Mountain Top | Shape Of Miracle / RADWIMPS
RADWIMPSの21stシングル『Mountain Top / Shape Of Miracle』のレビュー・感想です。シングルとしては前作から約9ヶ月ぶり、二作続けての両A面となります。
本作の収録曲は2曲共に、映画『空海-KU-KAI- 美しき王妃の謎』に関係しています。「Mountain Top」は主題歌、「Shape Of Miracle」は日本公開版の挿入歌です。同作品は観る予定がないので、ここでは純粋に楽曲のみを評価の対象とします。
01. Mountain Top
映画の主題歌というだけあって、更にはその内容にも依存するのかもしれませんが、情緒や趣に重きを置いていると感じられる優美なナンバーです。
野田さんのピアノと、お馴染みの徳澤さんが率いるストリングスがアレンジの軸となっていて、あまりバンドらしさがある曲とは言えません。とはいえ、瞬間的な熱量の増大が起こるサビ("I'm a dreamer"~、大サビとすべきかも)には、内に秘めた荒々しさが俄かに顔を覗かせたような雰囲気が宿っているので、この剥き出しの感じはラッドっぽいなと思いました。
歌詞は全編英語で、メロディとの兼ね合いの良さは安定の野田節という感じですね。特にタイトルにもなっている"I'm alone on a mountaintop"の部分は、うねりを含ませたような歌い方やコーラスの重ね方が、長く語り(或いは歌い)継がれてきたフォークロアの如くで、普遍的な格好良さが醸されているところが好みです。
詞としては'-er'で韻を踏んでいる大サビが、王道というか英語作詞の基本に忠実でシンプルに良いと思います。締めにあたる"show me your ego"の部分も気に入っていて、外来語としての「エゴ」が馴染んでしまっていますが、英語発音だと「イーゴウ」なんだよなということを、旋律に沿った力強い発音で再確認させられました。
ここは意味の上でも注目に値するポイントで、"ego"はその少し前に出てくる"pride"と対比させているのかなと解釈しています。"ego"も"pride"もそのまま外来語に置き換えたほうが自然ですし、実際日本語訳でもそうなっていますが、敢えて両者に共通する日本語の意味を探せば、「自尊心」が挙げられますよね。つまり根は同じだと言いたいのですが、ここで語を使い分けることで微妙なニュアンスの違いが演出されているのが、技巧的で流石だと感じます。単にメロに合わせただけだったとしても。
02. Shape Of Miracle
映画の登場人物である楊貴妃をイメージしたナンバーだそうです。タイトルの「Shape Of Miracle」というのは、歌詞を見る限りは抽象的なものを指しているように思えるのですが、「傾国」(美人の意)を謳われるだけの存在であったことを考慮すると、物理的・肉体的な意味でも通用するのかなと思いました。「イメージした」というのはどうとでも取れる言葉ですが、「楊貴妃目線の」歌でもあり「楊貴妃へと向けた」歌でもあると、そう解釈したという意味です。
比較的シンプルだった01.とは異なり、ドラマチックでストーリー性のあるアレンジが特徴で、音楽としてはこちらの方が魅力的に感じます。立ち上がりは伴奏がピアノのみなので、最初は二曲続けて同じようなタイプかと誤認したのですが、曲が進むにつれて着実に音が積み重ねられていき、ピークで多層的な彩りを見せるという流れが存在するため、良い意味で意表を突かれた気分です。
特に2番~間奏にかけての色鮮やかな展開は、ヒーリングミュージックやマーチやファンファーレといった、ポジティブな音楽の要素が鏤められている印象を受けたので、聴いていて幸福感に満たされていくような心持を覚えました。実質的な意味を持たない"Woo Woo"も、言語化しにくい浄化や解放の感情を多分に含んでいるように思えて、素敵な曖昧さだという理解です。
と言いつつ、実はメロディとしていちばん好きなのは、何処か暗さの漂うAメロ("Hello,"~)なのでした。"miracle"を前にした緊張感があるというか、たとえポジティブなものであったとしても、得体の知れないものに対する警戒は解けないといった類の、畏敬の念とでも言えるような思いが存在しているのが、奇跡を手放しで褒めているわけではないということに繋がっている気がして、その慎重さこそが素晴らしいと評しています。
歌詞では、"You're always hiding in back of fate/Now is the time to do your job"がお気に入りです。「奇跡」と「運命」はセットで語られることも多いと思いますが、奇跡が仕事をした結果を運命と呼ぶのか、特定の運命の流れを指して奇跡と呼ぶのか、将又両者は独立していて互いに不干渉なのか、取留めのないことを考えてしまいました。
以上、全2曲でした。楽曲としてはどちらも悪くありませんし、レビュー本文中でも示している通り02.はなかなかにお気に入りなのですが、ラッドひいてはバンドらしさがあまり感じられないということは否定出来ない気がします。前向きに言えば新機軸なのでしょうけどね。
それに映画のための楽曲として作成されている以上、映画を観ずに全てを判断するのもおかしいので、本レビューは何処までいっても想像の域を出ない表現に終始しているとご理解ください。作品を観ればより深い楽曲理解が可能であるのは明白です。
本作の収録曲は2曲共に、映画『空海-KU-KAI- 美しき王妃の謎』に関係しています。「Mountain Top」は主題歌、「Shape Of Miracle」は日本公開版の挿入歌です。同作品は観る予定がないので、ここでは純粋に楽曲のみを評価の対象とします。
01. Mountain Top
映画の主題歌というだけあって、更にはその内容にも依存するのかもしれませんが、情緒や趣に重きを置いていると感じられる優美なナンバーです。
野田さんのピアノと、お馴染みの徳澤さんが率いるストリングスがアレンジの軸となっていて、あまりバンドらしさがある曲とは言えません。とはいえ、瞬間的な熱量の増大が起こるサビ("I'm a dreamer"~、大サビとすべきかも)には、内に秘めた荒々しさが俄かに顔を覗かせたような雰囲気が宿っているので、この剥き出しの感じはラッドっぽいなと思いました。
歌詞は全編英語で、メロディとの兼ね合いの良さは安定の野田節という感じですね。特にタイトルにもなっている"I'm alone on a mountaintop"の部分は、うねりを含ませたような歌い方やコーラスの重ね方が、長く語り(或いは歌い)継がれてきたフォークロアの如くで、普遍的な格好良さが醸されているところが好みです。
詞としては'-er'で韻を踏んでいる大サビが、王道というか英語作詞の基本に忠実でシンプルに良いと思います。締めにあたる"show me your ego"の部分も気に入っていて、外来語としての「エゴ」が馴染んでしまっていますが、英語発音だと「イーゴウ」なんだよなということを、旋律に沿った力強い発音で再確認させられました。
ここは意味の上でも注目に値するポイントで、"ego"はその少し前に出てくる"pride"と対比させているのかなと解釈しています。"ego"も"pride"もそのまま外来語に置き換えたほうが自然ですし、実際日本語訳でもそうなっていますが、敢えて両者に共通する日本語の意味を探せば、「自尊心」が挙げられますよね。つまり根は同じだと言いたいのですが、ここで語を使い分けることで微妙なニュアンスの違いが演出されているのが、技巧的で流石だと感じます。単にメロに合わせただけだったとしても。
02. Shape Of Miracle
映画の登場人物である楊貴妃をイメージしたナンバーだそうです。タイトルの「Shape Of Miracle」というのは、歌詞を見る限りは抽象的なものを指しているように思えるのですが、「傾国」(美人の意)を謳われるだけの存在であったことを考慮すると、物理的・肉体的な意味でも通用するのかなと思いました。「イメージした」というのはどうとでも取れる言葉ですが、「楊貴妃目線の」歌でもあり「楊貴妃へと向けた」歌でもあると、そう解釈したという意味です。
比較的シンプルだった01.とは異なり、ドラマチックでストーリー性のあるアレンジが特徴で、音楽としてはこちらの方が魅力的に感じます。立ち上がりは伴奏がピアノのみなので、最初は二曲続けて同じようなタイプかと誤認したのですが、曲が進むにつれて着実に音が積み重ねられていき、ピークで多層的な彩りを見せるという流れが存在するため、良い意味で意表を突かれた気分です。
特に2番~間奏にかけての色鮮やかな展開は、ヒーリングミュージックやマーチやファンファーレといった、ポジティブな音楽の要素が鏤められている印象を受けたので、聴いていて幸福感に満たされていくような心持を覚えました。実質的な意味を持たない"Woo Woo"も、言語化しにくい浄化や解放の感情を多分に含んでいるように思えて、素敵な曖昧さだという理解です。
と言いつつ、実はメロディとしていちばん好きなのは、何処か暗さの漂うAメロ("Hello,"~)なのでした。"miracle"を前にした緊張感があるというか、たとえポジティブなものであったとしても、得体の知れないものに対する警戒は解けないといった類の、畏敬の念とでも言えるような思いが存在しているのが、奇跡を手放しで褒めているわけではないということに繋がっている気がして、その慎重さこそが素晴らしいと評しています。
歌詞では、"You're always hiding in back of fate/Now is the time to do your job"がお気に入りです。「奇跡」と「運命」はセットで語られることも多いと思いますが、奇跡が仕事をした結果を運命と呼ぶのか、特定の運命の流れを指して奇跡と呼ぶのか、将又両者は独立していて互いに不干渉なのか、取留めのないことを考えてしまいました。
以上、全2曲でした。楽曲としてはどちらも悪くありませんし、レビュー本文中でも示している通り02.はなかなかにお気に入りなのですが、ラッドひいてはバンドらしさがあまり感じられないということは否定出来ない気がします。前向きに言えば新機軸なのでしょうけどね。
それに映画のための楽曲として作成されている以上、映画を観ずに全てを判断するのもおかしいので、本レビューは何処までいっても想像の域を出ない表現に終始しているとご理解ください。作品を観ればより深い楽曲理解が可能であるのは明白です。