2017年7月、太陽と青空と冷えたオールフリー。
そんな季節の中でおきた小さな恋の物語です。

 

まうくんの誕生
2017年4月上旬。
マウスの赤ちゃんが産まれました。
8匹。その中で1匹、小さい赤ちゃんがいました。

 

まうくん・・・元気に成長しよう!

できることがないマウソックは、せめて祈りを込めて歌を歌うことにしました。

「シューベルト アヴェ・マリア」

 

まうくんの成長
まうくんは、元気に成長していきましたが、それでも、兄弟マウスより、

小さかった・・


マウソックは、歌を歌います。
「シューベルト アヴェ・マリア」。イメージは、サラ=ブライトマン。

 

手のひらに乗ったまうくんは、歌うマウソックを見ています。

おー、聞いてくれていますね。
気分ののったマウソック、まだ歌います。

 

・・音がずれました。
気にしません、イメージは、サラ=ブライトマンなので。
ボリュームを上げていきます。
♪あーべまりぃやー♪あー、ああああ、れどぅみーファー♪♪

 

まうくん、急に何を思ったのか、手のひらの中でくるくる動き出しました。
・・・咬まれました。

 

話しかけたり、くすぐったり、撫でたり、アヴェ・マリアを懲りずに歌い、時には大地讃頌も歌ったり、

「G線上のアリア」(CD)を聞かせたり。

そんなことを繰り返して7週間・・

 

花婿まうくん
まうくん、立派に成長しました。
兄弟たちと比べても全く同じ体格。小さいなんて思いません。

マウソックはまうくんを6匹のマウスちゃん達がいるお部屋へそっと入れました。

みんな仲良くね。


・・・数時間後・・・のぞき魔マウソックが見た光景・・・


まうくんの周りを囲むようにマウスちゃん達がいます。
まうくんのとなりを2匹のマウスちゃん達がぴったりくっついて、その前と後ろにまたマウスちゃん達が2匹ずつ。

 

おー、すごいねー、マウス団子だ!

・・・え?そんなに寒い?

ー温度計25℃。適温ー

 

違うよ、ボク、モテるんだよ。

マウス団子は愛の団子だった。
まうくんが動くと、マウスちゃん達も動く。そして、また団子。
・・・愛だね。

 

 

赤ちゃん誕生

それから1週間後、お部屋の中を見たマウソックは、ふっと、笑顔になりました。

妊娠したのは、6匹中1匹だけ。

なぜ、1匹だけだったのか、今までの同居生活、どんな思いがあったんだろう・・・?

一途?そんなワケないか・・
自分の思いにヘラヘラしながら、でも、聞いてみたい気持ちもありました。

それから1週間ほどマウスちゃん達と同居をしたのち、まうくんを別部屋へと移動させましたが、

妊娠した1匹のマウスちゃんと5匹のマウスちゃん達、みんなでいつもマウス団子を作って、

寄り添っていました。

 

 そして、さらにしばらく経過したころ・・

マウス団子の中心には生まれた赤ちゃん(6匹)そして、ママ達がいました。

頑張って産んだマウスちゃん(1匹)も、見守ったマウスちゃん達(5匹)も、どの女の子も

一生懸命お世話をして、赤ちゃんは、すくすくと育っていきました。

 

 

 鮮やかに、形のないもの

あれから何年もたちました。

ふと手に取った「シューベルトのアヴェ・マリア」(CD)。

 

イントロが流れ、変わることのないサラブライトマンの声。

 

もうこの世にまうくんも6匹のマウスちゃん達も、あのとき生まれてきた

赤ちゃんもいません。

 

鮮やかに覚えているあのマウス団子。

黒毛のマウス達が残してくれた形のないもの。

今も、そして、これからもずっと温かい。