「アイアンクロー」棚橋弘至&有田哲平トークイベント(後編) | プロレスライター新井宏の「映画とプロレスPARTⅡ」

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週刊プロレスモバイル連載「週モバロードショー~映画とプロレス~」延長戦!

 「呪われた一家」と言われたエリック・ファミリーの実話をもとにした映画『アイアンクロー』。4月5日(金)の全国公開を前に、3月28日、東京・kino cinema新宿にて先行上映会が開催され、レスラーであり新日本プロレスの社長でもある棚橋弘至、大のプロレスファンとしても知られるくりぃむしちゅー有田哲平が登場、実況アナウンサー清野茂樹のMCによるトークショーをおこなった。イベントは満員の中おこなわれ、映画のテーマ曲「Live that way forever」に乗って棚橋と有田が登壇。今回は、前週に続く後編。

 

清野「有田さんは熱狂的なマニアですからいろんな映像をご覧になるわけじゃないですか。いま映像が世界中に日本にもたくさんあって、チェックするの大変じゃないですか」

有田「大変ですよ。本業なんてやってられないですからね!(笑)プロレス見てるほか、こういうの(映画)まで見るわけですから。さっきも出る前に、棚橋さんとDDTとNOAHの記者会見を見てきましたから」

清野「見逃し視聴もできますからね。もう常に追っかけてくるというか」

棚橋「ずっと2000年代、プロレスになんとかお客さんに入ってほしくて、プロモーションやりながらテレビで著名な方が『プロレス好きだよ』って言ってくれたらすごく助かるのになと思ってて、(有田の発言で)実現したというか(笑)。ホントにうれしいんですよ」

有田「『アメトーーク!』とかね、特集してくれましたからね」

清野「ありがたいですよね。そうなんです。いやあ、でもホントにアイアンクローという技がある恵まれた一家なんだけど、なんかこう次々に襲ってくる不幸があって、当時、ファンの側から見ていてもなんでだろう?みたいなところがありましたよね」

有田「ですよね。なんか子どもながらに“呪われた一家”なんて言って、プロレスの外国人レスラーなんか特に、人間発電所とかいろんな異名がつくから、それと同じような“呪われた一家エリック・ファミリー”みたいに思ってたんですけど、ホントにやっぱり悲劇が続くので、なんとなく子どもながらに流してましたけど、やっぱりこの映画を見たことによって、その深みというか重みがズシンときますよね。こういうことだったんだというふうに」

清野「我々が当時知らなかった部分とか、それから当時試合の映像ってなかなか見られなかったじゃないですか。それがこの映画によって補完されるというか、試合映像はこんな感じだったのかなというのを再現してくれてますからね」

有田「ありがたいですね。テレビのマイクアピールの撮影シーンが出てきますからね。あそこリアルですよね。映像の粗さとかね」

清野「背後のロゴマークの感じとかね。試合シーンも結構ふんだんに盛り込まれていまして、これがあのチャボ・ゲレロJrが監修をしたということなんですね。これはぜひプロの目からご意見を聞きたいんですけど」

棚橋「受けがしっかり取れてて、ホントに新日本プロレスで引き抜きたいくらいの(笑)」

清野「ザック・エフロンを(笑)」

有田「いくら金かかるんですか(笑)」

清野「ちょっとすごいことになりそうですね、そうしたらまた。でもやっぱりプロレス映画となると棚橋さんも本業だから、試合のところ、試合シーンはちょっと厳しく見るんじゃないですか」

有田「見るところが違うかもしれないですね」

清野「どんなところを見てるのか、気になります」

棚橋「たとえばプロレスで組むときロックアップっていうんですけど、そういったところの足の運びとか、腕の取り方。右腕を取るのか、左腕を取るのかとか、そういうところですか」

有田「あの映画でそういうところを見てたんですか」

棚橋「ヘッドロックのときの足の開きとか」

有田「そこ全然見てなかったです(笑)」

棚橋「ヘッドロックやってと言うと、バックドロップで投げられやすいので、ボクらはヘッドロックを取るんですけど、相手と向かい合うんですね。そうするとバック取られないので、うまく頬骨を絞れると。全然不自然な感じが(映画では)しなかったので、チャボはやりますよね」

有田「細かいところまで指導があったんですね、きっとね」

棚橋「と思いますね」

清野「足の運びを見るというのがさすがプロの仕事ですよね」

棚橋「足の運びをみます」

有田「みなさんべつに(足の運びを)見なくても大丈夫ですよ(笑)」

清野「そこはプロの方だけでございますのでね。あとは、WCCWというダラス地区というのはお父さんのフリッツ・フォン・エリックがプロモーターもやっていたんですよね。棚橋さんはいま社長も兼ねていらっしゃるわけじゃないですか。ある意味、フリッツ・フォン・エリックがと近い立場になったわけですよね。どうですか、興行主としてプロモーターとして、なにか今後、新日本プロレスで考えていることというのは?」

棚橋「やはりいま、すごい人気選手が多いんですけども、やっぱりその横並びの感があるんですよね。ちょっと内藤(哲也)が抜けてますけど、内藤、SANADAあたりは抜けてますけど、海野翔太、辻陽太、成田蓮、上村優也、このへんから誰かポーンと抜けてほしいなと、希望としては」

清野「それは内藤さんより上にいってほしい?」

棚橋「そうですね、ハイ。内藤より上にいったところにボクがバッといきますんで(笑)」

有田「すぐおいしいところ取りにいきますよね(笑)」

清野「プロモーターとしてどうですかって聞いてるんです(笑)」

棚橋「レスラーの目が出すぎちゃって(笑)」

清野「社長に去年の12月になられてから、けっこう出社されてますよね」

棚橋「ボクは試合がない日は、出社してます。そうなんですよ」

有田「どんなことがあるんですか、することって」

棚橋「基本的には各部署との会議、あとは親会社ブシロードとの役員会議とか、なにか発注とか案件があるときに承認印がいるんで、ハンコを押します。見ずにもします(笑)」

清野「見てください、ちゃんと!(笑)。新日本プロレスの事務所いくと、けっこう棚橋さんいらっしゃるんですよ。IDカードを首からかけて」

棚橋「ハイ」

清野「誰がどう見ても棚橋弘至だとわかるのに(笑)」

棚橋「IDカードがないと自分で入れないので。ピッとやる最先端のヤツで」

清野「セキュリティーで。でも、社長が締め出されるってちょっとイヤですね(笑)。でもホントにいろいろとお仕事の幅も広がって、新日本プロレスまた恒例のドーム大会とかも、きっとまたありますから」

棚橋「そうですね。やはりボクが社長になったときに思ったのは、すごくプロレスを楽しんでいただく状況ができたなかでのコロナ禍だったので、もう一回上げたいなという野心がいまありますね。もう一回みなさんにプロレス楽しんでもらう状況を作る。それをレスラーでやるのか、社長でやるのかというところですけど、どっちもやります、ハイ」

清野「ひじょうに頼もしい言葉が聞けました。有田さん、せっかくの機会ですから代表として新日本プロレスの社長に要望、何かありましたら」

有田「言うまでもないですけど、とんでもない痛手があったわけじゃないですか。棚橋さんが社長になった途端に、エースであるオカダカズチカ選手がいなくなったりね」

棚橋「エースはボクですけど(笑)」

有田「レインメーカーがいなくなった、ウイル・オスプレイがいなくなった。いわゆる、もうとんでもない看板がいなくなった途端の社長なわけで、どうしていきます?」

棚橋「やはりここ何カ月かの数字は下がるかもしれないんですけども、新日本プロレスの歴史として、上が抜けたら(闘魂)三銃士が出てきて、抜けたら第三世代。棚橋、中邑真輔が来て、内藤、オカダがきてって、歴史がちゃんと証明してますんで、オカダ、オズプレイのポジションがいま空いてる状態なんですよ。ここに誰かポーンと入ってくるのかというのを楽しみにして見ててもらったらいいかなと思います」

有田「棚橋さんが社長になって、『新日本プロレスをちょっと変えていこうか』と言って頑張ってらっしゃると思うんですが、やっぱりいまは引き継ぎもありますからね。『全部オレの好きなようにするよ』というわけにはいかないと思いますが、いつごろから“棚橋新日本プロレス”が見れるんですかね?」

棚橋「いま社長を全力勉強中で」

有田「社長ってなってから勉強するんですか(笑)」

棚橋「社長って何やるんだろう思って最初いったんですよ(笑)。やっぱりいま自分なりの社長像を見つけようと思って、外部の渉外とか自分からいこうかなと。日本一動く、プロモーションする社長になろうと思って、その方がやっぱりいろいろと契約が成立する可能性も増えますんで」

有田「じゃあやっぱG1(クライマックス)の夏あたりから本領発揮ですかね?」

棚橋「そうですね」

有田「まだですか? 秋ですか?」

棚橋「肉体が整えば(笑)」

有田「棚橋カラーの新日本プロレス変わったなみたいな、見たいですよねえ」

棚橋「それが何か、まずボクの中で見つけて、しっかりみなさんに見てもらいたいと思います」

清野「それは一回持ち帰っていただいて」

棚橋「宿題にします(笑)」

清野「いろいろとお話伺ってまいりましたけれども、そろそろ(『アイアンクロー』の)上映時間が近づいてまいりました。新日本プロレスをフリッツ・フォン・エリックみたいにどんどん王国にしていただきたいとの話になったんですけども、もう一回映画の方に話を戻しますと、これからご覧になるみなさまに向けて、こういう気持ちで見てもらいたい、こういう覚悟で見てもらいたいというのを一言ずついただいて締めとさせていただきたいと思います」

棚橋「エリック一家が悲劇の一家だと、この映画では謳われてますけど、みなさんの目で本当にそれが悲劇かどうか判断してほしいなと思います。最後まで楽しんでください」

有田「お笑い芸人のボクが言っちゃいけないかもしれませんけど、ホントに笑ってキャッキャキャッキャいってる楽しい映画かどうかはわかりません。みなさんが知ってる通りの(実話の)ストーリーだし、ホントにいろんなことを考えて、プロレスファンなら絶対に見てほしいと思いますし、そうでない方もいらっしゃるかもしれませんが、こんなことが実際に現実にあるんだなんて話でもいいと思いますし、なによりも、ボクは話を全部なんとなくわかったうえで見てもたくさんの発見があるし、あれ、ここってこうだったよなとか、これって記憶と違うなとか、細かい楽しみ方もできると思いますので、最後の最後、クレジットが全部終わるまで見逃さないようにしていただきたいと思います」