[由来]

身長160cmに満たないひとりの小柄な国会議員が、それまでの人生において低身長が故に味わってきた屈辱やコンプレックスをバネにすると共に、相手の視界にすら入らないその小柄な体躯の利を最大限に活かし、並みいる政敵たちの死角を突いて与党最大派閥の領袖へと上り詰めると、まんまと内閣総理大臣に就任。間髪を入れず自分より身長の低い議員たちを閣僚に据えると、我が国の憲政史上類を見ない低身長の男たちによる「小さい内閣」を組閣するに至った。

 

[足跡]

「山椒は小粒でピリリと辛い」ということわざをこよなく愛する「小さい内閣」総理は、“名は体を表す”の言葉通り、政府による経済活動への介入を可能な限り減らし、市場原理による自由競争をうながすことで経済成長を図る『小さな政府』の確立をその至上命題とした。また、普段からことあるごとに国民に向けて「この国の主役は我々政府関係者などではなく、他でもない国民の皆さんなのです!」とのメッセージを発信することで、民間でできることは民間企業でやらせて政府の負担を軽減し、政府予算の規模を縮小するという『小さな政府』の目指すべき姿を巧みに実現していくのだった。一方、こうした政権運営方針のもと小回りの効いた小気味よい政策を展開した「小さい内閣」は、国内のみならず海外においても「東洋の“小さな巨人”政府」と称えられた。かくして何の憂いもなく長期政権への道を爆進するかと思われた「小さい内閣」だったが、ここにきて機動力に優れた小柄な人の唯一の弱点とも言えるスタミナ不足が響いたのか、閣僚たちの中で疲労による緊急入院患者が続出。さらに折悪しく総理自身も体調を崩して政務の継続にドクターストップがかかったため、最後はその小さな体がさらに小さく豆粒のように縮んだかと思ったら「もうダミだ〜…」とういう断末魔の叫びと共に消失したかのような、まるで往年のスラップスティック系カートゥーンアニメのオチ的な最後を迎えたのであった。