ドラッグストアで買い物をして帰るときのこと。
駐車場で車に乗り込もうとしたら、すぐ横の地面に紙切れが落ちているのが見えた。
しかもこれがただの紙切れじゃない。
夏目漱石が書いてあるとっても素敵な紙切れなのだ。
思わず手に取ったところ、3人の漱石が私に向かって微笑みかけているではないか。
「千円だと思ったら3千円じゃん、ラッキー!」
とついつい思ってしまったのだが、次の瞬間
「ネコババするの?」
という、もう1人の私の声。
ここで私は非常に難しい選択をしなければならなくなった。
お財布ではなく紙幣のみが落ちていることを考えると、まず落とし主がこの場所に探しに来ることはない。
ということは、仮にお店の人にお金を渡したとしても、レジの足しにされるか、あるいは店員のポケットマネーになってしまうだけだろう。
それなら見つけた私がもらっても別に良いのではないか。
でも、人としてそれをして良いのだろうか。
たかが3千円、されど3千円…。
かなり悩んだ。
多分2分位お札を手にしたまま突っ立って考え込んでいた。
そして心を決めた私は結局店内に戻り、レジのお姉さんに事情を話してお金を渡した。
もしここでお金をネコババしたら何だかダメな大人になってしまいそうな気がしたので(年齢的にはじゅうぶん大人だが)、良心に従うことにしたのだ。
が、しかし。
「私は正しいことをした!」
と思いながら帰宅したのものの、
「3千円だし、やっぱりもらっても良かったかも~」
と未だに考えてしまっている私は多分あまり良い大人にはなれそうもない。