女の子は、高学生くらいに見えた。
ひどく小柄だったし、手脚が虫のように細く、
髪を短すぎるくらい刈り込んでいた。
この病院へ来るのは三日連続だが、
三日とも、この貧相な女の子は、
同じ場所に、
同じように浅く腰かけて、
目を閉じていた。
着ているものだけが、日々違っていた。
高価なものでないことは、見ればわかった。
今日は長袖の白いトレーナーに足首まで届くようなベージュのロングスカート。
ファッションに疎いぼくでも、それが流行のものでないことくらいはわかる。
女の子は、自分の着ているものに、あまり頓着していないようだった。
月があった。
月は光とともにあった。
総合病院の一階にある売店で、
パンと飲み物を買った。
売店は一日の営業を終えようとしていた。
客はぼくのほか、誰もいなかった。
月を見たのは売店を出てからのことで、
満月を一日過ぎていたが、
月は満月の光のまま空にあった。
それはすぐに墨のような雲に隠された。
辺りは雨の降り出しそうな気配に満ちていた。
エレベーターを使わないで窓の一つもない階段をのぼると、深海を泳いでいるような気持ちになれた。
三階は内科で、
病室を埋めているのは、女性の入院患者ばかりだ。
廊下の椅子に、その女の子は腰掛けていた。
売店へ降りていくときに見かけた時とそのままの光景だ。
声をかけてみたい誘惑にかられたが、それをためらうには理由があった。
第一にこの貧相な女の子と面識がなかったし、
第二に話すことが何もなかった。
五階の病室を目指して階段をのぼった。
ぼくはそこに入院している患者を見舞うために来ていたが、
本音をいえば、その友人の顔をあまり見たくなかった。
友人は自殺に失敗していた。
友人が自殺を図るに到った責任の一端は、
ぼくにあった。