結婚式の映像カメラマンとして私が注意してきたことは、新郎新婦を撮影する為の「ポジショニング」です。
というのは、挙式や披露宴会場では、ゲストの方も新郎新婦を写真やビデオで撮影する為に我先にと撮影出来るポジションに出てきて、新郎新婦にカメラを向けます。
私達プロのカメラマンは新郎新婦の画をしっかりとおさえつつ、なるべくゲストの邪魔にならないようなポジショニングや、腰をかがめて後ろにいるゲストの邪魔にならないような撮影の工夫をしています。

結婚式における映像カメラマンやスナップカメラマンは、新郎新婦がお客様であると同時に、結婚式場もお客様であるのです。
というのも、ほとんどの結婚式場は、ビデオ・写真は自社では行わず外注業者に委託しています。
なので外注業者である映像・スナップ会社のカメラマンは、結婚式場の場所をお借りして結婚式場のお客様である新郎新婦様やゲストの方々の映像、写真を撮影させて頂いているのです。
ですので当然、式場のお客様であるゲストの邪魔にならない動きがカメラマンには求められます。
私もゲストの邪魔にならないように意識しながら最適なポジションを見つけて撮影してきました。

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しかし、ある日、式場の男性スタッフからちょっと耳を疑いたくなるような発言がありました。
それは、挙式の撮影中の事でした。
私はバージンロードの一番後ろ(ドア側)でカメラを構えていました。
祭壇に立つ新郎新婦のベールアップが始まるところでした。
すると、バージンロード側のイスに座っていたゲストがバージンロードに身を乗り出したカメラを構え出しました。
そしてそのゲストが後ろを振り返り、私がバージンロードの最後尾でカメラを構えていることに気付くと、邪魔になっていると思ったのか、すぐ体を引っこめてしまいました。
その様子を見ていた式場の男性スタッフは、挙式の新婦ベールダウンという大事なシーンの直前に私の肩を叩いてきましたが、
撮り逃しの出来ない大事な場面なので私は無視をしました。
すると、挙式が終わってからそのスタッフは、私にこう言いました。
「ゲストがカメラ構えているのに、あなたはどかなかった。次から気を付けて下さい」
「ゲストにとっては一生に一度のシャッターチャンスなんですよ!」

 

想定外のレベルの低い指摘に私は唖然としてしまいました。
ゲストの前に立ちはだかって、邪魔になっているのであれば私が悪いです。
しかし、私はバージンロードの一番後ろから撮影していたのです。
ゲストの目は、祭壇の上にいる新郎新婦に向けられているのですから、当然ゲストの視界には最後尾にいた私は入っていません。
(ちなみに、「バージンロード」は、花嫁が歩く神聖な道なので、ゲストの方はバージンロードは通常立ち入りできません。といっても、本物のキリスト教会ではそんなルールありません…。これは日本の結婚式場が後から加えた「後付け設定」なのです)
なので、バージンロードの一番後ろのポジションがゲストの妨げになるとクレームをつけられたら、どこのポジションでも撮影は出来ません。
バージンロードに身を乗り出して携帯やカメラで写真を撮るゲストはよくいらっしゃいます。
そういった時は、我々プロカメラマンは新郎新婦の画が撮れるような位置にずれるだけです。

挙式後、結婚式場の男性スタッフが上記のような注意をしてきたので、私は下記のように返事をしました。
①撮影中に撮影を中断させるような行動はやめてほしい
②バージンロードの一番後ろのポジションが、ゲストの邪魔になるのであれば撮影出来るポジションはない
③高いお金を支払って新郎新婦に動画を頼んでもらっているのだから、撮り逃しのないようにやっているがそれでもゲストのほうが優先なのか

しかし、彼は「ゲストにとって一生に一度のシャッターチャンスなのにそれを潰した」と息巻くだけです。
20万円ほどすると高額な映像商品の撮影よりも、ゲストのシャッターチャンスのほうが優先だというのでしょうか?
おそらく彼はそこまで考えていないと思います。
映像商品がどうなろうが、撮り逃しがあってクレームになったら映像業者に責任を押しつけるだけだから、彼が知った事ではないのです。

結婚式の進行の妨げになるような行為、新郎新婦・ゲストの邪魔になるような行為に対しての注意なら私も納得出来ます。
しかし、彼の言動は、目の前の出来事しか捉えられていないのが問題なのです。
一番直接のお客様である新郎新婦の事が考えられていないのです。
何の為に高いお金を払って映像商品を注文したのか?
結婚式は、新郎新婦の晴れやかな姿を披露する場で、写真撮影のためではありません。
もちろんゲストは写真を撮るなということではないです。撮影出来るところは大いに撮影してもらって良いと思います。
私が言いたいのは、結婚式は新郎新婦様の幸せなお姿を見て頂く事が主なのであって、写真撮影会ではないという事です。

写真撮影が一番の優先順位と考えているなら、そのスタッフは結婚式の意味・本質を理解していないです。
ゲストに自分達の結婚式を見て頂くために、新郎新婦様はプロのカメラマンに高い金額を支払っているのです。
その男性スタッフは、今回の件に限らず、これまでも目の前のゲストの様子を見て、その場その場の思いつきで業者やスタッフに注意を出す人物でした。
それも仲の良いカメラマンには言わず、あまりその結婚式場に入ったことがないカメラマンや仲の良くないカメラマンには注意するけど、同じ行動をしても仲の良いカメラマンには何も言わないということが日常茶飯事でした。
つまり思想に一貫性がないのです。その場の思いつき、思い込みの発言が多いのです。

その男性スタッフは「接客業とはそういうものです」としきりに言っていましたが、彼の言う接客は自分がクレームにならないように、自分に責任が及ばないように物事を運ぶ自分を守る為の行為であり、決して新郎新婦様やゲストの為ではありません。
しかし、彼自身は「新郎新婦の為、ゲストの為に素晴らしいサービスを提供している」という錯覚をしており、「自分を守る為の言動」という自覚はないのです。

彼に限らず、結婚式場スタッフは新郎新婦に映像や写真は勧めますが、注文が取とれたらあとは業者丸投げです。
丸投げだけなら良いのですが、今回のように明らかな妨害行為までしてくるスタッフもいます。
わざわざ動画撮影の録画中にカメラの前を何度も通り過ぎたり、数え上げたらキリがありません。
前回のブログでも書きましたが、結婚式場にも売り上げのマージンが入ります。
結婚式場に利益はしっかり入るのですが、自分達が映像・写真の商品を販売しているという自覚も責任も持たないスタッフが非常に多いです。
ただ、自分達の仕事が満足に出来れば他は知ったことではないというスタンスのスタッフが多いのが現実です。

結婚式場、映像・写真業者などの提携業者が協力し合って、価格に見合った商品を提供できるようになってくれたら日本のウェディングはもっと良くなると思います。

良くなって欲しい!!