【試写会】ソウルキッチン | さんの徒然日誌

さんの徒然日誌

撮った写真や作ったプラモを載せてます

2009年 ヴェネチア国際映画祭 審査員特別賞 受賞作品。

http://www.bitters.co.jp/soulkitchen/

ひかりTVのリビング試写会(自宅のテレビにて試写できるサービス)
に当選したので早速視聴してみた。


【ストーリー】(公式HPより)

ハンブルクでレストラン“ソウル・キッチン”を経営するジノス。
恋人のナディーンが夢を追って上海に行ってしまったり、
税務署からしこたま滞納していた税金の支払いを迫られたり、
衛生局から新しいキッチン設備の導入を命じられたり、
食器洗浄機を動かそうとしたら椎間板ヘルニアになったり……と、
このところ上手くいかないことばかり。

ヘルニアで調理ができなくなったジノスが頑固者の天才シェフを新しく雇うと、
彼が作る料理が評判を呼んで、店は連日大盛況!
そんなある日、兄のイリアスが刑務所から仮出所してくる。
イリアスが店のウェイトレス・ルチアに惚れて、
音楽好きな彼女のために盗んできたDJセットでジノスの大好きな音楽をかけながら、
店は絶好調に繁盛し出した。すべては上手く回り始めた、ハズだった。

しかし、ソウル・キッチンの土地を狙う不動産が現れ、
店は乗っ取りの危機に陥る……。
この店はオレたちの心(ソウル)。なくすわけにはいかない!







以下、内容を全てばらすので、ご了承頂きたい。




ストーリーの上述の通りで、ネタばれをしてしまうと
乗っ取りを計画した不動産屋は税務署の女からの復讐にあい
投獄されてしまう。

この税務署の女がまた怖い。
普段は鉄の仮面を被って非情なまでに職務を遂行するのだが、
ひょんなきっかけで催淫剤入りのデザートを口にした途端
淫乱女に大変身。

その時にヤッてしまう相手が不動産屋なのだ。
不動産屋は彼女の恐ろしさも知らずに携帯でみだらな姿を
パチリと撮影し、卑猥な言葉を吐き捨てる。
それが彼女の怒りを買ったという話しだ。

その後、店の土地と建物は競売にかけられるのだが、
ジノンは信頼関係を結ぶに至った女性から借りた20万ユーロ(マルクかも…)
を手に競売に挑む。

競合相手の大企業は20万をものともせずに値を吊り上げようとするが、
ジノンの友人であるじいさんが「資本主義の犬!」などと喚いて
強制退場させられる弾みで飛んでいった服のボタンが相手の
口に入り込んでむせてしまう。

むせている間にジノンは手持ちの小銭を追加してコールをかけると、
それが最終コールとなり見事に落札。

ジノンは店を取り戻すことができたのだった。


ちなみにジノンは話しが始まった当初付き合っていた恋人とは
上手くいかずに、ヘルニアの治療で知り合った理学療法士の
女性と恋に落ちていく。

駄目兄貴は本当に駄目だ。
人はいいのだが、浅はかで頭が足りない。
そして弱虫だ。
本当に駄目なやつだけれど、どこか憎めない。
惚れた女のためにオーディオセットを盗みだして、不動産屋に
はめられて店の権利をギャンブルで失うなど、駄目エピソード
のオンパレードでも、ちらりと見せる優しさと純粋さが
彼を憎めなくさせる。
最後は再び刑務所に入ってしまうのだが、しょんぼりしている様、
惚れた女が面会にきたときの喜び方、どれをとっても何とも愛しい。

しょうがない奴だなぁ…と思いつつ受け入れてしまう弟の気持ちが
分かる気がする人物描写が実に巧みだった。

それから面白かったエピソードといえば、金がなくて
健康保険に入っていないジノンは医師の治療を受けることが
できない。
ヘルニアが悪化して、いよいよ手術しか手段が無くなったとき、
金のない彼が選んだのはトルコ人施術師による腰痛治療。
それがまた何とも古典的で、ロープで身体を引っ張り上げて
整体するというものなのだ。

イメージ的には漫画でよくあるような、ボキボキっと音を
鳴らして苦痛に「ギャー」と悲鳴をあげるような整体方法。

その施術に向かうまでのジノンの恐怖心は見ている方も
「ひえー」と肝を冷やす。
身体にメスを入れる行為と比較したら優しい行為かもしれない
けれど、ダイレクトに痛みを感じる様は恐ろしい。
麻酔は偉大だな…とか思ったりもした。


この映画は全くファッショナブルではない。
むしろ泥臭くてびんぼっちぃ。
それでも、その中で彼らは皆一生懸命「生活」をしている。
そこには確かに「日常生活」を感じさせる。

そして、最後がハッピーエンドがゆえだろうが、
こんな奔放でリズミカルで楽しげで自由で
人の繋がりが暖かいお店に行ってみたいと思わせる。
そんな空間を自分も作ってみたいと思わせる。

希望をくれるコメディだった。