金融庁から、日本版スチュワードシップ・コードが発表されました。
英国の同コードを、証券系シンクタンクの方が、日本でも紹介するようになってから5年くらいかかりましたが、ついに日本版が登場!
投資家の責任原則。顧客、受益者のために、機関投資家も責任ある行動、投資をするべし。すなわち、投資先企業の経営にも、より深い知識を持ち、必要なら関与するべし。
その行動がいかなるものかは、コードでは原則を定め、細則は定めない。
細則主義(ルールベース)ではなく、原則主義(プリンシプルベース)!
そして原則には従うか、さもなくば従わない理由を説明すべし(コンプライ オア エクスプレイン)!
これらがキーワードなのですが、これは、やはり英国発で企業側に徐々に導入されつつある、IFRSにも通じます。
細則主義(ルールベース)ではなく、原則主義(プリンシプルベース)。これは同じ。
投資家の行動原則(投資先企業への関わり方)については、これまで細則どころか、特段のルールそのものがなかったのではないかと思われます。一方、企業会計については、従来から細則があったものが、それを離れて原則だけにしようということで、出発点が違いますが、至るところの原則主義、というのは同じです。
機関投資家はコードに基づいた投資行動をとっていく。
一方で、最近、株主として増えているのではないか、と思われるのが
企業が設定する、1)退職給付信託 2)株式給付信託
紛らわしいですが、1)は政策保有株を拠出して信託設定、将来の退職金支払いにあてます。
2)は金庫株を拠出して信託設定、 持株会の将来の買い付けに充てます。
受益者はどちらも従業員。議決権はともに実質的に会社に残る。議決権の対象株は、1)は持合い先の他者株、2)は自社株買いした金庫株。
この信託、受益者が従業員という点では、機関投資家が運用受託する年金資金と同じですが、投資家の責任投資原則のようなものはなく、ガバナンスは働かない株主、というか株式保有です。
受益者たる従業員が結束して、経営者に何かいうか・・・・というと、それは難しい。
スチュワードシップ・コードのようなものを導入する一方で、こういうガバナンスの効かない株式保有の新たな仕組みを、会計的、法的に認めて導入を促すのは、何となく相反する取組のような気もします。