最近参加しているセミナーで、視覚障害をお持ちの方と交流を持つようになりました。その方今井さん(仮名)は、網膜色素変性症を若い時に発症され、現在50代なのですが、ほとんど視力を失っています。網膜色素変性症は、国に難病指定されており、発症すると、徐々に視力を失っていきます。現在の医学では治療法が確立されておらず、この病気に罹患したことが分かると、徐々に視力を失っていく恐怖と戦い続けなければなりません。若い頃は大変なストレスだったと、今井さん(仮名)もおっしゃていました。

 網膜色素変性症といえば、今年の箱根駅伝で往路優勝・総合2位となり旋風を巻き起こした創価大学の選手の中にも2名、この病気を患っている方がおられるとのことでした。また、私が会社に勤めていた当時、同僚にもこの病気に罹患している方がいました。この病気は、徐々に進行するため、重症化し視力のほとんどを失うまで気づかないだけで、案外この病気に罹患している方が周りにおられるのかもしれません。
 今井さん(仮名)ですが、近年は、活動の理念として、SDGsで宣言されている「誰一人とり残さない」を掲げ、視覚障害者が過ごしやすい環境整備を進める活動に尽力されています。私が今井さん(仮名)とお話をさせていただくなかで、一番驚いたのは、視覚障害者の9割は点字が読めないということでした。確かにもし自分が視力を失って、点字を勉強しようと思っても、目が見えない中で点字を学習するのは、相当難しいのではないかと思います。視力を失う方の多くは、突然その身に降りかかってくるので、点字が読めない方が大半というのも少し考えればわかりそうなものですが、言われるまでそこまでの想像力は働きませんでした。

 世間も私と似たり寄ったりのようで、今井さん(仮名)曰く、行政や企業が視覚障害者の方に配慮した施策を講じますというと、9割方点字の作成になるとのことでした。今井さん(仮名)は「視覚障害をお持ちの方の9割が点字を読めないのに、点字を作成してもらっても、ほんの一部の方の助けにしかならない。この状況をなんとしても変えたい」として、日々奮闘されています。

 今後SDGsに対する取り組みがより活発になってくるかと思いますが、企業にしても行政にしても個人にしても、自分たちの独りよがりの考え方で「やった感」を出すのではなく、本当に必要とされる施策は何かということを、相手の立場にたち、相手のニーズを丁寧にヒアリングしたうえで、実行することが真の意味でSDGsの理念である、「誰一人とり残さない」につながるのではないかと思います。