もしもし、◯◯さんのお宅でいらっしゃいますか?夜分大変恐れ入ります。
◯◯という者ですが、◯◯さんいらっしゃいましたらお願いできますか?
携帯がこれだけ日常に浸透する以前、女の子と連絡を取るには、
こうして家に電話するしかなかったではないですか。
家族の方々と面識を持ってからならまだしも、そこまでに至る前に
家にかける前の緊張ったらなかったわけさ。
お母さんだったらまだいいな。お父上だったらドエライ緊張だな。と。
何度かかけていると、特にお母さんなんて時に話好きだったりなんかしてね。
電話に出るなり世間話になっちゃって、女の子がいない時でもしばらく
話しこんじゃって、そんなんなると、いる時にでも取次ぐ前に「じゃあまたね~」
なんて切られちゃって、かけなおした時に爆笑しながら取り次いでくれたりな。
「ごめんね~~呼ぶの忘れて切っちゃったわよ~」なんて。
厳しそうなお父上なんかだと、「どんなお友達?」なんてまで言われたりな。
だから、頼む、直接出てくれ、お願いですから、頼んます!
なんて祈るような思いで受話器をとり、ダイヤルするのだね。
いや、携帯をいじってる時にそんな過ぎ去り頃を思い出しちゃって。
携帯があると、まあ特にこの年になるとなあ、両親といる女の子にそんな風に
電話する事なんてないんだけれど。
今振り返ると、なんだかあの緊張も懐かしいし、いいもんだったかなと。
あの感じをほとんど味わう事もないだろう現代っ子は、何かもったいないなあと
思う今ひとときでありました。