自宅での緩和ケア中も兄は自分なりのリハビリを続けていたそうです。
スクワットは特に。
荒い息づかいをしながらも…
心臓に負担がかかっていただろうね。
火葬した時、骨盤~下肢はしっかりしていたのは努力の成果。
頑張っていたね。凄いよ。

兄の最後のおねだりは有機ELの大型テレビ。
広いリビングではなく、その隣の介護ベッドの置いてある狭い客間に。
自分が動けなくなったら、大好きなお嫁さんのKちゃんと並んで、今まで行った数々の旅の写真を見たかったんだって。
でも、しっかり者のKちゃんはなかなかOKしてくれなった。

入院中、神経質な兄を気遣い、ずっと個室にしてくれていたことや、自宅での急な故障による多額な出費があったから、それは仕方ない。

Kちゃんの気持ちもわかる。
ただ、やっとOKが出て、テレビが届く前日に亡くなってしまったのが残念でしかたないんだよ…

だから、亡くなった翌日は配送されたテレビの配線をする隣のテーブルで葬儀屋さんとの打ち合わせをするという事態に(苦笑)

兄が欲しかったテレビはリビングに置くにはピッタリ。
大きくて画面もとっても綺麗!
翌朝、北海道好きだった兄夫婦が観ていた朝ドラ「なつぞら」が放送された時に、せめて音だけでもと兄の寝ている部屋との仕切り戸を開け、顔にかけてあった布を取ってみたら…

なんと兄の目頭と目尻に涙がたまってる!
キッチンで朝食を作ってくれていたKちゃんに報告!
すると「やだ、怖い」
絶句した(苦笑)

湿度などの関係で涙では無かったのかもしれない。
でも、遺族としては欲しかったテレビの音だけでも聴けて嬉しかったのだと思いたい。
だって、兄の涙はそれっきりだったのだから…

もう少し早くテレビ購入を叶えてくれていたらなぁ…

あと子供の頃から菓子パンが好物だった兄の最後の晩餐は「あんドーナツ」だったらしい。
食欲も無いのに自ら「食べたい」って言ったって。
でも、消化に悪いからと心配したKちゃんに止められた。

葬儀後、実家の仏壇に美味しいパン屋さんで買った、あんドーナツを母と真っ先に供えました。
うちは真言宗。檀家でもあります。
でも、最期まで献身的に看てくれたKちゃんだから、Kちゃんの希望通りKちゃんの信仰で葬儀をして良いと言いました。

だから、実家の仏壇には兄の位牌はもちろん、お骨も何もありません。
写真だけ。
でも、良いの。

兄にとっての「優しいあの子」はKちゃんなんだから。
ね、そうでしょ?お兄ちゃん。