「家族のあり方を考えさせられる」サスケがミャンマー格闘技映画「迷子になった拳」を語る | プロレスライター新井宏の「映画とプロレスPARTⅡ」

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みちのくプロレスのザ・グレート・サスケが4月19日(月)、東京・吉祥寺アップリンクにておこなわれた映画『迷子になった拳』(20年)の上映後トークショーに盛岡からリモート出演。今田哲史監督、ミャンマーラウェイ18年世界王者・渡慶次幸平とともに作品について語った。

 『迷子になった拳』は、ミャンマーの格闘技ラウェイに挑戦した2人の日本人選手や大会関係者の姿を追ったドキュメンタリー。サスケがこの作品についてコメントを寄稿したことで、今回の上映後トークショーが実現したという。今回は、“サスケが語る『迷子になった拳』編”だ。

「この作品では2人の(日本人)選手にスポットを当ててまして、まずひとりが金子大輝選手。もともとは体操競技の出身で、のちにK-1でも活躍された選手なんですね。体操から格闘技に転向してラウェイを現地で修行されたと。最初はなかなか勝ち星に恵まれなかったりもしたんですけども、最後の方はけっこういいところまでいって、K-1に転向したんですね。金子選手は独身なので、ご家族というのはお母様が中心なんですけども、親の気持ちとすれば、格闘技にはやっぱり反対なんですよ。ましてや世界一危険な格闘技と言われるラウェイですからね、ますます反対したと。たとえば、金子選手が夜中に病院に運ばれて、とりあえず応急処置が終わったんですけども、病院の正面玄関でお母様から『これ以上やるのはよしなさい』とおしかりを受けるんです。そこがものすごく印象に残るシーンでした。もうひとり焦点を当てられている選手が、渡慶次幸平選手。もともとパンクラスの選手で、そこからラウェイにチャレンジした。ものすごく短い時間でラウェイを完全に自分のものに会得されて、現地のチャンピオンになり、なおかつそれだけにとどまらずミャンマーの社会貢献活動、恵まれない子どもたちのために学校を建設したんです。これはもう、私なんかから見たら悟りの境地に達してるんじゃないかというような感じなんですよ。渡慶次選手はご結婚されてお子さんもいらっしゃるので、支えるご家族というのは奥様とお子さんたちなんですね。奥様とお子さんたちは毎回会場へ駆けつけて、一生懸命応援しているんです。先ほど話した金子選手のご家族、つまりお母様と、渡慶次選手のご家族、奥様と子どもたちという、2人の家庭がすごく正反対の立場ですよね。かたや猛反対、かたや熱烈に応援という。ものすごく正反対の方向を向いている家族でありながら、実はどちらも選手を心配する、あるいは選手を思う愛情の深さというものはどちらも変わらない深いものがあると。これは危険な格闘技ラウェイというものを描いただけではなくて、家族というものを考えさせられる作品だと思いました。両極端な立場にある家族だけれども、思いは一緒。しかもその2つの家族のあり方、つまり親子という縦の関係、もう一方は夫婦、子どもという横の関係。縦軸横軸という家族のあり方についてすごく深く考えさせられる作品だったなと思いましたね。金子さんの場合はもともと体操競技をやってたということで、私も中学時代は体操をやってたので親近感を憶えたりとかしました。渡慶次さんの場合はラウェイの頂点に上り詰めるだけじゃなくて、その後の社会活動とか、それが地域活性化のために我々のやってきているみちのくプロレスという部分に重なりましたね。そういった意味でも、2人の選手には、ものすごく共感をおぼえましたよね」

 日本ではあまり知られることのなかった格闘技に魅せられて、ラウェイの世界に身を投じた2人の格闘家。それを見守る家族の姿も含め、サスケはこの作品を「人生の教科書!」と寄稿した。プロレスファンも必見のドキュメンタリー『迷子になった拳』は、全国で公開中だ。

(C) 映画「迷子になった拳」製作委員会