ワルシャワのホステル
ホステルには和みスペースみたいなのがあるが、いろんな国の人々が集まって飲んだり、ご飯作ったり、遊んだりしてる。
今回のホステルでは、心地良さそうなソファ群は、スタッフの女の子とその彼氏らしきのがいちゃいちゃしていて、ふと現れた女の子の親父らしきのが、「ウイー」っつってだらだら横になって占拠されている。
泊まり客は固い木のイスの狭くて薄暗いスペースに追いやられて小さくなっている。
お前らの家か!
っと思ってたんだけど、
お前らの家か・・・
で、そこの固いイスに座り、薄暗い中ネットで次の街について調べてたら、左後頭部のすぐ後ろに人の気配を感じた。
ふと見ると、男が俺のPCを覗き込んでいる。
変に息が荒く、一目見てなにか気持ち悪い空気を放っているのがわかった。
やたら距離が近い。
俺のすぐ後ろの席に座り、ぬるっとした笑顔で微笑みかけてくる。
「ポズナニに行くの?」
スープを飲んでいるが、合間合間に「んふぅ~」とか 「あは~」とか 「ぇへぇ~」とか の吐息がいちいち気持ち悪い
しばらくするといなくなったので安心した。
写真なんかを整理してから部屋に帰ると、そいつが俺のすぐ横のベッドで横になっており、ぬるっと笑いかけてきた。
長袖のしましまTシャツ、真っ白いブリーフにプリッとしたケツ、縦長に丸めた掛け布団を抱きしめるという、驚異的に気色悪い寝姿。
しつこく話しかけてきて、うるさいので適当に切り上げる。
横になり、寝ようとする。
が、
暗闇の中でそいつが「んふぅ~」「あはぁ~」言っている。
ときどき「ブゥー!ブゥーー!」っておならをする。
おれの想像力の豊かさがが災いし、そいつの白いブリーフから出ている放屁をビジュアル化してしまい、おぇ・・ってなる。
疲れていたのですぐ寝てしまい、起きるといなくなっていた。
トイレに行くと、キッチンにいた。
じっとこっちを見ている。
ほぼ無視して部屋に戻る。
暗い部屋に戻り、横になって、リラックスして、ふと目を開けると、目の前にそいつの顔があった。
うわっ!と思い起き上がる
そいつは
「トゥースペースト・・・トゥースペースト・・・トゥースペースト・・・トゥー・・・」
と憑かれたようになんどもなんども話しかけてくる。
歯磨き粉が欲しいの、ってことらしい。
相当気持ちが悪いので、あしらってるとどこかに消えて行った。
またすぐ寝てしまい、ふと気づくと、暗闇の中、今度は別の若者が 激怒して大声を出しながら俺の顔に指を突きつけていた。
今度はなんなんだ・・・。
さっきのとは別の若者で、なんか知らんがこいつはパンツ一丁。
俊敏そうな筋肉を見せびらかしている。
マジ切れしているようで、何言ってるのかわからない。
聞いていると、どうやら、おれの寝返りの音がうるさいと、文句を言っているようだ。
確かに、ベッドは金属製でマットレスに食い込んでいて、寝てても体に金属の網が感じられるくらいヘタッていて、ぎぃぎぃうるさい。
が、
俺の選んだベットではないし、他の人のベッドもぎぃぎぃいってるし、そんなことは知ったことではないので、そう言うと、「次うるさくしやがったら・・・、他のベッドに移れ!この野郎!!」と、怒りながら自分のベッドに戻って行った。
で、
また寝てると、当然、ぎぃぎぃなる。
そいつはしばらく我慢していたようだが、また気付くとそいつの人差し指が目の前にあり、その向こうの暗闇でガーガー怒り狂っている。
なんて実は、あの勢いだったらどうせまた文句言いにくるだろうから、どうせモメるなら早めにモメとこうと思い、多少わかっててならしてたんだけど。
早いとこ解決したいし。
他の人が出した音も、俺が出してると勘違いしてることもわかってたし。
あまりにしつこい上に、人の話聞かないで、自分の主張だけするので、いいかげん腹が立ってきて、口喧嘩になる。
エスカレートするにしたがって、こちらは日本語、、向こうは何か知らんがそいつの母国語で怒鳴りあう。
夜1時。
しばらくそんなことをやっていたが、話にならないので、
「スタッフに言え!どアホ!」
って言ったら、これがまた通じるようで、そいつはスタッフに文句言いに言った。
で、
スタッフ
なのだが、
これが、また、さっきの若い女なんだが、
迷惑そうに、これ見よがしなため息まじりに、
「そっちで話合って。 私の責任じゃない、明日朝から仕事があるの」
みたいな。
敢えて、「みたいな」使うけど
「早く寝て」
みたいな。
いやいや。
ここで寝てもまた同じことになるだろう、この問題の解決もあなたたちの仕事だ
っていうと、
「じゃあもしあなたが部屋を代わりたいなら代わってもいいけど、高い部屋になるから、差額を払うべきね」
みたいな。
いやいや・・・。
もう面倒くさいので、その部屋に移って、明日の朝払わされそうになったらオーナーと話そう、と思い荷物を隣の部屋に運び入れる。
まったくこの夜中に。
モメた若者は寝たフリを決め込んでいる。
何度か往復して運び入れた。
のだが、
最後に運ぶ荷物を持ってドアをしめようとしたとき、
暗闇の中から、
白ブリーフの、
押し殺したような
「んふ~・・」
って甘い吐息が、
微かに聞こえてきた。