引き続き施設側からのレイチェル失踪事件へのアプローチを考えてみます。

当然のこと、レイチェル失踪事件が架空の話である事を施設スタッフは承知しています。なので全員口裏を合わせるように指示されていたとは思いますが、どこにでもある派閥のようなものがここにもあって、協力的な人やそうでない人などが散在していた事でしょう。

とはいえ、茶番の主目的の一つにこれが茶番であると気づかせる向きもあるので、そこまで真に迫る必要もなかったという所に、映画鑑賞者を煙に巻く作用があったと考えられます。

警備隊員の不真面目さ、看護師たちの楽天的な態度。コーリー医院長までもが、重要局面で休暇を取るといったシーアン先生の不審な態度を「問題ない。医者だ」と言わしめたくらいで。

それを聞いて笑う職員たち。そりゃ、当のシーアン先生が相棒のチャックとしてその場に居るのですから、知らぬはテディただ一人。おい、テディ・・・いや、アンドリュー、滑稽だよ、変だろ?そろそろ気づけよ・・・的な事だったわけですね。

ま、そのくらいで正気に戻るとは思ってはいなかったでしょうけどね。別れ際に「やっと話せるな」というテディに「ずーっと話している」と返してみせたのは台本通りなのか思わず出たのか。

 

翌日は一緒にカウンセリングを受けていた女性患者への聞き込み。

相手はミセス・カーンズです。

あらすじを書いている時に、この人の怪しい行動を書きましたが、それらについての考察をします。

まず、この人も協力者でレイチェルについて台本通りの回答をします。

質問でシーアン先生の事を聞かれて、斜め前に居るチャック=シーアンだと判っている為か緊張して変なテンションになりますが「口説かれたか?」という質問に怒ったような態度をとるなど比較的まともそうな人なのですが・・・

途中で水を飲みたいと訴え、チャック(シーアン先生)が席を外すと、テディのメモ帳をつかみ取り、手元の万年筆で「右手」で何やら書いたかと思うと、それをテディに突っ返し、戻ってきたチャックに礼を言いながらコップを受け取り水を飲むのですが、テディの目線で右手には何も持ってない状態でエアー飲水をおこなったあと、コップを置く際の描写は「左手」で空のコップを机に置くという、見ていて「???」と思うようなシーンがあります。

このシーンをどう考えるかという事ですが、これはやはりミセス・カーンズのメモを書く部分がテディの妄想であったという解釈が妥当ではないかと考えます。

ミセス・カーンズはおそらく左利きなはずで、だから本当は水を受け取ったのも左手なら飲んだ時も左手で持って飲み、そして飲み干したコップを左手で机に置いているわけです。ただ、左利きであると言う事を知らないテディには、自分のメモに走り書きをする際は自分でもそうであるように何の疑いもなく「右利き」という設定にしてしまったので、ミセス・カーンズは右手で文字を書いてしまい、また、当然、右利きなので右手で水を飲んだと妄想補完してしまったわけです。しかし、目の前では実際に左手で飲んでいるミセス・カーンズが居た訳で、脳の混乱が起こって、それがエアー飲水という幻を見せたわけです。

ただ、そうなると、この後チャックにメモを見せるシーンで実際に「逃げて」と書かれているので、それとの齟齬はどうするのか?という話になりますが、それについてはこう考えます。

「あれはテディが自分で書いたもの。」

しかし、これには確たる証拠がありません。いつ書いたか?そんな描写あったか?無かったらそれこそ単なる妄想だと言われそうですが・・・

ミセス・カーンズは実際にメモを書いた。と仮定して考えている人も居るみたいです。(検索してみましたw)

その場合、あのエアー飲水はわざとやったという解釈になります。

ミセス・カーンズはテディを気の毒に思っている人で、これが茶番である事を教える為に「逃げて」と書いて、エアー飲水をした。もしくは、この施設がテディにとって危険であると知っているので「逃げて」と書いて、エアー飲水、いや、もう施設側の台本で「逃げて」と書いてエアー飲水・・・んー、説得力あるかなぁ・・・

確たる証拠はありませんが何となくメモ書きが幻だという状況証拠?のようなものをあげると、

チャックは何かメモに書かれた事を知らなかった(それも演技かも知れませんが、テディに問いただす時に「何か言われてなかったか?」と言っており、メモに書かれたという事は念頭に無さそうだった)。

ミセス・カーンズが「右手」に持ったペンはシルエットからして明らかに万年筆。メモの筆跡とは合わない感じ(雨に滲んでいたので筆跡も絶対かと言われるとちょっと・・・)。

テディが使っているペンはボールペン。この時代のボールペンは全て油性である。ならば、滲んでいるのは逆に変だと思われるけど、書いた直後にあの水量(豪雨の中)。むしろ豪雨で濡れたメモに書いたという可能性も?

あと、メモをチャックに見せた時のメモにあった文字の太さと、挟まれていたボールペンの芯から滲み出ているインクが同じに見える。

あと、もっと言ってしまえば、テディがチャックにメモを見せて「ミセス・カーンズが書いた」と言いますが、その「逃げて」(RUN)という文字が滲んでいくのとあっけにとられた感じのチャックの表情で、実は何も書かれていなかったのでは?というのも有りかな・・・などと考えてしまいますが、今のところ私は、テディが自分で書いたというのを落としどころにします。

 

話を戻して、その後、不意にアンドリュー・レディスの事を聞かれて挙動不審になるミセス・カーンズ。おそらく、そこまでは台本に無かったのと、アンドリュー・レディス本人から尋ねられたのでパニクったのだろうと思われます。

 

その後、チャックと二人して墓地の発見と礼拝堂への避難。そして会話があるのですが、ここでテディの頭の中での「現状での捜査状況」が披露されます。

それによると、レイチェルもレディスもどうでもよく、この島で行われている陰謀の暴露が目的であると告げられるのですが、それではチャック=シーアン先生=茶番を仕組んだ施設側はどこまでを把握して、どこまでを茶番として再演し、付き合おうとしていたのでしょうか?

恐らくはレイチェル失踪事件までだったのでしょう。

なので、チャック=シーアン先生の引き戻し?というか、そこまですっ飛んじゃいます?的な説得が始まるわけです。

曰く、そこまで行っちゃうと変だろ。全部偶然?あり得ない。陰謀?それが陰謀なら既に嵌められてるだろ。あんたの言ってる事はどこか変だよ。といった感じか。

 

まあ、これでもテディが正気に戻るとは思ってなかったでしょうが、何となく感じる「自己に対する疑問」みたいなのが芽吹いてくれたらありがたいというくらいでしょうか。

実際にテディの妄想状態ではすでにレイチェルの重要度が曖昧にされつつあることを知ったコーリー医院長たちは、すぐに次の一手へ移行する決断をしたのでしょう。それが「失踪したレイチェルの発見」という事になるのですが、やはり施設側は「レイチェル」というのが重要なファクターであることを理解していて、逆に言えばそれしか手立てを持ってなかったということでもあったのでしょう。

常に監視下にあるテディの元へ副隊長が現れます。

「何故ここに居るのが判った?」

「狭い島です。直ぐに見つかりますよ」と答えたチャック・・・俺が監視してますからw

チャックとのやり取りで少しは不安が増したのか「この島を出るぞ」と呟くテディですが、そうは問屋が卸しません。

戻って「4の方式、67番目は?」の茶番の後、コーリー医院長たちの最大のイベント、見つかったレイチェルとテディのご対面があります。

これはテディ(アンドリュー)の妄想にはないシナリオです。

ここで嘘を真にして妄想に破綻をもたらし、心の動揺から何かしらの反応でもあれば、それが突破口になるのではないか?というような一縷の望みをかけた荒療治でしょう。

 

では、ご対面!

は、次の記事で・・・