今週のもう一本!「奈落のマイホーム」(21年) | プロレスライター新井宏の「映画とプロレスPARTⅡ」

プロレスライター新井宏の「映画とプロレスPARTⅡ」

週刊プロレスモバイル連載「週モバロードショー~映画とプロレス~」延長戦!

『EXIT』(18年)に共通するコメディ仕立ての韓国産ディザスタームービー。『ザ・タワー 超高層ビル大火災』(12年)にて『タワーリング・インフェルノ』(74年)オマージュを堂々やってのけたキム・ジフン監督が、高層ビルから一転、こんどは地下500メートル(大げさすぎないか?)に落下したマンションからの脱出劇を展開させる。ソウル市内に念願のマンションを購入した一家が引っ越して間もなく、地盤沈下に見舞われてしまう。取り残された人たちはみな、主人公家族のような一般市民。最初は悪役かと思われた人物も、他者と変わらぬ人間だ。そんな彼らが協力し合い、決死のサバイバルに打って出る。救助隊も駆けつけるが地下には入っていけず、結局のところほとんど助けにはなっていない。そんな最悪の状況下で、彼らは奈落の底から地上に戻ってくることができるのか。クライマックスの荒唐無稽、ご都合主義すぎる展開には口あんぐりだが、ここで前半のコメディ仕立てが生きてくる。前作の『タワーリング・インフェルノ』オマージュから今作ではまさかの『ポセイドン・アドベンチャー』(72年)へ。70年代パニック映画へのリスペクトを表しつつ斬新なディザスタームービーへと昇華させたキム・ジフン。韓国の社会情勢も盛り込まれているから、韓国産ディザスタームービーはすでにひとつのジャンルではないか。韓国はディザスタームービーもやっぱりすごい。あらためてそう思わせてくれた『奈落のマイホーム』である。

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