まだ暑すぎるのに



闘病まんが(断腸亭にちじょう)を読みこんで、

その抗がん剤の副作用のハードさは知っていたつもりだった。




が、実際のキツさはそれ以上。



ゼロックス療法は、最初からフルスロットルで、

大腸がん治療中の同居人の体を震わせた。




私「どうしたの⁉︎」

同居人「血管が痛くて…」




朝7時前に病院へ向かったのに、

同居人が帰ってきたのは夕方だった。



あまりに遅くて、

途中で倒れているのではないかと心配になった頃、

左腕を庇った状態で帰ってきた。



さながらつげ義晴のねじ式のようだった。




私「『静まれ俺の左腕…』みたいになってるけど、

だいじょうぶ?」

同居人「まさにそんな感じ」



まったく大丈夫ではなかった。



点滴にかかった時間は4時間ほど。


その最中から、


ゼロックス療法の片翼、

オキサリプラチン点滴のもたらす血管痛に、

同居人は蝕まれていたのである。



とにかく点滴を打った血管が痛い。

痛すぎて腕を動かせない。



さらにオキサリプラチンは、

冷たいものを一切受けつけられなくなる。


冷たさ = 痺れや痛み


になるという厄介さだ。




同居人はまだ暑い最中、

手袋をはめて湯たんぽを抱え、

ひたすら左腕と全身を温め続けた。


飲み物は温かいお茶、

もしくは白湯のみ。

おやつも食べ物もすべて温めねばならない。


冷蔵庫には近づかない。

開ける時は私が代わりに開ける。


トイレに行くたびに、

ガスをつけてお湯を出して手を洗う。




冷たいデザートや、

キンキンに冷えた飲み物が大好きな同居人には、

かなりのハードルだと思う。



幸い、私のほうの抗がん剤(ベージニオ)の副作用はそこまでではない。

今のところ腹を下しそうになる雰囲気くらいである。





たまに下腹に力を入れつつ、

湯たんぽに入れるお湯をわかしたり、

できる範囲の手伝いをしていた。




だが、ゼロックス療法のもう片われ、




ゼローダの副作用はこれからだった。





〜続く〜