泣く子も黙る、この冬の新製品っ
それは…
【PIEPS ミニIPS】だっっっ!!

IPSとは《Interference Protection System》の略で、電磁気干渉保護システムのこと
具体的には、発信時にビーコンの近くに金属があった場合に送信電波が減衰してしまい、捜索側のビーコンとの距離が実際より遠く表示されたりキャッチできなかったりするケースがあるが、IPSを搭載したビーコンは自機が発信する電波が減衰していることを感知すると送信出力を増大させて『埋まっちゃっても確実に見つけてもらえる』ようにビーコン自身が努力してくれるというもの
携帯電話・デジカメやスマホ・無線機などが発信ビーコンの近くにあると、グループチェックの際にサーチ側のビーコンの距離表示がおかしくなることを経験的に知っている方は多いと思います
…が、実際には電磁波を発生させる上記のガジェットよりも【金属そのものが発信ビーコンの電波減衰の原因となる】ことはまだまだ知らない方が多いと思います
一昨年の㈱ロストアローさんの講習会では、実際に発信ビーコンの上に様々なものを置き、手元のサーチモードのビーコンの距離表示がどのように変化するかという実験を行っていただきましたが、めっちゃ以外だったのが『ウィダーインゼリーのパウチは影響が大きい』というものでした
スマホも機種によって影響の大小に差があり、iPhoneはボディにアルミが多用されているので影響が大きいとのこと
なるー。
但し、サーチモードにおいては電波を発信する機器の影響は大きくなり、身に付けているそれらの機器からビーコンまでの距離は50cm以上離すことが奨励されています
で、PIEPSの最強ビーコンである【プロIPS】では発信時に電波減衰を感知すると『出力あげてしまえ!』という指令が出るようになったのですが、なにせこのビーコンはPIEPSの技術がぜーんぶ詰め込まれており、値段も高いしちょいと重さもあるんです
スキーガイドとか雪崩が想定されるエリアを持つスキー場のパトロールの方などをメインユーザーとした機種なので、とりあえず最高のものではあるけれど、正直なところ一般層のユーザーが所持するにはオーバースペックでした
で。
八甲田スキーガイド時代のゲストで、ボクが20代の頃に通っていた新潟の《かぐらスキー場》をベースに活動している写真家の《うーさん》からウワサを聞いちゃった
それは…
『どうもIPSのちっこいやつが出るらしい』という話。
まぁ、関東圏からパウダー狙いでスノーフリークたちが集まるエリアなのでいろんな情報も集まるんだろうと思います
時にはオープン前の情報が勢い余ってリークしたりってことも…w
そんなこんなで冬がやってきて…
入荷しました【PIEPS ミニIPS】っっっ!!
従来の普及版【パウダーBT】は本国では廃盤になり、PIEPS本社としては【ミニIPS】を普及盤にしたいらしい

⬆️ パウダーBT
しかし、輸入元のロストアローの想いとしては『日本の冬山登山者にビーコンを普及させるためには価格を抑えにゃ!』というところがあるため、先シーズンの春にヨーロッパに出向いてPIEPS本社の【パウダーBT】の在庫分を大人買いする代わりに値切ってきてくれたみたいっす
そのため【パウダーBT】は捜索レンジが60mのビーコンなのに価格が税込みで4万切ってるという、日本市場において《コスパやばすぎビーコン》となっています❤️
捜索モードにおいてXアンテナとYアンテナの切り替えが0.02秒だったり、ふたつのアンテナの長さが等しいため捜索範囲が球状だったり、実際に使う上で象さんマークのビーコンよりかなり優れていますよっ!!
さて。
話を元に戻します
【ミニIPS】の話題ね。
IPSを搭載しただけならば『あー、いま風のビーコンに仕立ててきたのね』で終わっちゃうんだけど、サーチモードにおいても【プロIPS】に採用されている技術を搭載しているとのこと
それは《デジタルフロントエンド》と呼ばれるもので、従来のビーコンは、アナログ波のパルス信号をキャッチしてデジタル信号の解析をする装置(デジタルシグナルプロセッサ)に送る前に下処理する部分がアナログ回路だったものを、【ミニIPS】は【プロIPS】同様にデジタル回路にしたというもの
これにより、信号の処理能力がアナログのものに比べて40倍になっているそうです
これに加えて【プロIPS】には《デュアルシグナルプロセッシング》機能が搭載されているため処理速度が2倍になり、従来のものに比べると《40×2》で80倍のスピードでデータ処理しているらしい
⬆️ 【プロIPS】はXアンテナとYアンテナの信号を同時受信して解析している
【ミニIPS】は普及版ということもあり《デュアルシグナルプロセッサ》は搭載していないけど、2025年の冬現在の市場に出ている他社のビーコンの40倍のスピードで信号処理をしているとのこと
と、ここまでは輸入元のテレマーカーHさんに聞いた話。
なるほどー
どうしてもジャケットのポケットに無線機やスマホが入っていることがあるし、お客さんを撮影するためにデジカメを胸に下げて滑ることもある
IPSだけじゃなく捜索時の機能も最新技術が詰め込まれてるなら、店での接客に活かすためにも現在使ってるビーコン(BlackDiamond ReconLT)を更新してもいいかなーって思いまして…
買っちゃいました❤️
で、開封の儀。
じゃーん💕

蓋を持ち上げると《MINI IPS》の文字が。
おぉぉぉぉぉぉー

スケスケ❤️
液晶画面、おっきいねー!
市場に出ているビーコンの中では本体との面積比で最大画面らしいっす
【リーコンLT】も見易かったけど、並べてみるとこの通り

老眼の人には有り難いっすww
もちろんバックライト搭載で、薄暗いところでも液晶がはっきり見えます
そして、【プロIPS】同様に『敢えて』アニメーション表示を不採用としており一見するとクラシカルな感じもしますが、これにより自機が電磁ノイズを発生することを防いでいます
他社のトップモデルには分かりやすくカッコいいアニメーション表示が採用されているものがあるけれど、なんと捜索時にはこれが原因で電磁ノイズが発生し捜索の邪魔になっているとのこと
講習会ではこの辺りのことも詳しく解説していただき、『なんでも最新にすればいいってもんでもないのね』と目から鱗でした
で。
上の写真のように【ミニIPS】を【リーコンLT】と並べて正面から比べると少し大きくなったみたいに見えるけど…

厚みはむしろ若干薄くなってるかも。
【リーコンLT】は手元が絞られていたけど、【ミニIPS】はスクエア形状です
カラーリングはPIEPSお得意のスケルトン!

今回は『雪のイメージにしてみました』だそうです
でも真っ白にしない辺りがPIEPSかもw
ひっくり返したら、裏側は真っ白でしたww

捜索時の注意点がプリントされています
これはビーコンの画面に表示される距離によって、どのような動き(走る・歩く・慎重に探す)でサーチするかを描いたもの

【コースサーチ(粗いサーチ)➡️ファインサーチ(細かいサーチ)➡️十字捜索】という流れ
なお、捜索レンジが50mのビーコンだけどスペック表示は《捜索帯域幅50m》となっており、これはカップリングが最悪の状態(垂直埋没など)を想定しているとのこと
なので、上の写真の下部に表示されている『捜索メンバーが横一列に並ぶとき』は、全員が捜索レンジ50mのビーコンを持っていたとしても《最低有効捜索距離》が25mなので、隣のメンバーとの間隔は《25×2》で50m、列の一番端の人は雪崩の走路の端から25mの位置に立つ、ということになります
《50m》はあくまでも埋没ビーコンとベストカップリングになった場合のMAXの距離らしい
いままでこの辺りのことが自分の中でよく理解しきれてなかったので、ロストアローHさんに質問したら分かりやすく解説してくれました❤️
さて、電池室の蓋にはヨーロッパとアメリカの救急の電話番号がプリントされ、さらに捜索時の行動の順番と、ビーコン発信時と捜索時の電波干渉源からビーコン本体を離すべき距離について図解されています

サーチの時は50cm、センドの時は20cm離せとのこと
スイッチは本体上部のロータリー式です

黒いバーがロック機構
バーに指をあてて…

これをスライドさせますっ

んでもってダイヤルをひねってスイッチオン!
なんか違和感あるなーって思ったら、【リーコンLT】は時計回りのロータリースイッチだったけど【ミニIPS】は反時計回りでした
この辺りはどういう理由で変更になったのか分かりません
まぁ慣れればなんてことはないと思います
で、スイッチオンの直後に自己診断を終えると『OK』の表示が出ます

このあと5秒間のカウントダウンが始まり、グループチェックをしたい場合はカウントダウン中にマーキングボタンを押します

⬆️ カウントダウン中の『あと4秒で送信になるよー』の状態
ここで旗のマークを押すとグループチェックに移ります
グループチェックモードでは画面の下に『GROUP』の表示が出ます

デフォルトでは距離が1m以内の設定
アプリで設定すると3mにも変更できますが、これはスノーモービルのユーザーを意識しているらしい
⬇️
【プロIPS】は、いまのところ3mには切り替えできないみたいでした
電池は単4乾電池を2本で、アプリの切り替えでアルカリとリチウムを選択できます
リチウムの方が軽く-20℃でも電圧が下がらず、加えて長寿命っす!

蓋を開けてみたら、なんと電池が同じ方向を向いてました!
え?
直列じゃないの??
ルーペで拡大してみたら、まさかの並列でした!
試しに電池1本抜いてみても普通に作動するしww
普段のクセで互い違いにセットしちゃいそうですが、電池交換の際には気を付けましょう!!

⬆️
プラス側(右)とマイナス側、それぞれ金属プレートが2本の乾電池を繋いでいます
なんと、1.5Vの並列回路なんですっ
アルカリからリチウムに変えることで電池寿命めっちゃ延びるし、最悪の場合は電池1本でも稼働してくれるかも(メーカー要確認w)
*******
さて。
次は家の中で《IPS》の実証実験です
まずはBlackDiamondの【リーコンLT】を送信状態にします

ちなみに【リーコンLT】にはアンテナのスイッチング機能が搭載されており、普段はXアンテナから発信しているけれど何らかの電磁波干渉があるとYアンテナからの発信に切り替わります
上の写真の液晶画面、右側の黒い線はXアンテナから発信していることを示しています
この《電磁波干渉を受けているアンテナをスイッチする機能》ですが、新製品の【ミニIPS】には搭載されておりません
なぜなら、IPSを実装することによりアンテナのスイッチングが不要だから!
なぜか【プロIPS】にはアンテナスイッチング機能が搭載されていますが、『最新機能全部載せ』モデルだからかもしれませんw
さて、実験に戻ります
先ほどの【リーコンLT】を【ミニIPS】でサーチしてみると、距離は4.4mの表示。

(実際にはフラックスラインに沿った距離なので、ふたつのビーコンの直線距離ではありません)
次に【リーコンLT】の横に電源オンの無線機を置いてみます

無線機のスピーカーにはマグネットが使われているので、かなり影響があるはず
んでもって【ミニIPS】の表示は…

4.4mから6.9mに変化しました
方向を示す矢印の向きも変わっていますね
次は【ミニIPS】を送信側にします

まずは何も障害物がない状態
同じ位置関係で【リーコンLT】をサーチモードにしてみると、4.5mの表示

0.1m程度は誤差の範囲と考えていいと思います
次に、いよいよ【ミニIPS】に無線機をくっつけてみます!

すると、画面に変化が…
ん?

お!
なんと【IPS】の表示がでましたっっっ!!

おぉぉぉぉぉー❤️
この表示があることにより、送信出力をアップして発信電波が減衰した分を補っていることが分かります
んでもって、【リーコンLT】の表示はというと…

最初より近くなってるww
それだけ出力アップしたってことかな?
なんか、小さいボディで頑張ってるの分かると可愛くなっちゃいますね💕
今回は家の中での簡易テストでしたが、改めて広い場所でテストしてみたいと思います!
《再サーチ機能》とか《グループチェックのプロモード》とか《X・Yアンテナの同時処理(デュアルシグナルプロセッシング)》などは非搭載だけど、デジタルフロントエンドの採用で信号処理スピードは40倍&他社はいまのところデジタルフロントエンドを搭載した機種が無いなど、コンパクトモデルながら従来のPIEPSマイクロシリーズとは一線を画すモデルに仕上がっています
プロユースではないけれど買い換えのタイミングが来ているというユーザーさんにはイチオシですね
お値段は、税込みで55,000円です
まだPDF版の詳しい説明書がないので本国サイトで機能について読み込んでいるところですが、もしご質問があればコメント欄にお寄せくださいネ
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