「ゴジラ×コング 新たなる帝国」ブレーンバスターさく裂で超楽しい怪獣プロレス! | プロレスライター新井宏の「映画とプロレスPARTⅡ」

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 武器を器用に使いこなし軽快な動きを見せる巨大怪獣など見たくない。ゴジラとコングがダッシュで駆ける予告編で「絶対に観ない」と決めていた『ゴジラ×コング 新たなる帝国』(24年)だが、“ブレーンバスター”が出るとなっては観ないわけにはいかないだろう。

 ここまで観てきたアメリカ産のモンスター・ヴァース群では見事なくらい内容をおぼえていない。なにしろゴジラとコングが『ゴジラvsコング』(21年)で闘っていたことや、キングギドラがどの作品に出てきたのかさえ忘れていたのだから。

 しかしながら、こんどの『ゴジラ×コング 新たなる帝国』はしっかりと記憶に残る映画になりそうだ。なんてったって、楽しい! モンスター・ヴァース作品群で、楽しさなら間違いなくナンバーワンだ。

 その要因となっているのが、ここまでやるかというくらいの思い切りの良い“怪獣プロレス”表現。怪獣プロレスとは怪獣バトルの際に比喩的に使われることの多い言葉だが、今回のそれは文字通りの“怪獣プロレス”なのである。

現実には、怪獣の着ぐるみ姿のレスラーがリングで闘う怪獣プロレス団体がアメリカにも日本にも存在する。ゴジラ発祥の地はもちろん日本だけれど、団体としての怪獣プロレスは1995年にアメリカでスタートした怪獣ビッグバトルが先駆けで、ほかにも複数ある。日本では雷神矢口が23年9月に旗揚げした怪獣プロレスがそうだ。

そして今回、決して比喩ではない怪獣プロレスがスクリーンで展開された。ゴジラvsコングのシングルマッチがなんとエジプトで始まり、本当にブレーンバスターがさく裂する! おかげでギザのピラミッドは全壊状態となり、人類の遺産はあっけなく破壊される。が、試合はモスラの仲裁からタッグマッチへと発展。彼らが本当に倒すべき相手は地下世界のサル帝国(『猿の惑星/キングダム』を一足早く観た気分になる)を仕切るスカーキングとその部下である氷河期怪獣なのだ。

そして闘いは、地下空間の無重力バトルからリオデジャネイロに飛び火。ドロップキックやスリーパーホールドも披露され、セコンドのミニコングも大活躍。そして最後の「ダーッ!」からの勝ち名乗り。地下世界における南海の孤島感も加わり、いったいいつの時代の映画を観ているのだろうという気分にさせられる。「絶対に観ない」と思わせたゴジラとコングの駆けっこにはザ・ロードウォリアーズの入場曲「アイアンマン」を被せたい。そここそがまさに入場シーン! 『ロッキー3』(82年)におけるロッキー&アポロの砂浜全力疾走も思い出した。