TOB不成立はやや残念でした。 同業者による株主名簿の閲覧の可否や、会社売却を決めた取締役として、高い価格の先に売る義務があるのでは?といったポイントについては、結局合理的でないほうが通った感じです。企業側・オーナー側の行動としては理解できる反応。以下の藤島さんのコメントにあるように、プロの投資家の行動が問われるようになるのでは。プロとしてどう対応するか、企業に対してガバナンスに関わるようなことまで、どこまで働きかけまでしていくか。
ロイターのニュースの引用。 CFA協会の5月のセミナーにパネリストで参加頂いた藤島さんのコメント。
●敵対的買収に機関投資家の壁
<大和総研 経営戦略研究所 藤島裕三 主任研究員>
応募はずいぶん少なかった印象だ。敵対的TOB(株式公開買い付け)のハードルはまだ高く、今回は、国内の機関投資家が壁になったのではないか。テーオーシー<8841.T>の資産価値に対して時価総額が低いとのダヴィンチ・アドバイザーズ<4314.OJ>の提案はロジカルだったし、これを隠したまま非上場に逃げるのはよくないとの主張も分かりやすかった。ロジカルな提案であれば、敵対的であってもTOBに賛同するはずで、このTOBが成立していれば機関投資家ももうかったはずだが、「敵対的なのだから応援しても仕方ない」との意識が広がっていたのかもしれない。日本で敵対的TOBのが本当に成功するかどうか、まだまだ疑問視されていることが分かった。
国内の機関投資家が、企業価値を高める提案をしっかり評価できる資本市場にならないと、敵対的TOBはなかなか成立しない。一部で、国内機関投資家が議決権を行使したり、合理的な発言をする動きもあるが、それが大きなムーブメントになっていないと今回の攻防で痛感した。株主提案や議決権を行使しても何も変わらないとタカをくくっているところがあるのではないか。これまで攻められてきたのは経営者だったが、これからは、国内の機関投資家が企業価値をしっかり評価して行動することが求められる。敵対的であっても信念を持って行動するような機関投資家の意識改革が働かないと、非効率な体制が温存されるだろう。