灯台の廃止について

(第一回:廃止と取り壊し)

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レンズ小僧
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みなさん、こんにちは。
レンズ小僧です!

いつかは書かなければならないと思っていた、灯台の廃止について記したいと思います。
※長文になりますので、何回かに分けます。


高知県の甲浦灯台 (2018年8月30日に廃止)

撮影日:2017年11月5日
 

その前に述べておきたいことがあります。

私は灯台が廃止されたり、管理が適切に行われていない事について非常に残念に思っていますが、それで海上保安庁の職員の方々を非難するつもりはありません。
むしろ限られた予算の中で、灯台を管理したり、船舶の安全な航行を管理・維持されていることに感謝しています。
皆様も灯台の廃止、撤去の悲しみや憤りを、海上保安庁の職員の方々に向けない様にご理解いただきたいと思います。

1.昆布森灯台
2018年3月29日放送のNHK『所さん!大変ですよ』のサブタイトルは、『なぜかシニアに大人気 魅惑の灯台ワールド』でした。
灯台を訪れる様々な人たちと、その理由について取材したものです。
ほのぼのとした内容と思いきや、衝撃的な映像が放映されました。

Youtubeで『灯台 CM』をキーワードに検索すると、上位に再生回数12.5万回で吉高由里子さんの出演するCMが出てきます。

グリーンレーベル リラクシングCM「恋するレーベル・灯台」篇
ここに登場する灯台が『昆布森灯台』です。
1960年1月初点灯、1990年1月改築。
コンクリート製で、地面から灯火中心までの高さが9.7m。

レンズは無等の300mmレンズです。
とても素敵なロケーションに、小さくてかわいい灯台じゃありませんか!

番組でその灯台の解体の様子が放送されたのです。
衝撃を受けたのは私だけではなかったようで、インターネット上では様々な人が、様々な形でコメントを出していました。
廃止は仕方ないとして、取り壊すのは残念すぎる!』と言う意見が多かったと思います。

2.保存灯台の廃止・撤去
山口県下関市にあった台場鼻灯台は明治33年4月20日に初点灯しました。
※明治34年版航路標識便覧表より

海上保安庁は1985年に「灯台施設調査委員会」を結成して、明治期に建設された灯台を価値の高い順にA~Dランク区分しました。

これが『保存灯台』です。
※Wikipedia『保存灯台

台場鼻灯台はDランクに区分されました。

Dランクの処置方法としては『Cランク についで貴重な施設であり、改修に当たっては原型を残している部分の保全について考慮する』と説明されています。
※一般財団法人 日本水路協会発行の『水路第163号』

  『洋式灯台に見る近代化遺産≪3≫明治期灯台が有する価値の評価』 より

これらのランク付けの違いを判りやすく言うと、『改修時にどれだけ手間をかけてオリジナル状態を保つか』と言う事です。
この灯台を永久に保存する』とは明記されていません。

台場鼻灯台は、老朽化やその他の航路標識が充実して来た事もあり、役割りが低下してきたため、海上保安庁が地元の漁業関係者に需要の確認を取ったところ、必要性が無いことが判明したため、廃止が決定したそうです。
海上保安庁は廃止決定と共に、台場鼻灯台の移転を前提とした再利用を下関市に打診しましたが、市は撤去費用の負担、建物の老朽化を理由に現地での保存を求めたため、同庁は現地での維持管理が困難と判断して取り壊しが決定しました。
なお地元の自治連合会などが市に対して有形文化財への登録を求めましたが、保存には移築する必要があるが耐久性が低く、予算の問題もあるとして実現しませんでした。
残念ながら台場鼻灯台は2009年2月18日に消灯し、21日から取り壊しが開始されました。

同様に広島県豊田郡東野町にあった、明治27年(1894年)5月15日初点灯でDランクの鮴埼灯台も2009年1月19日で廃止し、撤去されました。

 

そうなのです。

保存灯台』とは『明治期に建設された灯台』で、『改修する場合の手段が決まっている灯台』ですが、必ずしも『保存が決定した灯台ではない』のです。

3.灯台の取り壊し
灯台を含む航路標識は国有財産です。
機能が停止された国有財産は普通財産となり、様々な処分を行うことが可能となります。
機能を失った施設をそのまま継続して維持・管理するのは財政上問題がありますし、維持しないとしても、土地をそのまま占有するのは問題があります。もちろん、放置して事故が起きたら大変です。
したがって廃止になった灯台は、原則として撤去する事が通例です。
一方で僅かですが地域活性化のシンボル的な意味合いで、廃止となった灯台を自治体が活用する例もあります。
近年では石川県の白尾灯台や新潟県の能生港灯台が、地元自治体によって活用されています。

 

今回はここまでとさせていただきます。

お付き合いいただき、ありがとうございます

 

では、また!