テギョンヒョンが出て行った玄関を、
寂しそうな……名残惜しそうな
表情で見ているミニョ。
そんな顔するなよ。
俺がここにいるんだから。
よし!決めた。
テギョンヒョンを思い出す暇もないぐらい、
ミニョを楽しませよう!
「ねーミニョ!今日の予定は?
何か決まってる?」
「本当は教会に行きたかったんです。
でもヒョンニムに、マスコミがいるはずだから駄目だって…。
それにアフリカ行きのチケットの手配に、
旅行代理店に行く予定だったんですけど、
これもマ室長がチケットを取りに行ってくださるから駄目って。
だったら皆さんにご飯を作りたいって思ったんです。
だけど、お買い物も駄目だって。
絶対外出禁止って言われてしまいましたし……。
ここでできる事って限られていて。
うーん………。
そうだ!ジョリーを洗いませんか?
あと、ミナムオッパのお部屋のお掃除をして、
ジェルミとアイスが食べたいです。
あ………、ジェルミは何か予定がありますか?
私なら一人でも大丈夫なので出かけてくださいね??」
一気にまくしたてた後に、
俺のほうを寂しく見たミニョが、
本当に愛しくてさ。
ちゅっ。
わざと音が響くようにね。
ホッペにチュっとキスをした。
「ひゃっ!?」
「僕がミニョをほっとくわけないだろ~♪
まずは何からする?」
「もう、ジェルミ!」
笑いながらキスされたホッペを拭う
ミニョの手をひっぱる。
「俺は外国育ちだから、
スキンシップが多いってミニョも知ってるでしょ♪」
ま、ほっぺとは言え、
チューなんてめったにしないけどさ。
ちっちゃな嘘ぐらい許してくれるよね?
ミニョと2人で合宿所に残るのは
初めてではないけど、
今日ほど嬉しかったことはないんだ。
何せ2人きりになれるのって、
沖縄のガラス屋さん以来だ!
あの時、俺がミニョの
気持ちに気づいていたらって、
すごくすごく、後悔したんだ。
気がついてたら、絶対1人になんてしなかった。
紐でしばりつけてでも、
一緒に韓国に帰った。
ヒョンたちには内緒なんだけどさ?
帰国の日が過ぎても帰ってこなかったミニョ。
あの後1人であのホテルにミ、
ニョがまだいるかもって探しにいったんだよ。
「ミニョ。外出ができないなら、
今日はいっぱい2人で家デートしようよ。
家でも絶対楽しめるよ!!
それにさ、今日はみんな、
仕事すごい勢いで切り上げて帰ってくるだろうし、
ミニョのお帰りなさい&いってらっしゃい
パーティーをしよう♪」
「ふふっ、ジェルミがそういうと、
絶対楽しい気がしてきました!
あんまり材料はないけど………。
あとでご馳走いっぱいつくりますね」
「俺も手伝う!
じゃ、とりあえずこの食器の山、
2人で洗おう?」
手伝うって言ったら、私がやりますっていうんだもん。
だから、一緒に洗おう?
こう言えばミニョも気にならないでしょ?
2人で洗うとさ?
苦痛の家事すら楽しくって。
ミニョもずっとニコニコしてて。
ね?俺といると楽しいでしょ?
そんな想いがまたムクムクって
沸いてきちゃうんだよね。
大量にあった洗い物も、
あっという間に無くなっちゃって、
ミニョがミナムの部屋を掃除している間に
俺はミニョが食べたいっていったアイスとか、
パーティーの買出しとか
チャチャってすませることにした。
たったの1時間離れるだけなのに、
すごい寂しくて、
ミニョ、またいなくなってないかな?
って、不安になって、
無駄にアイスは何味がいい?とか、
お肉は牛と鳥と豚とどれがいい?とか、
電話しまくったら、掃除が進みません!って
ついに怒られちゃった。
それでも、大量の荷物抱えてタクシーで戻ったら、
玄関まで小走りで迎えに来てくれるんだよ?
ミニョも俺と離れて寂しかったでしょ?
コ・ミナムをやってたころのミニョより、
ちょっと髪も伸びたからか。
うん。かわいいよね。
あきらめたはずの愛おしさが、
どんどんどんどん大きくなってくる。
「ミニョ、ただいま」
そう声かけたんだけどね?
そしたら、
「おかえりなさい、ジェルミ。
………久しぶりにおかえりなさいって言えました。
嬉しいですね。やっぱり」
って。
「ミニョ?ミニョこそおかえり!
ずっと待ってたんだよ?」
そしたらちょっと涙目なんだ。
あわてて隠してさ?
俺から荷物をひったくると冷蔵庫に入れなきゃって、
パタパタペンギンみたいに走っていくんだもんな。
……。
ほんと。
なんで俺の彼女じゃないんだろう。
「ミニョ終わった?ジョリーを洗おう♪
かっぱを貸してあげるよ。
冬だから濡れると寒いし」
「ふふ。ブカブカです」
……だねぇ。
ほんっと、かわいい。
このサイズ感が半端なく可愛い。
ダメダメダメダメ。
俺、このままだったら…。
「ジョリー!覚えていてくれたんですね」
尻尾をびゅんびゅんと振って、
ミニョの周りをグルグル回って。
ジョリーもミニョが好きだもんね。
「ジョリーと一緒に遊べて嬉しいです。
本当はお散歩も行きたかったですね」
「うん、アフリカから戻ったらさ?
そしたらさ?絶対いこうね?
だからミニョ?ここに帰ってこいよ?」
目を真ん丸く見開いて、
俺の顔をじっとみて、
最後には俯いてしまったミニョ。
どうしたの?
下から顔を覗き込んでみると、
目にいっぱい涙を溜めててさ。
えっ!?俺なんかした?
ミニョなんで泣いてるの?
あっ……。
そっか。俺、謝ってないや。
「あのさ…、ミニョ。
ジョリーをけしかけたり、
水をかけたりして本当にごめんね?
今、思い出したから泣いてるんだよね?
あ、あれで俺のこと嫌いにならなかった?」
ミニョの反応が怖くてさ、
ベンチに座って三角座りで顔を隠しちゃった。
いや、女の子って知らなかったからだけど。
俺、すごくひどいことしたよね。
「ジェルミ」
急にね、頬っぺたがぽわって暖かくなった。
すべすべで柔らかなミニョの両手が
俺の両頬に触れたんだ。
「ジェルミがいたから、
私はミナムオッパでいることができました。
ジェルミがいっぱい笑ってくれたから、
合宿所で安心することができました。
ジェルミが大好き。
嫌いになんてならないです。
いつも本当にありがとう。
い、今は…。ここに帰って来いよって
言ってもらえたことがすごく嬉しくて」
ミニョのいい香りが、
ふわっと風に乗ってきて、
ミニョが触れているほっぺから伝わる体温が、
この上なく幸せで。
「ミニョ、チョアヘ」
自分の頬に添えられたミニョの両手にさ?
さらに俺の両手を上から重ねて、
ミニョにつられて、俺まで思いっきり涙目で、
それでも俺もミニョも最高に笑ってた。
胸が苦しかった。
ジョリーがいてよかったよ。
俺、家の中だったら抱きしめて、
離せなかったと思うから。
