民主党・小沢一郎幹事長が個人資金3億6000万円を家族名義の口座に入れていたことが分かり、贈与税の「脱税」はなかったのかが焦点に浮上してきた。小沢氏は、病気のときに万が一を考えて入金したとしている。が、もし一時的な名義借りに近いものだったとしても、今度は個人資産隠しの疑いが指摘されている。

 初めての事情聴取を終えた小沢一郎幹事長は、何か吹っ切れたように穏和な態度に変わっていた。2010年1月25日の定例会見のことだ。

■家族名義「万が一のときにも、というような意識があって」

 検察との全面戦争で、何か落としどころでも見つけたのだろうか。報道陣からの質問に激高することもなく、陸山会の土地購入代金4億円貸し付けの原資について、淡々と説明し始めた。

 小沢氏の配布文書によると、銀行の家族名義口座から1997年と2002年に個人資金計3億6000万円を引き出して事務所の金庫に保管し、それが原資の一部に充てられていた。なぜ家族名義にしたのかについて報道陣から質問が出ると、小沢氏は、91年に心臓病で入院し、「万が一のときにも、というような意識があって」と説明した。つまり、死亡したときに、遺産相続がスムーズに進むようにという意味らしい。

 配布文書では、土地購入の原資には、東京都内の自宅を売却し、新たに都内の別の自宅を購入したときに残った2億円も充てられたとしている。新聞各紙によると、小沢氏側は、家族名義分も含めて計5億6000万円が小沢氏の父親から相続した分、と説明したという。

 家族名義の個人資金は、印税や歳費なども含め7億円弱にも上り、約20の信託銀行口座に分散していたとも報じられている。名義は、小沢氏の妻と子ども4人になっていたが、現在までに解約したという。

 相続税法では、1年間で110万円を超える贈与は、家族が税金を払わなければならない。もし、家族名義資金が「生前贈与」だったなら、「脱税」の可能性が出てくることになる。

■国会議員の資産公開では「該当なし」と記載

 もっとも、小沢一郎氏は、家族に一時的な「名義借り」をしており、心臓病が治るなどしたので返してもらったと、反論することもできる。ただ、この場合でも、問題が出てくる。

 国会議員の資産公開で、小沢氏は「該当なし」と記載しており、資産隠しの疑いが持たれてしまうからだ。

 小沢氏は定例会見などで、個人資産について隠す意図はなかったと釈明する。とはいえ、家族名義資金が「生前贈与」に当たるのか、あるいは「名義借り」に当たるのか言及していない。

 贈与税の脱税になるとすれば、どんな場合なのか。

 遺産相続などに詳しい日高正樹税理士は、本人と家族が贈与に合意していて、財産の所有権が移っているかどうかがポイントになるとする。

  「家族が口座を知らなかったり、知っていても使えなかったりするようなら、名義借りになります。つまり、贈与の合意が必要で、民法上は、口頭でもよいことになっています。しかし、どのようにそれを証明するかは別問題で、税務署が総合的に判断することになります。最終的には、家族が口座を使えるかが争点になるでしょう」

 「脱税」の可能性もあるのに、小沢氏はなぜこうした説明をしたのか。

 元東京地検検事の大澤孝征弁護士は、テレビ朝日系で2010年1月26日放送の「スーパーモーニング」で、鳩山由紀夫首相の違法献金事件との兼ね合いを挙げた。「家族の中でお金が回っただけじゃないか、だから、そんなに重たい処分にする必要がない、と言いたいんじゃないかと思います」。

 しかし、不可解な点も多い。土地購入の原資についての小沢氏の説明が、政治献金から銀行融資、そして今回の個人資金と二転三転しているのだ。小沢氏は否定しているが、東京地検特捜部は、原資がゼネコンからも出ていたとみているとされ、予断を許さない状況だ。


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