仕事や職業生活に強い不安や悩み、ストレスを抱える人は増加傾向にあり、

心の不調による休職や離職もまた増加しています。
働く人たちがその持てる能力を発揮し、仕事や職場で活躍するためには、

心の健康管理への取り組みが一層重要になってきました。
今、メンタルヘルスマネジメントのストレス解消法の一つとして、「涙活」が注目されています。

※涙活とは、意識的に涙を流す(2~3分間で十分だとされています)ことによってストレスを解消する活動。

そんな涙活を企業や自治体の職員に向けて奨励している人がいます。
なみだ先生こと、感涙療法士の吉田英史先生。

今回は、常総市教育委員会が主催する会(若手教員アカデミー)で、学校の先生に向けて実施された涙活講座についてまとめてみました。


<目的>
学校行事の多い多忙な2学期に臨み,若手教員は責任感や使命感をもって日々精一杯取り組む一方で,おざなりになりがちな身体面の健康保持やメンタルヘルス対策についての意識
の高揚を図る。専門家の講話から,ストレスの解消方法や自分の感情との向き合い方についての新たな視点をもつ機会とする。


まずは、吉田先生からの涙活とは何かのお話。
真剣に耳を傾ける若手教員たち。


続いて、涙診断というアイスブレイクのワークショップへ。
最近泣いた経験を皆さんに聞き、ホワイトボードにそれを書き加えていきます。

その涙がどういった質の涙かを、あとで述べる「三種類の涙」に当てはめて解説していくというもの。
しばらく泣いていない人の中には10年、泣いていない人も。その人が泣いた出来事は、10年前の娘の結婚式…。


次に映像鑑賞へ。
2,3分の短い泣ける感動映像を複数、観てもらいます。


こぼれる涙をハンカチで拭う人、手で押さえる人、頬に流れるままに任せる人とさまざまに。



鑑賞後は、泣ける話をつくるワークショップ、通称、涙作文。
内容は、実話でも創作でもよく、自由に書いてもらいます。

 

書いている最中にも、涙が。


書き終えた何人かに作文を読んでもらいます。

周りで聞いている人たちも涙を。


続いて、泣き言セラピーというワークショップへ。
涙の形をした水色の紙、通称「涙レター」に、
匿名で泣き言(ストレス等)を書き出してもらいます。
そして、涙レターを「涙千箱」という箱に。


吉田先生が、その泣き言を読み上げていきます。


先生ならではの泣き言が続きます。
一部紹介。
・毎日9時帰りだよなんで自分の仕事が終わってるのに待たなきゃならん
・親って本当、自分の子のことばっか。謝ることしらんのか!!
・GWとかないわ
・仕事多すぎ。そのくせ勤務時間外に会議入れるなとか無理でしょ。 だったら出張か行事か研修か会議かどれか削って欲しい~
・新採一年目で担任、部活、引き継ぎ無しのよくわからない学校設定科目の授業に校務分掌疲れる。休みない。休み欲しいけど休みあっても仕事で潰れるんだろうな。 容量はいい方かと思ってたけどさすがにキャパオーバーだー
・色んな先生方からお話受けるのは有り難いけど、その結果事務作業に取り掛かれるのが18時とか…
・仕事は終わっていても学年主任のアドバイスという名の小言を延々と聞かされると毎日22時に学校を出て23時に家につく

泣き言を共有することは、すなわち、苦労を分かち合うことにつながり、
心が楽になるとのこと。

そして、涙についてのレクチャーへ。

「涙を流すと自律神経が、緊張や興奮を促す交感神経から脳がリラックスした副交感神経へスイッチング。」
「涙は一粒流しただけで、一週間、ストレス解消効果が持続。」
「涙にはコルチゾールというストレスホルモン物質が含まれ、それが体外にでるからストレス解消に。」

「たくさん涙を流すほど、ストレスが解消し、心の混乱や怒り、 敵意も改善する事が研究で分かっています。ただし、ドライアイを防ぐ基礎分泌の涙やタマネギによる角膜保護の涙は いくら流しても意味がありません。ストレス解消に効果があるのは、悲しいときや感動したときに流す“情動の涙”。 」
等々、涙についての話が次々に。

ここで、最初に行った涙診断というアイスブレークで出された皆さんの泣きエピソードが使われます。

「ドラマや映画で泣くのは非常によいですね~。これは情動の涙です。足をかどにぶつけて流した涙は、反射の涙で、ストレス解消には全くなりません。めいっこの運動会や卒業式で泣くのも、情動の涙になります。非常に良い涙です~。」
みなさんの泣き体験を解説したあとは、皆さん自身の涙の話へ。

 

お題は二つ。
①学校生活の「泣きたい」こと(今一番苦労していること)
②教師としての「泣ける」こと(感動エピソード)


各グループに入り、皆さんの話を聞く吉田先生。


最後に吉田先生から学校で涙活ワークショップを生徒に実践してもらう意味についてのお話。


学校でやる以上、教育的効果が求められる。
それは大きく三つあるという。
一つ目。
涙作文で、表現力、発想力、伝達力、傾聴力が鍛えれる。泣ける話を書くというのは中々難しい。が、映像鑑賞で泣いたあとだから、本音を出しやすくなり、書きやすくなる。(涙を流すと人は素直になり、思いを言いやすくなるという心理的状況が生まれる。)
発表時には、人に伝える力が求められ、また聞いている生徒には聞く力が求められる。
二つ目。
流す映像が、人間の強さや弱さ、家族の温かさをテーマにしているものが多いので、情操教育になる。最後の涙友タイムの中で、「泣くとは何か」について考えることが、人の感情とは何かについて考えることにもなり、生徒の感性を鍛えられる。
三つ目。
社会のメンタルヘルスケアの流れから、今、ますます、これから大人になる中高生に、健康の意味を考える健康教育がフォーカスされている。中高生は、健康に無頓着になりがちだが、涙活という入りやすい入り口から、自らの健康について考えるきっかけになる。

岡野常総市教育委員会教育長の挨拶と先生方のご感想を。