今回はグロイザーXに登場するガイラー帝国の独裁者 ゲルドン帝王 を語る。
アニメ本編とサンコミックス(パンチョス石綿版)の漫画版をソースとして使うが、漫画版は公式設定と相違点が多いためベースはアニメ版とし、漫画版ソースの所は赤い文字で記す。
ゲルドン帝王とは
ゲルドン帝王は、もともとはミハルタスをリーダーとしたガイラー星の宇宙調査団の隊員だった。(漫画版ではキャプテンだった)
しかし乗っていた宇宙船「ゲルモス」が地球の北極に不時着、搭乗員たちは冷凍冬眠カプセルで冬眠し、母星からの連絡を待つが、地球人の行った北極の核実験でコンピューターが狂い、目覚めてしまう。
地球人が核を開発できるほどの技術力を持っていることにゲルドンは恐れ、平和主義であるキャプテン・ミハルタスを暗殺し、実権を掌握、地球侵略を始めた。
外見は青紫の肌に般若のような顔、瞳はなく白目全体が黄色い、濃紫の逆立った長髪、そして赤いローブを着ている。
まるでファンタジーもののモンスターのような外見だが、ガイラー星人には地球人に似た外見からゴリラのような外見まで、多種多様な人種があるため、物語を見ているとあまり気にならない。
彼の思想はタカ派であり、すぐに声を荒げる短気な性格であるが、実際は非常に優れたカリスマ性や洞察力を持っており、部下の扱いにも長ける。
彼の能力の高さを劇中のシーンから挙げると
「日本を地球侵略の前哨基地にするために最初に攻撃、理由として日本が立地的・技術的に優れており、勤勉な国民性を持つため奴隷としても使えるから」
「作戦立案でも、日本が空爆に弱いことを見抜き、爆撃機の空爆ロボで攻める、他にも島国であることから輸送船や農作物を攻撃して日本のエネルギー不足を狙う」
「優秀な部下をしっかりと評価し、任務に失敗しても処刑しない」
「戦術だけでなく、ガイラー帝国の内側も徹底的に管理、ガイラー星への帰還は不可能というプロパガンダ※や、ガイラー星人至上主義の思想教育、食料物資の確保など」
※アニメ版では地球人の設備を借り、ガイラー星と通信が取れるまで帰還できなかったため、ガイラー帝国単体では帰還が不可能というのは本当だと思われる。しかし漫画版ではグロイザーXを改造することで帰還できた。
また、リタに「恐ろしい野望に取りつかれた」「すでに狂っているゲルドンによって」などと言われており、元は侵略の野心を持っていなかった可能性も考えられる。
そう、ゲルドン帝王は同時期の昭和の悪役のような暴君とは一線を画すキャラクターなのだ。
なぜゲルドン帝王が支持を受けたか
アニメ版と漫画版のソースから、ゲルドン帝王がなぜ支持を受けたのか、ガイラー帝国の内部事情や国民感情を考察する。
以下に記す考察はあくまでファンによる非公式なものであることに注意してほしい。
第2話ではリタの回想で、多くのガイラー星人がゲルドン帝王の演説に参加し、彼の主張に賛成している描写がある。
彼の思想は「地球人を皆殺しにしてでも地球を侵略し、地球を第二のガイラー星にする」「ガイラー星人は地球人より優れている」というまるで欧米の白人至上主義を連想させるヤバすぎる選民思想だ。
ガイラー星人の性格について、第22話でリタはガイラー星に対し「平和で幸せな星」と評価しており、一般的なガイラー星人は平和主義であることが考えられる。
ではなぜ平和主義であるはずのガイラー星人の多くがゲルドン帝王の主張に賛成し、結果としてゲルドン帝王が主権を握るようになってしまったのか?
平和な今の時代から見れば「地球人と対話すべきでは」と考えられるが、不時着当時(恐らく1670年ぐらい)の地球人は頻繁に戦争をしていたため、地球人に良い印象を持っているガイラー星人は少数派だと考察できる。
頻繫に戦争をしていたとはいえ、不時着当時は剣や火縄銃程度の武器で戦争していた地球人、しかし冬眠から目覚めた時、その地球人が核開発できる技術力を持っていたら、どうなるだろうか?
当のガイラー星人になってみれば、地球人が勝手に行った核実験のせいで冷凍冬眠から目覚めさせられ、母星からの救援が絶望的、こうなってしまったら「野蛮な地球人が自分たちガイラー星人以上の技術を身につける前に早く殲滅させ、地球を第二のガイラー星にする」と、対話という理性のない極端な反地球人思想になっても何もおかしくなく、むしろ生存本能から合理的とも言えるだろう。
事実として、空爆ロボは大東亜戦争でのアメリカ軍のように日本を無差別爆撃して大量の民間人を虐殺したが、ほとんどの空爆ロボ隊長は地球人を殺すことに躊躇いや後悔が無かった。
さらにリタの元カレであり、彼女が「正しい立派な人」とまで評価していたケントですら、テレビ局員を容赦なく撃ち殺し、そのことを問い詰めるリタに対して「ガイラー帝国に忠誠を誓うのは当然じゃないか、我々ガイラー星人は遥かに地球人より優れているんだ」と反論した、それほどガイラー帝国の国民感情は反地球人思想だったのだ。
もちろんゲルドン帝王の主張に反対し、地球人と和解したいと思っている者も、ミハルタスやリタ、ヤン博士、さらに空爆ロボ隊長であるはずのビッキーやハーロックなど、少数ながら存在した、しかしゲルドン帝王はミハルタスを殺害し、ヤン博士を牢に投獄、リタは日本に亡命し、残った平和主義者はゲルドン帝王に反発できないでいた。
冷静かつ合理的、しかし恐怖に飲まれ、対話という理性を失った独裁者
仮に、ガイラー星から出発する時点でゲルドンがゲルモスに乗らず、ミハルタスが死亡しない世界線だったとしても、ダガー元帥や空爆ロボの隊長など、タカ派の人物がゲルドンのような立場になり、本編と同様、ガイラー星人は地球を侵略することになるだろう。
正史との違いは、ダガー元帥らの能力的にゲルドン帝王ほどの独裁や戦術は出来ず、早期に内部分裂が起こりガイラー帝国が弱体化する程度か。
まとめとして、ゲルドン帝王は悪魔や大魔王のような化け物などではなく、地球侵略の根本的な元凶でもない、あくまで地球人に恐怖を抱いて対話という理性を失い、生存本能から加害者になる選択をした1人のガイラー星人でしかなく、その代表者というだけだ。
ゲルドン帝王は国民感情的にも避けられない戦争を前に責任を持って戦ったとも言えるのだ。
もちろん、ゲルドン帝王が行ったことはアメリカの大統領であるルーズベルトやトルーマンの行った日本人虐殺と同じであり、まごうことなき極悪人である。
私はゲルドン帝王には理解はできるが、彼に肯定はできない。
しかし、私は「ゲルドン帝王」という、複雑な立場を持つ1人のキャラクターが大好きなのだ。
もし、冷凍冬眠から目覚めた後、奇跡的にガイラー星人と地球人が平和に交流出来たら、彼はどのような人物になるのだろうか。
ゲルドン帝王という悪役について、ここまで語れるのは「グロイザーX」という傑作ロボットアニメの奥深さにあるだろう。






