一歩前へ踏み出す勇気を与えるコトバ | ことばのチカラLite

一歩前へ踏み出す勇気を与えるコトバ

 ここに一組のトランプがある。ジョーカーが1枚含まれており合計53枚。よくきった後でジョーカーを出すために何回かめくるとさすがに最初から出てくるということはめったにない。しかしここでわかっているのは53枚すべてめくれば必ずジョーカーが出てくるということだ。これを二組のトランプにして1枚ジョーカーを抜き、105枚にしてやってみると、ジョーカーにあたる確率が約半分になるのは納得してもらえると思う。しかしここでも当然のことながら、どんなにたくさんめくっても105枚めくれば必ずジョーカーにあたるという事実である。
 生きてく中で、このようにトランプをめくっていかなくてはならない場面は山ほどある。ある人は仕事でセールスの結果としてのスペードのキングを求めているかもしれない。またある人はプライベートで自分だけのハートのエースを探しているかもしれない。しかし自分の確率を正確に知っている人は少ない。私の経験則からいうとどんなに確率の悪い人でも300枚がいいところだろう。言い換えればどんなにコミュニケーション能力のない人であっても300人に会えば自分とまったく同じタイプの人間に会える。その人は仕事であろうが、プライベートであろうが、あなたに完全に共鳴してしまうので、あなたが望むことはその人が可能な範囲で何でもかなえてくれる。一歩前へ踏み出ためにここでは3つのアプローチを試してもらいたい。

最初のテーマは300枚のトランプをいかに減らしていくかということ。仕事におけるトレーニング、プライベートにおける魅力性の開発だ。あなたは自分のことが好きだろうか?自分がどれくらい好きかという限界値以上に人を好きになることはない。人を好きになることがない人は人からも好かれることはない。しかし好感度をあげない限り幸運を招きいれることはできない。
松下幸之助氏は人をとるとき今までの人生の中でその人は運がよかったか?という点を重視したらしい。『運がよかった人は必ず人から好かれた結果として人の協力を得ることができ、結果として本人には運がよかったと感じられる』
 好感度を具体的に上げる方法にはいくつかある。好かれたいと思う相手を好きになることだ。自分が好きでもない相手から好かれることがないのはいくらなんでもわかるだろう。それでもわからないのであればまず笑いかけてみることだ。微笑みかけるという行為自体が相手に対して「I like you.」場合によっては「I love you.」といっているようなものなので、男も女も魅力的な人は強力な笑顔を持っている。
 もうひとつ具体的に好感度をあげていく方法がある。相手を尊重することだ。平たく言えば相手の話を聞くということ。傾聴の魔術である。相手には価値があり、自分はその価値を認めていることを表明することが「傾聴」という行為に凝縮されている。想像してみれば納得がいくと思うが、自分しか興味ないだろうと思われることに目の前の人が共鳴し、関心を持ってくれたら自分はその人にどういう感情を抱くだろうか?決して悪い気はしない。それどころかもっと自分をわかってもらおうとして思わず熱弁をふるっている自分に気づくことだろう。そこで相手がさらに関心を持って質問などしてきたら、一生懸命それに答えようとするのではないか?それは自分の最大の関心事なのだから当たり前だ。誰にでも自分だけの世界があり、関心を持ってもらいたい話題がある。その人に好かれたいのなら、その話題を見つけ、それにフォーカスすることだ。
 魅力的で人から好かれる人というのは手持ちのトランプが非常に少ない。そして運がいいので1枚か2枚めくれば当たりが出るようなこともある。そうでない人はその現象だけに目を向けてはいけない。自分のトランプの手持ちも有限であり、必ずあたりが入っていることを認識しよう。

 2番目のテーマは渡された自分の能力に応じた枚数のトランプを当たりが出るまで、出なければ最後まで確実にめくり続けることができるようになることである。
誰でも失敗をすると次への挑戦に怯んでしまう。拒否されることに対する恐怖心が大きくなるからだ。しかし、その恐怖心を小さくすることができれば次のトランプをめくる行為はずいぶんと楽になる。そしてその恐怖心は実際に小さくすることができる。
ひとつ確実に約束できることは自尊心と拒否されることへの恐怖心には逆の相関関係があるということだ。自尊心の高い人は拒否されてもそれを個人的に受け止めない傾向がある。トランプはめくり続けなければならない。運がいい人でも最初の2,3枚であたりが出ることは少ない。しかしめくり続ければ必ずあたりが出るのだ。
 外資系の生命保険会社が税理士や医者、弁護士という社会的ステータスの高い人をセールスマンとしてリクルートするには意味がある。第一に彼らは顧客を持っているということがいえる。単に顧客名のリストを持っているというだけなら誰でも持つことは可能だろう。しかし彼らはその顧客一人ひとりから一目置かれている存在であり、ある意味尊敬されている。影響力があるのだ。そして彼らは自分に影響力があることを知っている。生命保険のセールスは大変なことだ。ほかのセールス同様、断られることが商売と考えたほうがいい。多くの人はお客から拒否されることにより自分自身が拒否されているように勘違いしてしまい自信をなくしてしまう。しかし彼らはどんなに拒否されても非常に冷静に考えることができる。「アプローチの仕方がまずかったのかな。では少し変えて次の人あたろう。」
 生命保険はいまや加入していない人を探すほうが難しいくらいみんな入っている。必要性がないのではなく必要性を認めているからすでに加入しており、そのために「もう必要ない。」といっている点が通常のほかのセールスの場合と事情が違う点だ。彼らはどんなに断られても決して気に病むことはない。たとえば、かかりつけの医者からわざわざ電話がかかってきて、体の具合を聞かれて失礼な対応をする人がいるだろうか?電話をかけるほうもそういうイメージを持っているので、その状況で失礼な対応をされても気に病むのではなく、相手をかわいそうに思うくらいかもしれない。
 松下幸之助の言葉に「やってみなはれ」というのがある。物事は始めることができればすでに半分完成したのも同然。十分時間をかけて完璧な決断をくだすよりも、タイムリーに合格ラインの決断を下すことのほうが世の中では結果を残せる。やり始める前にクリアしておかなくてはならないリスクへの対処法は人によって違う。 いずれにしても完璧を求めるスタイルと、合格を求めるスタンスが結果に大きな違いを生み出している。完璧型はビジネス上の決断をする際に、考えられるすべてのリスクをつぶしてから決断を下すタイプだ。また通常頭がいいので想定されるリスクの数が半端ではない。世に言う頭でっかちだ。しかし実際行動してみるとそんなリスクはどこ吹く風で、すんなりうまく行ってしまうことが意外に多い。彼らは自ら多くのリスクを想定し、必要以上に恐れてしまうために決して行動することはない。そして種を蒔かない農夫は決して収穫することはない。
 一方松下氏は回顧録の中で、結果的には100点満点で40点、50点という決断が多かったことに触れている。彼の場合合格点にも満たない決断といえるかもしれないが、それを実にタイムリーに行っていったのだ。致命的でなければとりあえずやってみるということだろう。合格レベルで動いている人ならもっと確率がいいはずだ。動き出すと不思議なもので、どこからともなく情熱がわいてくる。体験上この情熱が勝負を決めていることを私は知っている。知能指数よりも情熱指数が重要だ。ビジネスの上でお客が重要な決断をする際キーになるのはあなたの情熱であり、知能ではないことを覚えておこう。確かに情報は判断の基準になるが、決断するのは100%感情的なものである。それは相手があなたをどれくらい好きかということであり、どれくらい信じているかということ。信用されているレベルではなく信頼されているレベルになっているかということが重要になる。情熱的な人はうそをつくことができない。うそを突き通すためには常に自分の言ったことに整合性をとる必要があり、言ったことを覚えておかなければならないからだ。そんな計算をしながら情熱的に話すことは人間には難しく、相手はそれを本能的に知っているために目を見るのだ。最後のカードまで情熱的にめくってみよう。

3番目の方法は対象を広げるということ。エースばかりがハートではない。もしかしたらクイーンの方がもっと自分にふさわしいハートかもしれない。7だって場合によってはラッキーセブンと呼ばれる。ハートのエースにこだわるのも人生だが、自分をよく知り、自分にふさわしい相手が本当にエースだけなのか?と考えることは重要だ。仕事で言えば代替案を探ることにもつながるだろう。常に自分の思い通りに世の中が回るとは限らない。ビジネスでは分母に時間があるためその限られた時間の中で当たりをめくっていかなければならない。スペードのキングにこだわったためにタイムオーバーになるのであればセカンドベストを探るということも忘れてはならない。パーフェクトアンサーはひとつかもしれないが、合格点のとれるアンサーは決してひとつとは限らない。場合によってはあきらめることも重要だ。消極的に聞こえるかもしれないが、ビジネスの世界では経営戦略の一つに撤退戦略という言葉がある。ブラックホールに吸い込まれることがわかっている状況でそれを回避しないことは自殺行為だ。
 やりたいと思っていることをできない状況を続ける事は自分の自尊心を下げることになり、すべての生活において悪影響を与えてしまう。あきらめない限り失敗はないが、できない状況を続けることによって自信をなくしてしまいそうになったら撤退することも考えてみるべきだと思う。そのバランスをとることによりストレスを回避し、精神衛生上の健康を取り戻すことができる。十分元気になってから再度チャレンジしてみるのもありだろう。

ずいぶんと長い間やり始めたいと思っていたが、なかなかやりだせなかったことというのは誰でも一つや二つはあるだろう。しかしそれはやり始めない限り淡い希望で終わってしまう。それをやり始めたとき初めてその実現に近づき始めるのだ。夢、憧れ、願望、希望。そういったものがただ、心にあるだけの状態では何も起こらない。やると決めるか断わるか。いずれにしても決断が重要だ。
 今の自分はなぜここにいるのか?なぜこんなことをしているのか?それは今の自分が決めたことではない。たまたまそうなった所為だと感じられるかも知れない。しかしそれは紛れもなく、過去の自分が決めたことだ。まずそれを認めよう。周りから導かれたにしても、それに従う決断をしたのは自分の決断だ。決して他人は自分をコントロールすることはできない。多少影響を与えることはできるかもしれないが、それに従うかどうかは自分に選択権があるからだ。
それを認めることができるとすばらしいことが待っている。つまり「過去の自分が決断した結果により今の自分が生み出されている」ことを認めると、その関係をそっくりそのまま今と未来の関係にシフトできるからだ。つまり「今の自分が決断した結果により未来の自分が生み出される」ということだ。ここで初めて人間は自由を得る。将来の自分は「どうなるかわからないもの」ではなく「今の自分が決められるもの」に変わる。
 この前提に立てたときに3つのオプションはさらにあなたの強力な武器になる。魅力を高めてトランプの枚数を減らし、必ず当たりがあることを信じ情熱的に最後までめくり、どうしてもだめなら一旦立ち止まって等身大の自分を見つめなおす。正確なトランプの枚数を数えて自分の確率を知れば、また一歩前に前進する勇気がわいてくるだろう。