「ミニョは最近調子悪いの?
 今朝も食欲ないってご飯食べてなかったよね?
 病院には連れて行った?」

ちっ………こいつにだけは言われたくない。



目に見えて、やつれていくミニョのことは、
俺が一番心配しているというのに……。

シヌの問いかけに、もちろん何も応えず階段を昇ると、
自室のベッドに座って本を読んでいたミニョの隣に腰をかけた。


柔らかなベッドに、俺が急に腰をかけたからか、
その揺れにバランスを崩したミニョが、
コトンと俺に寄りかかってくる。

こんな些細なことだけでも、俺は思わず口角が上げてしまうぐらい、
ミニョに惚れきってしまっている。

ミニョが食欲がないというのも、
日に日にやつれていくのも………。

子供が出来たからとか…。
いや、そんなことはあるはずがない。
ミニョの「結婚するまでは」という言葉のせいで、
おれは渋々完璧に避妊はしている。

だが、あきらかにミニョの体調はよくなさそうで、
期待もしたくなるというもので………。



「ミニョ、今日こそ病院に行くぞ。
 昼間にオフなんて、こんなチャンスはまたしばらくない」


「えっ!オッパ、今日はお休みなんですか?
 ………それなら病院じゃなくて一緒にお昼寝して下さい」


「………昼寝だ………?」


肩にもたれかかったまま、
訴えかけるような目で俺を見るミニョの視線が、
なんかいつもよりも熱っぽいのは気のせいか?


ごほんっ。
弱っているお前を昼から抱けとでもいうのか………?

い、いや、悪くはないが………。


「駄目ですか?わたし……眠くって。
 オッパがお仕事をされているのに、わたしだけお昼寝を
 するっていうのが抵抗があって………でも………」

「ミニョ?」

言葉を発すことをやめたミニョを、
慌てて覗き込んでみると、柔らかな笑みを浮かべて……寝ている?


よほど体調が悪いのか?
このまま抱き上げて病院に連れていくことは簡単だが………。

一先ずそっとベッドに横にならせたのはいいが、
折角のオフだっていうのに、正直に言ってしまえばつまらない。


額に張り付いてしまっている髪を、そっと横に流してやり、
こいつが暑くて目が覚めないようにエアコンを入れてやる。

俺の喉には良くないが、
今は体調の悪いミニョを最優先にする必要があるからな。

い、いや、暑いとこいつが俺の腕から逃げていくからとか、
そんな理由では決してないからな………ごほんっ。


「一緒にお昼寝…」


俺の言葉が虚しく宙を舞い、
俺としては特に眠いわけでもないが、
希望を叶えてやるために、………やるためにだぞ?
そっと俺もベッドに横たわった。


そっと腕をミニョの下に潜らせ、
掛け布団の上に寝てしまって、エアコンもついているのに
風邪を引かせては駄目だからな、腕の中に閉じ込めてやってるんだ。

少し強めにかけた冷房。
ミニョの体温と、一定のリズムで吐き出される息に、
眠くなかったはずの俺までもが、いつしか意識を手放していた。



ふと目が覚めると部屋は真っ暗……いや、ミニョだろうな。
俺が見えないと困るだろうからと、ベッドサイドのランプはともっていたし、
その傍らには部屋のライトのリモコンが置かれていた。

ミニョ……?

部屋の中にいる気配はない。

上にかけられていたタオルケットを剥ぎ取り、
俺が寝ている間に体調が悪くでもなったのかと、
慌てて部屋から飛び出した瞬間、俺の耳に響いてきた、
マンネたちのうるさ……賑やかな声に、思わず顔をゆがめる。

ちっ……。


ミニョは俺の愛しい女だ。
だが、時々理解ができない。

ゆっくりと階段を下りていくと、やはり………。

アイスを抱えたジェルミ、
ポップコーンをむさぼりくっているミナム、
そして手にペットボトルのジュースを握り締めたミニョが、
わめきながらテレビに夢中になっている。


おぃ、ミニョ、蓋をしめ……。
あぁ…。

少し離れたところで、ゆったりとテレビを眺めていたシヌと目があい、
苦笑したかと思うと、ポイっと台ふきを投げてよこした。


こういう時のミニョは………正直ただの
マンネーズにしか見えない。

シヌがしれっと耳に指を突っ込んだのを横目に、
大きく息を吸い、吐き出した言葉にマンネーズの3人が、
確かに5cmは浮かびあがった。


「コ・ミナム!お前の周りを見てみろ!ポップコーンだらけだ!
 ジェルミ!お前はスプーンの先からアイスが下に落ちてるのすら判らないのか?」

こわごわと俺の方を振り返ったミニョはに、ため息が出る。
お前……ポップコーンもアイスも分けてもらったんだな……。

口の周りには茶色い何かがついているし、
コ・ミナム同様回りにはポップコーンのカスだらけ。


そして手に持ったジュースがこぼれていることにも気づいていない。


「オ、オ、オ、オッパも見ませんか?
 今、メダル獲得できるかの瀬戸際で………」

ミニョの言葉に目線をテレビに映すと、
………オリンピックか。


くだらない。


ミナムに台ふきを投げつけると、
ジェルミと2人で必死に掃除をしながらも、
目線はしっかりとテレビ……。

怒りに震えそうになりつつも、
ミニョの一言に怒るチャンスをなくしてしまった。



「あの、わたし、施設にいたころはオリンピックは
 見る時間がありませんでした。
 初めてオリンピックを見るので楽しくて………」


そうか。
お前にとって初めてのオリンピックだったのか。


ソファーに腰掛け、人差し指でくいくいっとミニョを呼びつけると、
素直に俺の隣に腰かけたミニョ。

ペットボトルを持ってやり、一緒にみるか?と声をかけただけで、
物凄い笑顔をお前は見せるんだな………。


それにしても顔色がいいな…。
食欲も……ありそうだな。


「ミニョ?お前、元気になったのか?」

「はいっ。おかげさまで。オッパが寝たあと、
 最近毎晩こっそりオリンピックを見ていたから寝不足だったんです」


………。

おぃ。お前、俺に隠れてそんなことしていたのか?
お前……今、決勝に夢中になりすぎて、
とんでもないこと言ったって、気づいてないだろ?

お前の体調が悪そうだから、俺がどんなけ我慢していたと………。
………あとでたっぷりとお仕置きをしてやる。




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「ジェルミ、見ろよ。テギョンヒョンが百面相してる」

「あ、ミナムも気づいた?
 ペットボトルも無意識にミニョが手だしたら、
 蓋はずして渡してるし………しもべみたいだね!」

「くくっ、ミナムもジェルミも、ミニョが居てよかったな。
 居なかったら今頃もっと怒られてたと思うよ。

 ほら、ジェルミ。アイスのシミ、もっとちゃんと落としておいで」

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でした。
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私も寝不足。


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