今月の新患のアイさん(仮名)は岩手釜石から今年の3月に娘さんの家に来た。
向こうでは被災者のための新しい集合住宅で一人で暮らしていたが、心も体も耐えられなくなったそうだ。
こちらに来ても、ひどい腰痛と下肢の痺れ、足底の知覚鈍麻で歩くのもままならなかった。
介護施設に勤めている娘さんが、何とかしたいと思い、私に依頼をした。
今月は5回施術をさせていただいた。その度に、こちらが恐縮してしまうほど感謝の気持ちを伝えてくれる。
今、アイさんにとって私の施術が唯一の楽しみだ、と娘さんから聞かされた。
あの津波で、住み慣れた土地から追われ、多くの友人知人と離ればなれになり、身内も亡くしたそうだ。そして10人兄弟が、今は4人になってしまったという。被災者住宅周辺の道は、未だに舗装されていないところが多いとも言っていた。
自分に出来ることは、持っている技術と知識でアイさんに全力で向かい合うこと。
願わくば、アイさんの楽しみが私の施術以外のことになって欲しい。
まもなく6月。
オリンピックの可否についての騒ぎも一段と声高になって来た。
この喧騒にアイさん、そして多くの被災者の方々は何を思うのだろう。
