そぴあのブログ

そぴあのブログ

今はカードキャプターさくらにハマり中です。
もちろんケヴィン・レイノルズ選手とニコライ・ホジャイノフ氏が好きです。
レイノルズ選手は引退されましたが、ホジャイノフ氏についての考察や感想も続けます。

Amebaでブログを始めよう!

「さくら」クリアカード編第9話、第11話、第14話、第16話前提です。

もちろん、原作者様や、公式アニメ制作者様とは何の関係もないです。

続きです。

 

『発表会の日』②

 

休日の午後の穏やかな空気が流れるペンギン公園を横切り、小狼はゆっくりと明るい陽射しの中を歩いていた。初夏の陽射しは徐々に強くなってきていた。とはいえ、まだ暑いというほどでもない。ベンチの側に歩み寄ると、ふと立ち止まり、ベンチに座りこんだ。立っていられなくなったのだ。

―――かっこ悪いな。

小狼は空をあおいで一人ごちた。その言い様は、少し前の月峰神社でのケルベロスそっくりであったが、もちろん小狼はそんなことは知らない。強大な魔力を持つさくらの前に、最強の守護獣も、格式ある道士の家系の跡取りも、かたなしなのだった。

体がひどく重い。めまいまでする。あの程度でそれほど魔力を消耗したのだろうか。疲労が蓄積していたかもしれない。昨夜は早くにベッドに入ったのに。一日早寝したくらいでは回復していなかったのか。

気持ちの良い風が髪をなでていく。もう少しこのまま…。

 

「おい! ガキ!」

鋭い青年の声がした。小狼はぼんやりと薄く目をあける。肩に強い圧迫を感じるのは、誰かにつかまれているせいだろう、しかし危険な感じはしない。とにかく起きなければ、と思ったが体が動かず、目もはっきりとあけられない。

「こんなところで、何やってんだ!おい、起きろ!」

叱責するような声がする。遠くから聞こえるようであり、すぐ近くでする声のようでもあり、よくわからない。

「桃矢、待って。このまま小狼君寝かせてあげよう。」

さらに遠くの方で別のもう少しおだやかな青年らしい声もする。あれは―――。

「けど、こんなところにほっとくわけにいかないだろ。」

何とか言わなくては、このまま寝かせてくれればそれでいいのだから。どうにか、口を動かす。

「…すみません…だい…じょうぶです…。とても、眠い…だけ、ですから…。」

「何が大丈夫だ!…ったく、しょうがねえな。ゆきも手伝え。」

手伝う?何の話だろう。

その時、自分の体がふわりと持ち上げられているらしいと気づいた。しかしそんなはずはない。風の魔法などもちろん使っていない。またもうひとつの声がする。

「ぼく、小狼君の家を知ってる知り合いがいるから。どこか聞いてみるよ。きっと近くだから。」

間違いない月城さんだ。ではもう一人は…まさか。

とても暖かいものに寄り掛かっている。この感じは、そうずっと前に、良く似たことがあったと、小狼はぼんやりと考える。

―――偉?ちがう。もっと昔、あれは父上…。

ここで小狼の意識はふっつりと途切れた。

 

「こうして見ると、本当、まだあどけない寝顔だね。…それなのに外国で、一人で暮らしているんだね…。」

小狼に布団をかけてやりながら、雪兎が独り言のようにつぶやいた。

桃矢と雪兎の二人は、小狼の大きなバッグに入っていた鍵で家に入り、生活感のないリビングを抜け、小狼の部屋をさがしあて、どうにかベッドに寝かしつけたのだ。

「まだまだ、ガキのくせに…。何をこんなになるまで無茶してんだか。いやガキだからこそ、てめえの体調管理もできねえのか。」

桃矢は苦虫をかみつぶしたような顔だ。

「きっと…そんな無茶をしちゃうのも、さくらちゃんのことを大事にしようとした結果…。」

雪兎が、言葉をさえぎるようにふいに黙ったと思うと、雪兎の体が輝き、青白い美しい青年が現れた。

「李小狼はどうやら、相当な無理を重ねて日本に、ここ友枝町にいるようだな。主のために。」

「おい、お前…。」

「この者を助けてくれしこと、礼をいう。」

「礼なんていらねえよ。そんなつもりもない。…こいつに何かあれば、さくらが泣く。それだけだ。」

「なるほどわかった。そういうことにしておこう。戻る。」

「お、おい、何、納得して、ちょっと待て!」

桃矢の引き留めもむなしく、あっさりと、ユエは雪兎の姿に戻った。

「なんだよ…まったく…。」

「どうしたの?」雪兎が怪訝な表情で桃矢を見た。

「いや、何でもねえ。」

雪兎は、じっと桃矢を見た。

「ふーん。今、もう一人の僕が何か言ったんだね。」

「うるせえ。」

その時、ようやく小狼が目を覚ました。

「あ、小狼君、大丈夫?」

にこにこと雪兎が覗き込む。驚いた小狼が起き上がろうとした。

「いいから寝てろ。ちょっと台所使わせてもらってるから。かまわねえよな。」

桃矢の不機嫌そうな声に、小狼はさらに驚き、返事もそこそこに、そのまま枕に身を沈める。桃矢は小狼を一瞥しただけで、部屋を出て行った。

「あ、あの、これは、一体、どういう状況、なん…でしょうか?」

我ながら間抜けな質問だと、困惑しながら小狼は、雪兎を見上げて尋ねた。

「あのね、小狼君がペンギン公園のベンチで気持ちよさそうに寝ていてね。でもそのままほっとけなくて、どうせなら、ちゃんとベッドで寝かせてあげようと、勝手にあがらせてもらったんだ。ごめんね。」

「え…、あのまま、寝てしまっていた?…ああ、そう、でした。じゃ、俺、まさか…?」

「桃矢がね、君をおぶってきたんだよ。」

「ええ?!あの?…え?!」

小狼は、驚いた。心底びっくりしていた。それは、桃矢が自分に親切にしてくれたことが意外だったのではなく、先ほど自分が懐かしさを感じた、あの優しいぬくもりが、桃矢のものであったことに気付いたからである。もちろん、この状況の恥ずかしさはいうまでもない。

しばらくすると、ドアが開いて、桃矢が入ってきた。湯気をたてる鍋と、小皿と匙、マグカップなどを並べた盆を両手に持っている。

「あ、ありがとうございます。その、お世話に…なりました。…お二人のおかげで助かりました。」

「ふん。勝手に冷蔵庫の食材使わせてもらったぞ。ほら、食べろ。」

小狼は目をみはって、桃矢と盆を見た。あの、と、何か言いたそうに口をひらいたが、続きが出てこない。

桃矢は盆をいったん机に置くと、小狼に近づき、背中に手をまわし、起き上がらせようとした。

「だいじょうぶです。一人で…。」

「起きれるってか?」

小狼は起きようと手をつき頭を持ち上げようとしたが、その途端、強烈なめまいに襲われ、ベッドに倒れこむ。

「ほらみろ。ったく、無理すんな。」

「すみません…。」

結局、桃矢の助けを借り、小狼は起き上がらせてもらった。

「いただきます。」

小狼はきちんと手を合わせて食べ始める。

その様子を見守りながら、桃矢が小狼に話しかけた。

「お前のその状態、いつかのさくらや、ゆきとよく似ている。お前も『チカラを持つ者』なんだよな。けど、ひどく消耗している。今日も講堂で何かあったようだが、今日だけのせいじゃないよな。そしてさくらには教えていない。」

小狼は桃矢をまっすぐ見つめた。

「あなたも…以前とは少し違うようですが力をお持ちですね。そしてやはり何も仰っていない、さくらには。」

「今はその時ではないからな。お前だってそうだろう?」

小狼は、黙ったまま頷く。

「けどな、お前がそんなんじゃ、さくらは悲しむぞ。前にもう一人の雪にも言ったのと同じことを言わせてもらう。自分の身を守って、さくらも守れ。いいな。」

小狼がはっとしたように桃矢を見た。

「どうした。」

「いえ、あの。先日、従妹にも、同じようなことを言われたので。…あ、その節は従妹がお世話になりました。」

「なるほどな。で? どうだ、できるか。」

小狼は、じっと手元を見て、ゆっくりと顔をあげた。

「もし俺の力でさくらを助けることができるなら、それを最優先にします。だから、絶対にできると言えません。でも、できるように努力します。さくらにはいつも笑っていてほしいから。」

「もう一人の雪と同じことを言いやがる。ま、今はそれでよしとするか。」

桃矢は、小狼を見ながら、苦笑を浮かべた。雪兎は微笑をたたえたまま、ただ黙って二人を見守っている。

「これも飲んでおけ。我が家秘伝の、あったかはちみつミルクだ。」

「ありがとうございます…。…おいしい。」

小狼は目を細めてこくこくと飲んでいる。

桃矢は、飲み終わった小狼からカップを受け取ると、そっと寝かせてやった。今度は小狼もされるがまま素直に従っている。

「ごちそうさまでした。美味しかったです。本当にありがとう…ござい…ます…。」

小狼が、微笑みをたたえたやわらかい目で桃矢を見上げた。そして、すうっと目を閉じると、安心しきったように眠りに落ちていった。

「よかった。顔色だいぶよくなったね。…あれ?桃矢、顔赤い?」

「何でもねえ! ふん、これで俺からの貸し一つだ。ざまあみろ。」

「桃矢ったら。ふふっ。小狼君ってかわいいよね。ほんとにいい子だし。」

「かわいいって、なんだよ、急に。」

「文字通りの意味だよ。今、小狼君のこと、とってもかわいいと思ったでしょ?」

「な!…このガキ相手に、そんなこと思うもんか!」

「はい、はい。じゃ、いい子ってとこは否定しないんだね。」

「ふん!」

 

桃矢と雪兎の二人は、西日が差し始めた部屋のカーテンをしめて、小狼の寝顔をもう一度確かめると、マンションを出た。

「雪、今日も寄っていけよ。夕飯食べるだろ? あと、今日のこと、もちろんさくらに言うつもりはないからな。」

「ありがと、桃矢。本当、桃矢はいいお兄ちゃんだね。」

にっこりと雪兎が答えた。

 

 

 

ふと、小狼は目をさました。あたりはすっかり暗くなっている。はっと時計を見ると、夜の9時をまわっていた。

次の瞬間、昼間の事が一気に思い出された。あの、桃矢が、雪兎とともに自分を助けてくれたこと。そして。

今二人の気配はない。もう帰ったのだろう。

体も頭も随分軽く感じる。起き上がっても大丈夫だと判断し、そろそろとベッドを出て灯りをつけた。ふと見ると、机の上に、メモがある。

 

『粥の残りは冷蔵庫。家の鍵は集合ポストに入れておく。さくらには知らせないでおいてやる。わかってるな、無理すんじゃねえぞ!』

 

―――そういえば、俺、何だってあんなこと話したんだ… それにいつの間に寝たんだ? だいたい、今度どんな顔してさくらの兄上に会えばいいんだ…!?

真っ赤になって、頭をかかえる小狼であった。

(2018/5/13)

 

実は、この一連のお話しで、もっとも書きたかったシーンが、桃矢君に小狼君が助けられるところでした。桃矢君は7歳年上で妹思いで力を持っている、これまた大変よくできたお兄ちゃんですから、妹を横取りする野郎を絶対に許せないけれど、妹を本当に幸せにできるのも、絶対に許せない野郎だということを知っているということで。何が一番大切かちゃんと知っている人ということで。

 

以下妄想です。

・・・・・・・・・一人の男として、認めてやろうじゃないか、まあ、まだまだこどもだけどな・・・・・・・あれ、何だよ、こいつかわいいじゃないか・・・・・・さくらの奴も大人の女性か、いじり甲斐がなくなってきたぜ・・・・・・・・・・よしかわりに、男はいつまでもいじりやすいから、かわいい義弟をいじってやるぜ・・・・・・・・・

みたいな?

で、とにかく、小狼君は桃矢お兄ちゃんにからかわれ、いろいと付き合わされ。もちろんさくらちゃんを独り占めしていることへの嫉妬もプラスで。

で、あとは藤隆さんと考古学の話で盛り上がるんです。

そんな未来になりますように。