それは、年号が昭和から平成へ移った激動の時代


リクルート事件やら議員秘書の自殺やら、
今と同じように政治の暗闇に、人々の目が向いていた頃

ひとりの美しい少女は
「代議士の妻」を目指して(妄想して)おりました。
(おたかさん、真紀子のような女“センセイ”ではなく、
代議士の“妻”ってところが、奥ゆかしいあたしらしいんだけど)


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夢と理想に生きる新聞記者との結婚、
幸せな新婚生活も束の間 
国会議員である義理の父の急逝。
親の地盤を、急遽継ぐことになった夫。
なにも分からぬまま、見知らぬ田舎に連れていかれる
初々しい妻(=あたし)


「ずいぶん、ベッピンな嫁さんやな~」(←あたし、あたしの事ですよーー)
「キレイなだけで、東京のオナゴにゃ何も出来んやろ」
「ちょっと派手とちゃうか」(どこの方言?)
後援会の人々の冷たい視線を浴びるなか(視姦)
突然の内閣辞任、総選挙。
ウグイス嬢のごとく、選挙カーに乗り込み
選挙区めぐりの日々。手をふり、握手の繰り返し。
対抗陣営に中傷ビラを巻かれましょう。
健気で美しいあたしに思いを寄せる
地元青年団団長の鍛えられた腕の中で泣きましょう。
でも負けない!揺るがない!
だって、あたしは「代議士の妻」になるんだもん。


そして選挙投票日前日
地元の選挙民を前に「主人をよろしくお願いしますっ!」
瞳から涙をひと粒。瞳はダイヤモンド。
「この人を、みなさまの力で、国政にぃー、
国の真ん中に連れて行ってくださいっーー!(絶叫)
みなさまの力でっ、男にしてくださいっーーー」
そして土下座っーーーー。涙、涙涙の土下座です。
拍手で割れかえる聴衆。もらい泣きの民衆。
「この戦(イクサ)、勝つかもしれんのう
あの嫁、なかなかの役者かもしれん」
口元ニヤリの後援会会長。


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ってのを、やりたかったんです!あたし!
間違った政治観(いや、正しいかも)
もう受験勉強そっちのけで妄想、妄想、妄想の日々。


その甲斐あって、あたしは法学部入学
(いまだ文学部や家政学部出身と思ってる友人がいるんですが)
しかし、勉学は長続きせず、あたしは六法全書のかわりに
扇子をもって、恋に遊びにバブルにはじけ飛んでいました。


そんな時、“魂の友”Yちゃん(ダ・ヴィンチ・コードの欄参照)
一冊の小説を手渡されたのです。


つづく。