アンナからも即返信がくる。『わかったぁ♪ダーリンが来るまで電車に乗らず見送るよ!じゃあ改札辺りで待ってるね?』

『帰り遅くなるけどゴメンな?急いで行くから!』とメールを返し、俺は歩く速度を速める。

約20分後ようやく駅が近付いてきた。俺は急いで改札付近を見遣り、アンナの姿を捜す。そして改札付近のコンビニに、ゆっくりと歩きながら入って行くアンナの後ろ姿を見つけた。

俺はもう一度歩を速めてコンビニに入り、後ろからアンナの肩を叩いた。アンナが笑顔で振り返り声をかけてくれる。「お疲れさま!カラオケはもう終わったの?」

俺は乱れた呼吸を調えながら、言葉を返す。「いや、途中で抜けてきたよ!」

アンナは心配そうな表情になり「えっ!大丈夫なの?」と気遣ってくれる。

「大丈夫!ちゃんと根回ししてあるから!さあ、飲み物でも買おう!」と俺はアンナを促し、買い物を済ませてコンビニを出る。

通勤定期の俺は、アンナが切符を買い終えるのを待ち、二人並んで自動改札を通る。最終の急行に乗る乗客達が、ホームに列を作る中、空いた普通電車に談笑しながら乗り込む。

予想通り空いており、一番端の席に二人横並びに座る。疎らな乗車率のまま、俺達二人を乗せた普通電車がゆっくりと動き始める。1時間弱の電車デートの始まりだ。
そして当日金曜日、仕事を終え部署のメンバー全員で、予約してある焼肉屋へ向かう。アルコールも入り、みなテンションの高い状態で、次は二次会のカラオケボックスへ。

その状態でも、俺は冷静に時間配分をしていた。カラオケに入ったのが21時過ぎだから、2時間歌って店を出れば、ほぼアンナと時間を合わせられる。

はしゃいでいるうちにあっという間に時間が経ち、部屋の壁に備え付けられた内線電話が鳴る。もう23時前だ。

一番歳下の部下が受話器を取り、みんなに声をかける。「あと10分ですけど、どうしましょう?」

「延長!延長!」終電がなくなるメンバーもいるはずだが、みなまだ歌い足りないようで、1時間の延長を申し込んだ。

このまま最後まで付き合っていては、俺はアンナと会える機会を逃してしまう。もうしばらく様子を見て、途中で抜けさせてもらおう。実はこういうケースを想定して、事前に上司に事情を話していたのだ。俺の段取りに抜かりはない。

23:10頃アンナからメールが来た。『今仕事終わったから、一旦お店に戻るけど、ダーリンはどうなりそう?』

そのメールをきっかけに、上司に一声かけて店を出る。駅から少し離れた場所だけに、足早に歩きながらアンナへメールを送る。『俺も今カラオケを出たから、急いで駅に向かうよ!』
電車の中で何気に携帯を弄っていると、帰宅したアンナからメールがきた。『昨日はありがとうね!あの後すぐに仕事だったから返信出来なくてゴメンね?実は…わざと21時ぐらいで終わりにして、ダーリンと一緒に帰ろうかと思ってたんだけど……関西の人がわざわざ来てくれるみたいだから断り難くて……一緒に帰れなくなっちゃったね……』

アンナはそんなことを考えてくれていたのか……俺は素直に嬉しかった。しかし俺は実に強運だ。ちょうどその日は職場の歓送迎会の予定が入っている。逆に終電ぐらいの方が都合がいい。

もともと俺の所属する部署は、責任者の係長と、主任の俺、新人の男子社員と、ベテランの女性社員という男3+女1の4人体制だ。

このベテラン女性社員は、既婚ながらも持ち前のバイタリティで、長年に渡って部に貢献してくれたが、家庭の事情もあり8月いっぱいで退職することになった。そしてその補充として、中途採用の女子社員を採用することになったのだ。

このベテラン&中途の両女子社員の歓送迎会が、ちょうどその金曜日だ。俺は電車に揺られながら、その旨を返信する。『俺もその日は職場の宴会があるから、終電で一緒になるかもね!ただ金曜日の終電は、朝の通勤ラッシュばりに満員だよ?その前の普通電車の方が座れるからいいかもね?』

そして昼休みにアンナから短文メールが来た。『もしかして一緒に帰れるかな!?座れるなら普通を狙うよ!だから時間が合えば一緒に帰ろ?』