ハンターキラー潜航せよ

あらすじ／解説

ジオストーム」「エンド・オブ・ホワイトハウス」のジェラルド・バトラー主演で描いた潜水艦アクション。ロシア近海で1隻の米海軍原子力潜水艦が消息を絶ち、捜索に向かったジョー・グラス艦長率いる攻撃型原潜「ハンターキラー」は、現場付近に沈んでいたロシア原潜の生存者を捕虜にする。同じ頃、ロシア国内で世界を揺るがす陰謀が企てられていることが判明。ハンターキラーに陰謀阻止のための過酷なミッションが下される。その任務を達成するには、絶対不可侵のロシア海域へ潜航せねばならず……。原作は、小説家ドン・キースと米海軍潜水艦の元艦長ジョージ・ウォレスによるベストセラー小説。共演に「ウィンストン・チャーチル　ヒトラーから世界を救った男」でアカデミー賞を受賞したゲイリー・オールドマン。製作は「ワイルド・スピード」シリーズのニール・H・モリッツ。監督は「裏切りの獣たち」のドノバン・マーシュ。

★3.8／5点

久しぶりの潜水艦映画はワイスピ風！？

監督はドナヴァン・マーシュ。本作がデビュー作という事で今後に期待したい。

潜水艦映画にはハズレなし。という事だが、今作は果たしてどうなの？って感じですね。

潜水艦映画と謳っていながら、特殊部隊の要人救出ストーリーがあったり、司令部では緊迫した意見のぶつかり合いがあったりする中に、潜水艦のストーリーが落とし込まれている為に潜水艦映画の持ち味である逃げ場のない閉鎖空間から生まれる緊張感がぶつ切りになっていて、潜水艦映画ならではの没入感は弱い。

しかし予告でゴリ押しだった＂ワイスピの製作陣が＂というキャッチコピーを思い出せば、主役がジェラルド・バトラーという事を考えれば、今作に極上の潜水艦映画を求めるのは御門違いも甚だしいと言う事です。

とにかく最初から最後まで大味でツッコミたくなるシーンが盛りだくさんでも＂しゃらくせー！＂と言わんばかりにストーリーはハイテンポで進み続ける。不自然な点があっても強引に最後まで貫ぬき通す作風には、どこかワイスピイズムを感じる。

襲い来る魚雷から逃げる潜水艦。高速潜航で海底ギリギリまで突っ込み、突っ込む寸前で艦の体制を立て直し、沈没した潜水艦にぶつかるギリギリでヘアピンターンを華麗にキメて沈没した潜水艦に魚雷を誤爆させるという、ゲームでも見た事ない潜水艦の挙動に思わず興奮してしまえば、中盤に登場するロシア駆逐艦も海面ギリギリまで傾いたモトGPのMマルケスも驚きなコーナリングで華麗に登場し、これまた見たことねぇ〜！と興奮してしまう。

中でも潜航する潜水艦の船内を演出する為にジェラルドバトラー達が傾く細かな演出シーンは斬新だった。例えるなら逆スムースクリミナルですよ。このシーンを予告で観て今作を観ようと決意した人もいるんじゃなかろうか！ってくらい映えるシーンだった。

そんなブランニューなシーンが目立つ中でも、機雷が配置された狭い海峡を潜航したり、少しの音でも反応する音波センサーの中を潜航する所のスパナを使ったサスペンス展開など、潜水艦映画定番の演出も用意されていて、劇場中が静寂に包まれて息を呑む一体感が堪らなく楽しかった。

そして陸上パートはと言うと『ローンサバイバー』色が強くて、既視感あるシーンばかりの連続で流石に退屈。プロデューサーや偉い人の注文で仕方なく撮ったのかと想像してしまう程に、海上パートとの気合いの落差を感じてしまう。無駄な陸上パートを潜水艦バトルに費やせば絶対楽しくなるはずなのに。

クライマックスではハンターキラーがロシア駆逐艦隊に囲まれて窮地に陥るシーンが名作『眼下の敵』っぽい。ここからどう切り抜けるのかと色々想像を膨らますが、まさか別のロシア駆逐艦が窮地に陥ったハンターキラーを救うという予想外な胸熱展開にはビックリするが、これはこれで面白かった。

あと潜水艦映画で散々語られてきた＂潜水艦に女を乗せると不吉な事が起こる＂というジンクスを今作はさらっと打ち破っている。近年うるさいポリコレ問題に対応したキャスティングだろうけど、格好良さや見所を推しながらも説教臭くなく、スマートに女性搭乗員を描いてるのは見事だし好感を持てる。

有り得ない展開の連続だか、有り得ないからこそ燃えるし、国境を越えた男達の友情にグッとくる。潜水艦映画としては物足りないし、消化不良であるけど、いつものジェラルドバトラー映画としては十分面白かった。

そういえば、劇場は年配の人達で席が埋まってたけどジェラルドバトラーってその層に人気あったりするんだろうか？確かに一昔前のアクション映画に出てました感オーラは出てたけども。

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