こんな話でも、ドロドロにならないところが、オペラ・ブッファのいいところ。

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オペラ・ブッファ「コシ・ファン・トゥッテ(女はみなこうしたもの)」KV588 (1789~1790)

序曲 Presto ハ長調(短いアンダンテ序奏ある)

第1幕
(1) フェランド、グリエルモ、ドン・アルフォンゾの3重唱「そんなことドラベッラはできないぞ」
(2) 〃 「女の貞操はアラビアの不死鳥と同じ」
(3) 〃 「素敵なセレナーデをやりたいな」
(4) フィオルディリージとドラベラの2重唱「ご覧なさい、妹よ」
(5) ドン・アルフォンゾのアリア「言いたいけれど、勇気が出ない」
(6) フィオルディリージ、ドラベラ、フェランド、グリエルモ、ドン・アルフォンゾの5重唱「ああ神よ! この足は」
(7) フェランドとグリエルモの2重唱「運命は屈服する」
(8) 合唱「楽しきかな軍隊生活は」
(9) フィオルディリージ、ドラベラ、フェランド、グリエルモ、ドン・アルフォンゾの5重唱「毎日手紙をくださいね」
(10) フィオルディリージ、ドラベラ、ドン・アルフォンゾの3重唱「風は穩やかに、波は靜かなれ」
(11) ドラベラのアリア「心に渦巻くいらだちよ」
(12) デスピーナのアリア「男に、兵隊さんに」
(13) 6重唱「麗しのデスピーナさんに」
(14) フィオルディリージのアリア「岩のように決して動かない」
(15) グリエルモのアリア「恥ずかしがらず、愛らしい眼差しを」
(16) フェランド、グリエルモ、ドン・アルフォンゾの3重唱「笑うのかね?」
(17) フェランドのアリア「恋人の愛の息吹きは」
(18) 終曲「ああ、ほんの一瞬のうちに」

第2幕
(19) デスピーナのアリア「女が15にもなれば」
(20) フィオルディリージとドラベラの2重唱「あの黒髪の方にするわ」
(21) フェランドとグリエルモの2重唱と合唱「甘く優しいそよ風よ」
(22) デスピーナ、フェランド、グリエルモ、ドン・アルフォンゾの4重唱「お手をどうぞさあこちらへ」
(23) ドラベラとグリエルモ2重唱「このハートを贈ります」
(24) フェランドのアリア「これぞ女の美しい魅力」(省略して次へ進むよう指示されている)
(25) フィオルディリージのロンド「いとしい人よ、この弱い私を許して下さい」
(26) グリエルモのアリア「女性の皆さん、あんた方は」
(27) フェランドのカヴァティーナ「激しい葛藤が心に渦巻き。裏切られ、嘲笑され」
(28) ドラベラのアリア「恋は盗人、誘惑の蛇よ」
(29) フィオルディリージとフェランドの2重唱「もうすぐ彼の腕の中に」
(30) ドン・アルフォンゾのアンダンテ「女はみんなこうしたもの。人は非難するが私は許す」
(31) 終曲(全員)「さあ早く、松明に火を灯しましょう」

登場人物
フィオルディリージ(姉): Montserrat Caballe
ドラベラ(妹): Janet Baker
グリエルモ(フィオルディリージを愛する士官): Wradimiro Ganzarolli
フェランド(ドラベッラを愛する士官): Nicolai Gedda
ドン・アルフォンゾ(老哲学者): Richard Van Allan
デスピーナ(小間使い): Ileana Cotrubas

Orchesrta and Chorus of the Royal Opera House, Covent Garden
指揮: Sir Colin Davis

3枚組みのCDです。
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あらすじ: 自分たちの婚約者の貞節について楽観している2人の士官、フェランドとグリエルモに、哲学者ドン・アルフォンゾは、その愚を説く。言い争いになった3人は賭をすることになる。士官たちが、戦争に出かけると称して出立し、変装してそれぞれ相手を違えて誘惑し、彼女たちが誘惑に乗るかどうかを試そうというのである。婚約者姉妹フィオルディリージとドラベッラの女中デスピーナもこの計画を手伝うことになる。変装した2人は、種々の手を使って誘惑する芝居を演じ、最初は相手にしなかった姉妹も、初めにドラベッラが心を許し、フィオルディリージもやがて陥落する。グリエルモとフェランドは、怒り悲しむが、ドン・アルフォンゾは「女は皆こうしたものだ(Cosi fan tutte)」と慰め、姉妹も謝って四方丸く収まる。
     (モーツァルト事典より)

この作品は、モーツァルトにとっても、シナリオを作ったダ・ポンテにとっても、生涯の重大な時期にさしかかったときに作られたもの。

ダ・ポンテをひいきにしてくれた、皇帝ヨーゼフ2世が病に倒れた中で、このオペラは上演されます。
5回の上演が終わったところで、皇帝はなくなり、劇場は2ヶ月間閉鎖。
ヨーゼフ2世→レーオポルト2世(わずか2年の在位)→フランツ2世 と皇帝が変わっていく中で、文化事業へ対する施策の変化などから、ダ・ポンテの立場はだんだん窮屈になり、結局はウィーンを離れ、ロンドンに行ってしまうのです。

モーツァルトは、88年、89年と、相次いで子供を失い、経済状態も窮乏。
演奏旅行をしてもたいした成果が得られない、という状態。
そんな暗い気持ちを追い払うかのような作品になりました。


さて、この作品は、何回か上演された後、倫理上好ましくない、程度の低いものとみなされたようで、最近(・・・といっても20世紀入ったくらいか?)まで芸術的価値は認められていなかったようです。

姉妹とも、結局は浮気をしてしまう、という設定なのですが、姉のフィオルディリージは最後の最後まで自分の貞節を守っています。
その堅い意思が(14)のアリアによく現れ、(25)のロンドあたりまでは婚約者との約束を守ろうとがんばっています。・・・でも、周囲のそそのかしもあって、(25)あたりでは心の中ではもう新しい恋人への思いが募って言っている状態なんですけどね。
簡単に陥落してしまった妹のドラベッラと違って、葛藤がかなりあったと思われるフィオルディリージのこの2つのソロの曲は、技巧的でとても素晴らしい!
音域も広いし、細かい音の動きや跳躍など、ドラベッラのアリアと比べるとその差は歴然。
これは、初演のときの歌手の技量にもよるのでしょうね。

デスピーナは火付け役&悪ノリ大好き、といったキャラクターでしょうか。
自殺しかかっている変装した男ふたりを治す怪しい医者や、偽の結婚保証人になったり。
そのたびに、声色を変えて歌っているところもまた聴き所。

オーケストラの伴奏にも注目。
これまでのオペラより、管楽器を重視した伴奏になったいると思います。
(21)、(28)のクラリネット、(25)のホルン・・・
クラリネットは、時には甘いメロディを奏で、時にはおどけたような表情を見せ、ホルンはやさしく女性を包み込むような。

そしてそして、ひとりひとりのアリアよりも三重唱などのアンサンブルの多さ。
これがまた楽しい。
聞けば聞くほど味わいの出てくるオペラなのです。


この作品は映像でみたときの印象が強くて、このCDでの歌手は、あまり印象に残りませんでした。
フィオルディリージ役のモンセラート・カバリエは、バルセロナオリンピックのテーマを歌ったこと(CD録音)でも知られていますね。