商事法務NO.1865(5/5-15号)に「アーバンコーポレイション・BNPパリバ間の(CB・スワップ組合せ取引)に関する検討」が掲載されています。 筆者は太田洋弁護士。昨年は企業価値研究会の報告に対する日経新聞誌上での批判が議論を巻き起こした方です。


当該事件では、アーバンがCBを発行したものの、それには非開示のスワップ取引が伴っていました。300億円のCBを引き受けたBNPは、スワップ契約で一旦300億円を受領。その後、CB転換し市場で株式を売却し、その90%をアーバンにスワップの対価として支払うような契約になっておりました。

BNPはCBとスワップ契約をセットで提案、受託したが、スワップは非開示とすることを要請。一般投資家はスワップ契約の存在を知らず、アーバンの財務改善と受け止めて株を買った人もいるでしょう。その結果、株価は上昇または維持された。その背後で、BNPはせっせと売っては鞘を抜いていた。

これがインサイダー取引の可能性がある。しかし、それより重い金商法157条不公正取引または同158条偽計取引に該当するのではないか? と太田氏は言っております。しかし現実は、アーバンコーポに対しては金融庁が課徴金を課し、また経営陣に対して株主から損害賠償請求が出ています。しかしBNPには社内での自主的処分しか行われていません。


昨年ですが、アーバンが破綻して、同時にスワップ取引が開示される数日前に、親しい外資系証券の方と話していて、「どうも実際にはCBのお金が入っていないらしいですよ」と教えていただきました。その時はへ~と思いました。また破綻後の債権者集会では、同社に資金を出していて、この件については損をしてしまった他の外資系証券が、厳しく質問をしていたそうです。


この事件については、太田弁護士の主張するように、証券会社に対しての処分があってしかるべし、と感じます。企業や一般株主利益を犠牲にして、ひょとすると法にも違反して、自らの利益だけを追求する金融機関(特に外資系証券に多いと感じますが)は、相応の処分を受けて、自分たちのガバナンスをしっかりするべきであろうと思います。


職業倫理にはうるさいCFA協会の、コーポレートガバナンス関連のイベントを企画している中で、この件のように、金融機関の問題行動をテーマとして扱ってはどうか?とも考えたりします。

しかしながら、主に外資系金融機関中心に協会活動のスポンサー集めもしている手前、現実的には扱いづらい部分です。 せめて私がブログに書くのは何ら問題ないのですが、同時に何ら影響力もありません。

商事法務は、今回に限らず、色々な意見を掲載しております。これに留まらず、金融機関ガバナンスも、もっと広く関心を集めていくべきと思います。