モンハン未プレイ勢によるミラクル☆ミルクティの音楽レビュー 「英雄の証」「トラベルナ」 謎歌詞 | A Flood of Music

MONSTER HUNTER XX MIRACLE☆MIL&CATY / ミラクル☆ミルクティ

 ミラクル☆ミルクティによるユニットアルバム『MONSTER HUNTER XX MIRACLE☆MIL&CATY』のレビュー・感想です。ディスク自体の正式な名称がわからなかった(MHXXまで含むのか?英語と日本語のどちらの表記を優先すべきか?)ので、ジャケ写の表記をそのまま使っています。

モンスターハンターダブルクロス ミラクル☆ミルクティ/ゲーム ミュージック

¥1,620
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 発売は先週ですし更新予定表にも急遽追加した一枚なので、不意打ちでレビューすることとなります。他のCD目当てでアニメイトに行ったところたまたまこの盤を発見、裏返して収録曲目を見て迷わずレジへゴーしたという急な入手だったからです。笑 収録曲数の割に値段が安かったのも後押しに。

 このちぐはぐさから何となく察せるかもしれませんが、僕は『モンハン』について殆ど何も知らないということを先に断っておきますね。「皆で狩りをするゲーム」という浅い認識しか持っていませんし、あとは小さいホワイトボードを持ったアイルーのぬいぐるみを可愛いと思ってUFOキャッチャーで取った記憶があるぐらいです。


 そんな僕がなぜ本作を購入したかというと、ミラクル☆ミルクティの曲の良さは知っていたからです。アプリ『SHOW BY ROCK!!』とのコラボのおかげで。このコラボイベは楽しくて音ゲーをプレイしまくったため、ゲームは知らないけど曲だけは知っているという状態なわけです。

 『MHXX』からは「英雄の証 ~MHXXver.」「銀翼の凶星 ~ バルファルク」の2曲に加え、ミラクル☆ミルクティによる「英雄の証」と「トラベルナ」がコラボ楽曲として提供されていたので、この4曲は特に何度も何度も遊びました。

 甲斐あってカティのブロマイドは余裕でゲット出来ましたし、家具も個人的には使い勝手が良かったので、マイルームが『モンハン』を何も知らない人の部屋だとは思えないぐらい愛にあふれたものとなっています。笑


 レビューに入る前に基本的な情報を。ミラクル☆ミルクティはネコ嬢 カティと酒場の看板娘 ミルシィによるユニットで、CV及び歌唱はそれぞれ上田麗奈さんと高野麻里佳さんが担当しています。先述の通りゲームについてはさっぱりなので、詳しい設定やら背景やらはよく知らないのですが、2人が姉妹だということは知っています。

 また、本作は歌詞カードが制作陣によるセルフライナーノーツを兼ねている…というかプチブックレットのようになっているので、そこにある記述も必要であれば少しだけ引用していきます。文字数節約のため、以降で「LN」と書いたらこれを指しているとご理解ください。


01. 英雄の証 ~ ミラクル☆ミルクティ

 幕開けは『モンハン』を象徴する楽曲である「英雄の証」のミラクル☆ミルクティVer.から。元はBGM(インスト楽曲)であるため、これはボーカル曲としてアレンジされたものですね。編曲者はやしきんさんですが、LNでもBGMを歌ありのポップスに変換することの難しさについてふれられています。

 『モンハン』についてよく知らないとは言え、この曲(元のほう)は有名だからか過去に耳にしたことがありました。勇壮な曲だというイメージだったのですが、随分と可愛らしい感じに生まれ変わっていますね。笑

 
 イントロは無しでいきなり歌唱が始まりますが、何の予備知識も無い僕はまず歌詞に驚きました。サウンドディレクターでもある裏谷玲央さんによる作詞なのですが、この独特さこそがミラクル☆ミルクティの楽曲の特色だと言えるでしょう。

 何が独特か?それは謎言語で歌われていることです。LNの言葉を借りれば「モンハン語」ですね。きちんと法則性というか翻訳のルールがあるみたいなので、デタラメではないようです。確かに音韻や文法に意味があるような印象は受けます。特に音の響きにはかなりこだわっているように聴こえ、日本語のように母音で終わる語が多いから心地好いです。


 BGM Ver.に於いて軸となっていた主旋律がサビとなっているわけですが、歌詞が付いてキュートな歌声がのってポップなアレンジになったことで、メロディの質感そのものが変わっていますね。それがお気楽な行進のようなAメロと少しの不安と期待が入り混じったようなBメロのどちらともよく調和が取れているので、ボーカル曲としての統一感が出ていると思いました。

 特にツボなのは2か所あって、一つ目は1番Aの"トラティエ ペレネセ セスディラ エレジテ"のところです。「お気楽な行進」と書きましたが、ここは歌い方も相俟って枝切れをブンブン振りながら歩いているかのような能天気さがあって好きです。笑

 二つ目はCメロコーラスの"(ニャーニャーニャーー)"です。Cメロには結構長い尺が取られていて、この美しい旋律にそろそろ慣れてきたなと思い始めたところに"(ニャー)"がぶっこまれるもんだから、気が抜けると同時に笑みもこぼれてしまいます。調べたらこの2人は竜人族という種族らしいですが、本人達にとっては真面目なコーラスなんだろうなと思うと余計に面白いです。


02. 可愛いアイルー ~ ミラクル☆ミルクティ

 2曲目もLNを読む限り元はBGMっぽいです。こちらもクレジットとしては01.と同じなので、やしきんさんの変換テクが冴え渡るトラックだと言えますね。

 しかし曲の感じは01.とは異なり、こちらは全編を通してひたすらに可愛いアイドルデュエットソングといったような趣があります。01.ではコーラスにとどまっていた"(ニャー)"も、この曲ではサビの歌詞として普通に出てくるので、ネコ要素がより強調されていると思いました。これは「アイルー」を曲名に冠しているからというのもあるでしょう。


 まずイントロから醸されているディスコっぽさからして堪らないです。ストリングスとベースのなんとグルーヴィーなこと。力強い金管も体を揺さぶってくれて素敵です。そのままサビ始まりというのも「わかってるな!」と思いました。

 このようにダンサブルなアレンジも素晴らしいのですが、この曲はメロディが全てツボです。某将棋棋士の言葉を借りれば「序盤、中盤、終盤、隙がない」旋律だと思います。笑 サビはとにかくゆるい感じがグッド。"ニャ ニャ ニャー"のインパクトに気を取られがちですが、続く"サールオティラミレ エメヤミレ"の部分の流れるような音運びが美しいですね。

 Aメロ("ソゥレリ"~"レリサフィレティア"とします)は前半の金管との呼応パートも、後半の"ストレリア"で鮮やかに重なるツインボーカルに潜むアイドルっぽさのどちらも好みですし、Bメロ("エレ"~)は短いメロディの積み重ねが舌足らず的な可愛さを生み出していて、これまた巧いと唸ってしまいます。


 高野さんがLNの中でも語ってますが、この曲のBメロの歌詞は特に「フランス語みたい」だと感じます。「捨て仮名」という専門用語まで持ち出して流石プロだと思ったのですが、いくつか単語で抜き出してみても仏語の基本的な語彙を彷彿させるところがありますよね(以下のは「こう読む」という意味ではないので注意)。

 "エレ"は「elle」、"エティ"は「et」、"レ"は「le」、"プレ"は「plaît」、"シル"は「s'il」など、少しでも仏語をかじったことがある方なら共感していただけるのではないでしょうか。"ポア"や"ポワ"という音もスペルで言えば「poi」を連想しますし、「poisson」=「魚」のことなので、ここにもネコ要素?と深読みが出来ますね。


03. トラベルナ ~ ミラクル☆ミルクティ

 『SB69』コラボの4曲の中でもこの「トラベルナ」が最も好きだったので、本作で目当てにしていた楽曲と言えます。どれくらいツボだったかと言うと、脳内ループが止まらなくなった挙句、コラボが終わってからも「もうプレイ出来ないなんて嘘だろ…常設しといてくれよ」と惜しむぐらいには虜になっていました。笑

 こういう経緯もあり、この曲については以前に少しだけ調べたことがあるため他の曲よりは知識があるのですが、NPCが踊る可愛らしいEDムービーで流れている楽曲らしいですね。映像も含めてかなりの人気を誇っているようです。

 全てが素敵だと言っても過言では無いのでその人気にも納得なのですが、ここまでハマってしまった要因はご機嫌なブラスセクションにあると思っています。クレジットを見ると、トランペットに2名・トロンボーンに1名人員が割かれているので、生ゆえのノリの良さが感じられて思わず身体が動いてしまうのでしょう。編曲者は和田貴史さんです。


 メロディだけを取り立てればJ-POPらしい旋律と構成だと思います。[A→B→サビ]のわかりやすい構成で、歌詞に母音が多く日本語のように聴こえる場所もあるくらいなので、メロディ自体がシラブル言語よりもモーラ言語にマッチしているのだろうと分析。

 …と、こうして専門用語を出すとガチガチの説明しか出来なくなるのでもっと砕けて言えば、イタリア語やスペイン語のように母音で終わる語がマッチする旋律だと思ったということです。実際、この曲の歌詞はロマンス語系のように聞こえます。

 歌い方も含めて細かいツボを挙げると、冒頭サビの"デュラティレ"、Bメロの"スィティラ キーレルロエティエ"、サビの"メタナト"あたりの発声と旋律が妙に癖になるので好きです。特にBメロは歯茎はじき音(母音に挟まれたラ行の子音)の使い方が鮮やかだと思う。


 敢えて最後に残しましたが、この曲を語る上で絶対にふれなければいけないのは"ニャンニャン♪"についてでしょう。笑 この曲に対していくら言葉を尽くして賞賛しようとも、この"ニャンニャン♪"に全て持っていかれるというパンチ力の高さこそが芸術だと思います。曲について「可愛いは正義」と形容したくなるレベル。

 実際音ゲーでプレイしている時も、この"ニャンニャン♪"の譜面をタップするところにいちばん爽快感を覚えていました。基本的に常に最高難度でプレイしているので(このイベは難易度選択もスロットでしたが)、休憩出来るという意味でも楽しい譜面だったな。


04. ニャンてハッピーラッキーデイ! ~ ミラクル☆ミルクティ

 この曲もLNの情報から推測するにゲームの中でダンスと共に流れる楽曲のようです。ここまでの3曲と比べると些か地味というか中毒性は薄い気がしますが、3曲それぞれの要素を少しずつ鏤めて平均化したような印象を受けるので、この位置に据えられているのは正解だと思います。

 この次に日本語Ver.が収録されているのですが、軽快なバンドの楽曲っぽいメロディの感じやボーカルを立てるようなアレンジの仕方を考慮しても、広く一般に受けるような邦楽のルールに則って仕上げられているなと感じるので、モンハン語ならではの魅力は薄い気がしますね。


 …若干ディスり気味に聞こえたかもしれませんが「他の3曲に比べて」という意味なので、単体で判断すれば充分に良い曲だと言えます。演奏陣のクレジットを見ると最も参加人数が多い(ストリングスがグループゆえ)ので力の入れようが伝わってきますし、サックスが加わることでホーンセクションになっているのも差別化が図られていて高評価です。

 文字通り弾むようにポップなAメロ部は、デュエットであることが最も効果的に活かされていると感じられ、ボーカルの定位置が左右に振り分けられているのも功を奏していますね。特に"コモセティル サルテティア"と"uh"が重なるところが素晴らしい。

 サビ終わりの"レーセ リトレティアキュア"の〆感も流石ですし、部分的にはモンハン語の響きもかなり気に入っています。


05. ニャンてハッピーラッキーデイ! ~ ミラクル☆ミルクティ(日本語)

 先述の通り04.の日本語版です。04.での記述から逆説的にわかると思いますが、こちらの日本語で歌われているバージョンのほうが全体的には好みです。Aメロの早口部だけはモンハン語のほうが良いと思いますが、その他の部分はやっぱり日本語が合うよなぁという感想。

 再三言っていますがゲーム自体のことは全くわかりません。が、案内役としての頼もしさや、村へハンターを招くホスト(ホステス)としての温かみが感じられる歌詞にほっこり出来るので、ゲームをプレイしていれば癒し効果も一入かと思われます。


06.~09.は、01.~04.の「Instrumental」です。


 以下の3曲はボーナストラックなので、簡単にご紹介。


10. トラベルナ ~ カティver.

 タイトル通り「トラベルナ」のカティソロバージョンです。調べてもカティの性格についてはよくわからなかったので推測になりますが、典型的な少女らしい可憐さを備えたか細いボーカルが耳に心地良いと言えます。


11. トラベルナ ~ ミルシィver.

 こちらはミルシィソロです。ミルシィはどうやら元気っ子のようなので、快活な歌声にこちらも元気を貰えたような気になりました。


12. トラベルナ ~ カティver.(日本語)

 10.の日本語バージョンです。以前調べた時に『「トラベルナ」の日本語版がサントラの隠しトラックに入っている』という情報を目にしたので、それと同じものですかね?ここでもボートラ扱いなので、歌詞カードに歌詞は載っていません。



 以上、全12曲(インストを除けば8曲)でした。実質的には4曲だとはいえ、これだけ入ってDVD付きシングル並の値段なのはお得だと思います。楽曲のクオリティの高さだけでも買う価値は十分にありますけどね。実際僕は『モンハン』を知らないので曲だけで購入したひとりですし。笑

 目当てにしていた03.「トラベルナ」は勿論良かったのですが、それと同じぐらい02.「可愛いアイルー」がとても気に入りました。ヘビロテ必須です。