性を失わせるため建前を崩し本音を聞けるという効用があるが、これも裏を返せばその本音の内容によっては致命的な結果にもなりかねない。

 笑い上戸、泣き上戸、絡み上戸に寝入り上戸。野生の部分が露出した人々の本来の姿はまさに千差万別。昼の間、「人と同じであることに命を懸けている」サラリーマンが、夜になるとこれだけ個性豊かになるのだ。
 事故を恐れてリミットを意識するようになった私だが、たまには思いっきり壊れてみたい。そして本当の自分を見てみるのもいいかもしれない。しかしそのためにはそれが致命傷にならない飲み仲間が必要だ。