今朝の日経、マーケット総合欄の大磯小磯「世界があきれる平成攘夷論」。政治の構造改革後退、買収防衛策導入、ファンドの効率化のための提案拒否、金商法等々がグローバル市場のトレンドに反するので、外国人投資家が出て行く、という意見です。
正反対の各分野の方のコメントとしては、日本の企業の情報開示は世界でもトップクラス、会社法関係の自由度も世界トップクラス、会計制度もコンバージョンを進めて、世界基準に完全に同一化する、というものもあります。
中間的な意見では、会社法は自由すぎて取り締まりがない分、投資家もやり放題。そうした状況では今盛んに導入されるような買収防衛策もやむなし・・・ というものもあります。
早大上村法学部長がこうした意見であり、同氏は他に会社法と金商法をミックスした、公開会社法・上場会社法のようなものが必要だと主張しています。
そうかと思うと、最近の商事法務には、公開会社法なんて、ナンセンスという意見もあれば、一番最新号(2/5)の「会社法と金融商品と理非k法の交錯と今後の課題(下)」の中で著名な武井弁護士が、やはりそうした法の必要性があるかもしれない・・・とコメントしておりました。
色んな見方、評価があり、一体日本の制度・環境は世界と比較してどうなんだ? 投資家にとって、企業にとって、どのくらいの水準なのか?という判断が難しい状況です。
先日の住友金属鉱山に続き、住友不動産が新株予約権付きローンで調達を発表。引受は三井住友銀行。これも調達条件も重要な決め手ですが、買収防衛の意味合いもありそうとのこと。確かにいざ何か起これば、親密な三井住友銀行が株式の持分をどっと増やすわけですから防衛策になりえます。形を変えた持合のような感もあります。きっと、このような商品がどんどん売れるのも日本だけなのでは。
2/5商事法務では、モリテックスの総会決議について、裁判所の取り消し判断の解説があります。
その中で、議決権行使株主にクオカードを贈呈したことの解説が興味深い。
会社法120条の利益供与禁止規定違反と判断。基準は、①贈呈に正当な目的があるか、②個々の金額の相当性、③総額の相当性だそうです。この事例では、議決権行使書を会社に提出した株主には500円のクオカードを提供、総額は452万円でした。この点、②③は許容範囲の判断。しかし議決権行使の勧誘としての贈呈という目的の中に、会社提案議案への賛成を勧誘する目的が含まれるので違法と判断されました。
この事件では株主提案が出されて委任状争奪となりました。会社への議決権行使書提出時に議案に反対で出しても、クオカードはもらえました。 なので直接会社議案への賛成を勧誘したわけではないですが、会社議案への賛成勧誘の意図と効果は多少なりともあった(実際可決されました)、ということで違法の判断に。
この解説記事によれば、株主提案がなく、会社提案の賛否を問うだけのケースなら贈呈は○、株主提案があり委任状争奪戦の場合は、×の判断になるだろうとのことでした。 実際に行使株主にお礼をしている会社はモリテックス以外にも
あるので、そうした会社の方はホッとしているでしょう。でも来年はたぶん廃止だな。