[由来]

少年時代は「コマまわし」の日本チャンピオン、成長してからは「大車輪」を得意とする器械体操の選手という、いずれも“回ること”と宿命的に結びついた人生を送ってきた男が、その人生の後半で国会議員となり、やがては内閣総理大臣へと上り詰めた。就任後、盤石の布陣で各大臣を任命した総理だったが、何かこの内閣ならではの特色が欲しいと思いたち、キャバクラなどのいわゆる「回転サービス」をヒントに14人の閣僚たちが月ごとにスライドして入れ替わる「閣僚回転システム」を考案。早速導入してみたところ、大臣たちが毎月新鮮な気持ちで新しい政務に臨んだのが良かったのか、それぞれが意外なほど功績を残したことと、先述した総理の生い立ちのこともあって「大回転内閣」と呼ばれるようになった。

 

[足跡]

こうして始まった「大回転内閣」の活躍は目覚しく、中でも総理は文字通り“コマネズミ”のようにクルクルと忙しく動き回ったが、まるでどっしりと安定感のある回転を続けるコマのように、その政治信条の軸がブレることは決してなかった。また、これまでの経緯によって「人生で直面するどんな困難も、とりあえず回ればなんとかなる」との想いを強くした総理は、国会の答弁の場で野党議員のえげつない追及を受けて返答に窮した際などには文字通りその場で激しく体を回転させることで時間を稼ぎ、適切な回答を考えて幾度となくピンチを切り抜けてみせるのだった。ちなみにひとつ間違えば総理大臣としての適正を疑われかねない奇行にも見えるこの“大回転”だが、スポーツ選手などが用いるルーティン(一連の決まった行動をすることでモチベーションを高めるメンタルコントロール法)に近いものと国民や議員たちの間で認知されたため意外なほど問題にされることはなかっただけでなく、この大回転が定着した政権末期には総理の回転に対抗して質問者側の野党議員まで鋭く回転する場面が見られたほどであった。そんなある時、この頃には恒例となった質問&回答者の大回転が始まると、この日はその状況にシンクロするようにその場にいた議員全員が立ち上がって回転を開始。気づいてみれば共に手と手を取り合ってまるでミュージカル映画の一場面のように回り続け、その日の議題はそっちのけで国政の場に信頼という名の素晴らしい大輪の花を咲かせて見せるのだった。