第15話 母への告知Ⅱ
「冬を越すのは難しいかもしれません」
母の主治医はそう言った。
「もう・・・・もういいです!・・・何もしなくていいです!
このまま何もしないで死にたい!」
それを聞いた母は、こう言って泣き崩れた。
「お母さん・・・お母さん大丈夫・・・落ち着いて・・・」
「だってお母さん死んじゃうんだよ!
あと何ヶ月かでみんなとお別れしなきゃならなくなるんだよ!」
母の横に座っていた父も
筆談で母に何かを伝えていたが
母はそれを見る余裕もない程、混乱していた。
当たり前だと思う。
自分の余命を宣告されて正常でいられる訳がない。
混乱した母の姿を見ていても
私は何も出来なかった。
何て言葉を掛けていいのかさえもわからなかった。
しばらくして先生が落ち着いた口調で話し始めた。
「Kさん、あきらめないで下さい。
治療が何も無いわけじゃありません。これから私も治療の検討をします。
いい抗がん剤があれば完治は難しいですが癌が小さくなる可能性もあります。
Kさんにはご家族もあってお孫さんもいらっしゃる。
ご家族のためにもあきらめないでください。」
「そうだよお母さん!」
「この子(私の次男)だって生まれたんだから・・・
お母さんは4人の孫のおばあちゃんでもあるんだよ!あきらめないで!」
私たちの言葉に母は少し落ち着きを取り戻した。
父も筆談で必死に話しかけていた。
涙を流しながら父の筆談を読む母。
必死にペンを走らせる父。
その両親の姿に私は涙がこぼれそうだった。
悲しかった。
本当に・・・悲しかった。
泣けるものなら今すぐここで泣きたかった。
でも私は泣かなかった。
泣いてはいけないと思った。
本当に悲しいのは母なんだ。
だからここでは絶対に泣かない。
母の前では絶対に泣かない。
そうココロに決めた。
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