『家出レスラー』製作のスターダム岡田社長「プロレスファンになめられない映画で希望を伝えたい」 | プロレスライター新井宏の「映画とプロレスPARTⅡ」

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週刊プロレスモバイル連載「週モバロードショー~映画とプロレス~」延長戦!

岩谷マユを演じた主演の平井杏奈(左)と岩谷麻優

山口凱旋大会にて

※6月30日(日)より、刈谷日劇にて追撃上映!

 

 前週に引き続き、岩谷麻優の半生を描く映画『家出レスラー』をプロデュースしたスターダムの岡田太郎社長にインタビュー。この作品を作るにあたり、一番に心掛けたこととは?

――プロデューサーとして、どういう作品にしたいと考えていましたか。

「まず一番は、見てくれるであろうプロレスファンに、この映画製作チームはプロレスに対してちゃんと尊敬している、リスペクトを持っていると感じさせたい。プロレスに対してなめられたくないという思いがありました。というのも、新日本プロレスとスターダムをグループに入れているブシロードが作る映画ですから、プロレスファンから絶対になめられてはいけない。プロレスを尊敬している映像を作る、というのが一番でしたね」

――プロレスシーンに説得力を持たせるということですか。

「そういうことです。映像の技術として、決してプロレスをさぼらない。このレベルでいいやと、いうところで出さない。そこをまずは気を付けました。また、岩谷選手の半生を描くので、岩谷さん本人もそうだし、そこに関わる周りの人たち、実在の人物にご迷惑というか失礼のないように注意しました。実在の場合、映画としてこういう解釈をしますという形と、しっかりと岩谷さんの目線で描き切るということを心掛けましたね」

――たとえば映画内でも団体名はスターダムですし、ブシロードの名称もそのままです。また、岩谷麻優が岩谷マユであったり、選手の名前が変わっていたり。実名もあるし、実名でない部分もありますよね。また、複数の人物が合わさっているような登場人物もいたり。そのあたりのバランスをどう考えましたか。

「何パターンかあります。まず100%その人がモデルですという人と、80%がその人とか、7-3でこの人とこの人を合わせたり。また、ゼロの人もいる。このようにしたのは、すべてを100とかにすると全員の人生を知らないとおかしいし、全員の視線から見ないと矛盾が生じる。それはただのドキュメンタリーというか、事実の歴史検証になってしまうんですよね。歴史検証になってしまうとスターダムのファンしか見ない。大事なのは、かかわった人たちや出来事がいかに岩谷選手の人生に影響を与えたかというところであって、映画としてわかりやすくするためにいろいろと調整をしています。そこは気を使ったところでもありますね」

――スターダム買収のシーンで、ブシロードはそのまま100%ブシロードとして出てきました。

「そうですね。ただあそこもフィクションを織り交ぜながらやっています。買収の事実はそのままに、映画内では社長交代してないとか、細かい違いはありますね」

――すべてを事実のまま追いかけてしまうとテーマの軸もブレるでしょうし、マニアックになりすぎずプロレスファン以外にも通じる作品を意識したということですよね。

「そうです。アニメのシーンを取り入れたりとか、華やかな女優さんたちや芸人さんたちのおもしろいシーンとかも入れて。マユというひとりの女性の人生に目がいくような構成を脚本家さん、監督さんに作ってもらえるようにしましたね」

――結果として、すごく楽しい映画になりましたね。プロレスファンのみならず、子どもからお年寄りまで万人に勧められる作品になっていると思いました。

「“希望”にしたかったというのがありますね。話の中で、引きこもりになった理由とかも描いているんですけど、そういうのをラストシーンにした方がいいんじゃないかとか、ラストを重めで衝撃の展開という案もあったんです。でも、やっぱりいまの時代に必要なのは“希望”だし、いまの岩谷選手じたいが“希望”なんですよね。それで、最初はあえてちょっと重めな空気で始まって」

――逆に衝撃のオープニングでした。

「そういうのもありつつ、最後はハッピーエンドというか、“希望”に満ち溢れたエンディングにしたかった。“希望”を伝えたいこととして、チーム一同でそういう映像づくりをしてきたということになりますね」

――いましか通用しない映画ではなく、いつの時代にも通じる普遍的な作品になっているとも思います。たとえば5年後、10年後に見ても共感できると思うんですよね。公開されていかがですか。

「見た方の反応はいいですし、もっと届けたい人に届けなきゃというところもあります。まずは全国の劇場で公開して、見逃してしまった方には次は配信とか、家にいても触れられるチャンスが出てくると思います。この作品に触れる機会を多くして、さらにスターダムを見に来てもらえるようにしたいし、岩谷麻優という人間がもっともっとスーパースターになってくれるんじゃないかと思っています」