[由来]

何事にも好奇心旺盛で瞳はキラキラ、いつまでも少年の心を忘れない天真爛漫なひとりの人気者与党議員が国民の熱い期待に応えて内閣総理大臣に就任。この新総理、人柄は申し分ないのだが、その言動や振る舞いにいささか幼稚さが目立つのが唯一の欠点とも言えるのだった。しかし、そんな欠点も含めて国民たちに愛された彼は、自らが任命した閣僚たちともども、愛情を込めて「幼稚内閣」と呼ばれ、今までにない親しみやすい政権としてもてはやされることとなった。

 

[足跡]

内閣総理大臣という重責を背負うことになったプレッシャーのせいか、就任後の総理の幼稚ぶりはエスカレートの一途を辿ることとなった。例えば、国会での野党議員との答弁の場でも、野党議員が総理の過去の発言を引き合いに出して非難でもしようものなら、「え〜、そんなこと言ってません〜。そんなこと言うなら証拠見せてください〜。あと、いつ言ったか正確に教えてください〜。何時何分何曜日、地球が何回回った時〜?」などとのたまうのだった。また、別の野党議員に減税政策の実施を強く求められた際には「あ〜あ、今やろうと思ってたのに!野党がやれやれって言うからやる気なくなった!」などと言って、期待された減税政策を棚上げにする始末なのであった。このような総理の振る舞いについて、テレビのワイドショーでは社会学者によってストレスを原因とする一種の幼児退行と分析されたりもしたが、こういった言動を除けば意外に有能な政策を展開したのも、この内閣が高い支持率をキープした要因であった。特に、総理自らが命名、立案した「エッチ、スケッチ、ワンタッチ法案」は、煩雑な各種手続きをデジタル化によってボタンの“ワンタッチ(ワンクリック)”で完了できるほどに単純化したシステムの導入を全公的機関に義務づけるという画期的なものだった。さらに、遊説先として訪れた某地方都市では、目的地への移動中に急に石蹴りを始めたかと思うと、「この石を目的地まで蹴り続けることができたら、我が国のGDP3%アップ!」などと、子供が下校中などによくやる“願掛け”を開始して、これを無事完遂。この“願掛け”の効果があったのか、この年のGDPはまさに3%を超えたため、「幼稚内閣」はいよいよ神がかった人気ぶりを見せるのだった。そんな中、総理と同じような子供心を忘れないタイプのアメリカ大統領が来日。この大統領とすっかり意気投合した総理は、大統領が帰国する際の別れ際、お互いが見えなくなるまで「じゃーね〜!バイバイ!」「goodbye!」の挨拶を交しあうほど深い絆を築いたことから、一種の伝説として後年語り継がれることとなった。