1960年代頃から活躍したキャスティング・ディレクター マリオン・ドハティを中心に、キャスティングが映画・ドラマ界にどのような影響を与えてきたかを追うドキュメンタリー。

 

「従来のスター役者をタイプ分けするだけのキャスティング」から「役者の個性や魅力に合わせたキャスティング」への方向転換が、当時の映画・ドラマ界にどれだけ影響を与えたかは、劇中に出てくる俳優やタイトルの数々を見るだけでも十分に感じられる。また有名俳優たちの初々しいデビュー時の写真や映像もたくさんあり、それを見るだけでも面白い。個人的に「脱出」と「リーサル・ウエポン」のエピソードが好き。

こうした明るい話の一方、キャスティング担当としてスタッフロールに名前が載るまでの苦労や、キャスティング「ディレクター」という名称に対し全米監督協会がクレームをつける等、キャスティングの仕事やキャスティング・ディレクターの存在が軽んじられている現状も取り上げている。

 

なおキャスティング賞については、英国アカデミー賞では2019年に新設されたが、アカデミー賞・ゴールデングローブ賞共に2022年時点でもまだ存在しない。更に2022年のアカデミー賞授賞式は、編集賞や作曲賞など一部部門の発表は事前収録したものを生放送中に流す形式になった現状を見ると、キャスティング・ディレクター含めた裏方スタッフへの敬意が薄まっているように感じられ、「何だかなぁ…」という気持ちに。