[由来]

保守派苦労人の総理と、過去に目立った政治的功績を上げたこともない地味な大臣たちによって組閣されたその内閣は、良くいえば堅実、悪くいえば毒にも薬にもならない凡庸な政治家集団と目されていた。しかし、発足直後に閣僚数人が関与するまさかのスキャンダルが発覚し、あいついで辞任するという緊急事態に発展。これを受け、大幅な内閣改造を余儀なくされた総理だったが、これを契機にこれまでの消極的政治スタイルからは考えられないような悪魔的政治手腕を発揮しはじめたため、国民から「魔改造内閣」の異称で呼ばれるようになった。

 

[足跡]

改造内閣発足後、それまで見せた事もないような鬼気迫る形相を浮かべるようになった総理だったが、新大臣たちの的確なサポートもあって、政権の悪魔的快進撃は続いていた。この様子を見た国民たちはSNS上で「総理は悪魔と契約することで政治的魔力を手に入れたのではないか」などというオカルトめいたウワサ話に花を咲かせる始末…。そんな様子を傍観していたひとりの新聞記者の男が個人的興味から取材を開始すると、内閣改造によって任命された新大臣たちの素性や経歴を、誰ひとり知らないという奇妙な事実に行き当たる。これに疑問を感じた記者はウワサの真相を確かめるべく密かに首相官邸に潜入。そして、夜まで官邸内のトイレに潜んだ記者は行動を開始し、ついに廊下の一角で何やら怪しげにたむろする総理と新閣僚たちの姿を捉えるのだった。次の瞬間、強烈な稲光が窓外に走ると、総理たちの影が後方の壁に映し出された。そこに記者が見たもの、それは邪悪な悪魔のシルエット…。この衝撃の光景を目の当たりにして失神した記者が次に目を覚ましたのは、すでに誰もいなくなった首相官邸の一室であった。果たしてあの光景はすべて夢だったのか。そして、ウワサの真相と総理の正体は…。多くの謎を残したまま、永田町の夜はミステリアスにふけてゆくのだった。