日本経済を襲う二つの波~サブプライム危機とグローバリゼーションの行方
2008年の本ですので、すでにずっと前に話題になったことでしょうが、ようやく読みました。
サブプライム危機、リーマン危機などの分析と日本の、そこまでの不況の分析と今後を予想したものですが、非常に面白い本です。
その後、同様のタイトルの本も出ていますが、クーさんは日本の過去15年の不況も、アメリカの今回の聞きも、バランスシート不況と呼んでいます。

住宅、商業など不動産が過熱。借金してどんどん投資が進む。不動産バブル化。やがてバブルがはじけると、不動産価格=資産が急落。借金は残るので、企業も個人も実質債務超過状態。
個人の住宅でもノンリコースローンが浸透のアメリカでは、債務不履行、住宅競売など続出。
借金は返すもの、という文化の日本では、何とかキャッシュフローのある企業・個人は、借金返済に注力し、投資・消費支出は抑制。不況へ。借金がようやく安全水準まで戻っても、過去の大借金・倒産・破産の恐怖から、預金・貯金積み増しに励み、なかなか投資・消費支出は高まらず。
企業や個人がこういうマインドに陥っていると、金融政策(金利切り下げ)は効果を持たない。
唯一自国通貨安で、輸出は伸びるかもしれないが、不十分。
こうした状況下では、財政政策、国が借金して公共投資に回す。減税よりも投資。
民間の投資・消費がない分を政府が肩代わりするしかない。民間がバランスシート不況から脱して投資を再開するまで、財政再建もやってはいけない。民間の投資が回復して資金需要が出てきたら、国はバトンタッチして財政再建に着手。民間のバランスシート調整を放置しては、お金がどんどん銀行に戻り溜まるばかりで、経済規模がどんどん縮小、景気がどんどん悪化する。

だいたい、そのような内容でした。
今、日本はサブプライム危機は何とか脱して、民間設備投資も回復基調が見え、来年度の経済成長率も上方修正とか聞かれます。ちょうど同じようなタイミングで、菅首相になり財政再建のお話も出てきました。さて、どうなりますか。

巻末で日本の不動産について触れていました。
建物の価値が時間とともに、どんどん低下し、ゼロになってしまうのは日本だけ。
その分土地が上がって来たが、バブル崩壊後、土地は暴落。建物の価値も経年劣化で、日本人の資産は何も蓄積されていない。壊しては立てての繰り返し。
海外に目を転じると、土地は場所によりけりですが、さほど極端には上昇せず。そこに経てた建物は、長寿命を前提に、手入れして、バリューアップ/メンテナンスをしっかりすることで、価値を維持、あるいは上がっていく。不動産で長期の資産形成が行われる。これが当り前。ただ、バブルは時々発生するけれど。
日本は規制を大幅緩和で、高層化を進め、十分な床面積を供給すれば、土地の値段は安定。質のよい建物づくりにお金をかけていけば、不動産の価値が維持される、という内容。
これは身につまされるお話でした。