本・映画感想日記

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本(映画)の感想をジャンル問わずおすすめ度・難易度付きで書いていきます。


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                『変身』
            
           『変身』初版


今日はカフカ『変身』の感想を書きたいと思います。


              ~感想~
この小説全体を通じて感じたことは、なぜグレゴールが突然虫になったのかということについての理由が全く説明されていないことから来るもどかしさと、巨大な虫が部屋中をうごきまわるという光景に対する気持ち悪さであった。


この小説の読み始め、1ページの1行目の時点ですでに主人公は巨大な虫になっているわけである。なんの理由もなしに、あたかもこれは日常的によくある不幸なのです、とでも言わんばかりに主人公は巨大な虫になっているのである。


その後ストーリーは家族と虫の関係を中心に進められていく。

グレゴールが虫になった後しばらくの間は、家族も虫が近いうちに人間に戻ってくれるという希望を持ち、グレゴールの妹が主体となって巨大な虫の世話を続けていた。
しかし、日が経つにつれその希望は薄れ、グレゴールの部屋は汚物やら埃やらさらにはいらない家具やらの物置になっていった。

そして最終的には巨大な虫、すなわちグレゴールは部屋の中で死んでしまうのである。



この作品の取り分け印象に残った箇所は、グレゴールが死んだその日に家族は各々の仕事を休んで
電車で郊外の町まで行き、家族団欒を過ごすという部分である。
家族皆、口に出してはいないが内心ではグレゴールが死んで喜んでいるわけである。元々はグレゴールらしかった巨大な虫、しかしもうとてもグレゴールとは思えない巨大な虫、というのはいわば捨てるに捨てきれない思い入れのある家具や物のようなものだったわけである。家族の側からすれば自分の力ではどうすることもできない重荷が重荷の方からなくなってくれたのだから喜ぶのも当然の事であると思う。
しかし、グレゴールの側からすればどうであろうか。毎日家族のために働き家族の大黒柱ともなっていた自分がいきなり朝起きたら巨大な虫に変身しており、なんの解決もないまま死ぬのである。しかも死んでも悲しんでもらえず逆に喜ばれる始末である。なんともやりきれないであろう。


この作品のやりきれないようなモヤっとした印象はグレゴールの無力感からきている部分が大きいと思う。
普通の小説であれば主人公が絶望的な状況に陥ってもそこから立ち直る術を必死で考えるわけだが、この作品では主人公はせいぜい自分の体を動かすことに努力するだけで、人間にどうやったら戻れるのか、などということは一切考えていない。家族や環境の変化を外からただ見ているだけなのである。そこには一切の干渉も許されない。この無力感こそがこの作品を象徴しているのだと思う。





面白い本ではあると思りますが、ハッピーエンド好き、特に虫嫌いの人にはあまりおすすめしない作品です。

カフカは初めて呼んだのですが意外に面白かったので、『判決』『城』なども読みたいと思います。



最後にこの本のおすすめ度と難易度を☆5つで表したいと思います。

おすすめ度:★★★☆☆
難易度 :★☆☆☆☆