『おはょ…アンナね?今日出勤中も仕事中もずっとダーリンの事考えてた……ダーリンはアンナを心配してくれてるんだよね?アンナの事好き好きって言わないけど、二番目に好きなんだよね?』

いつもの明るい無邪気なメールではない。冒頭の真剣なトーンに、俺は幾分慎重になりゆっくりと読み進める。

『アンナね?今日反省してたんだ…余裕がないのに予定を詰め込んで必死にがんばって、結局自分が辛くなるのは解ってるのに……癖なのかなぁ…癖ってなかなか治らないなぁって…ほんとにごめんね?家の事、自分の事、人の事、全部を自分でしないとダメって思ってしまう悪い癖だよ……家の事で疲れているのに自分の事もしたい…そうしてるうちに結局寝る時間を削るみたいな……』

ある意味俺の指摘は的確だったのかもしれない。『でもね?今日は反省して何も予定入れてなぃよ?ダーリン誉めてくれる?ほんとはプールに行きたいけど、今日はゆっくりするって決めたからどこにも行かない!家事が終わったら、夕飯を作る17時まで寝てみるのも挑戦かなぁって?』

そして出勤シフトの件が続く。『今はオーナーがいない分、店を助けるだけで、自分が辛くなるようにはしないよ?全部が全部店の事情に流されてる事はないよ?店のためじゃなく自分のために頑張るなら、ダーリン認めてくれる?』

そしてメールはこう締め括られている。『アンナね…ダーリンに嫌いってゆわれたくなぃ…応援しないってゆわれたくなぃ……』
俺は仕事を終え、一昨日と同じ駅のベンチを陣取り、今朝からの苛立ちとアンナへの配慮を交え、冷静に長文メールを打つ。

『まず最近のアンナは余裕なさ過ぎだよ?いろいろ予定を詰め込み過ぎ。出勤時間の件はだいたい解った。店が忙しい時期ならアンナも頑張るしかないんだろうけど、今のシフトが普通になってしまったら、体力的にも精神的にも持たないよ。店の事情より、まず優先するべきなのは、アンナ自身と家族のこと。ここは間違いなく外すなよ?オーナーが帰ってきたら、主張すべきところはちゃんと主張して、きっちりと話し合うべき。』

そして締めの一節が、俺の一番伝えたい部分だ。『仕事も家のことも両方頑張ってるアンナだから、俺は応援してるけど、店の事情に流されるアンナなら俺は応援しないぞ?』

俺なりに極力冷静に書き綴ったつもりだが、自然ときつめの文体になってしまった。送信し終えた直後の帰宅途中も、帰宅してからも、寝床に入ってからも、俺はアンナのことが気になって気になって仕方がなかった。

そして翌朝起床してからも同様だ。4:00シフトのアンナから深夜メールがあるはずもない。気掛かりなまま家を出て電車に乗り込む。時刻は7:00ちょうど。今頃アンナは無事に帰宅して、家族の朝食の準備をしているのだろうか?

そんなことを考えている矢先に、アンナからメールがきた。俺は急いで携帯を開き、いつも以上の長文を読み進める。
翌朝目覚め、俺は早速携帯をチェックする。だが残念ながらアンナからメールは入っていない。まあ彼女の多忙さから考えて、こんな日もあるだろう。

深く考えないようにしながら、いつも通り朝食、シャワー、身支度と日々のルーティンを済ませ家を出る。

電車の中、彼女のHPで出勤予定を確認すると、『10月1日 7時~4時まで』……結局俺のアドバイスも意味はなく、アンナは朝方まで働くつもりらしい……

自分の無力さに虚しくなる。それと同時に、俺がこれだけ心配しているのに、メールを送ってこないアンナに微かな怒りが込み上げる……

そして夕方、通勤途中のアンナから長文メールがきた。『昨日はメールできなくてゴメンね?今日も朝から家事を済ませて、友達のお母さんのお見舞いに行ったりで結局夕方になっちゃった……』

ほんとにアンナは多忙過ぎる。もちろん彼女の環境も理由の一つだが、予定を詰め込み過ぎる彼女自身の性格にも、少なからず原因がある。

そしてメールはこう続く。『出勤シフトは、ほんとは2~3時に店を出るのが理想なんだけど、今はオーナーが長期で休んでたりで…フロントもお休み返上してるし、夜から出勤のドライバーも昼から出勤して合間に睡眠をとったりで……だからアンナも今は4時までがんばって、それからの事はまだハッキリ決めてないの……ダーリンの考えも入れながらよく考えてみるぅ…昨日はメールできなくてほんとにゴメンね?』