私は寿司が大好物である。
ネタはなんでも食べます。
そんな私が母に連れられ、とある寿司屋に入った。
その店は昔母が通っていたお店だという事だった。
ネタも良くシャリもおいしくて、是非食べさせたいという事でこの日食べに来た。
母もその店に入るのはもう20年ぶりぐらいという。
店はまだその場所に昔と変わらぬ様相で存在していた。
コジンマリしているが、木造の年期を感じさせるなかなかの店構えである。
期待が持てる。
何度も言うが寿司は大好きだ。
それにうまい寿司というから、自ずと私の頭の中はこれから訪れる楽園の想像図でいっぱいになる。
木製の枠に磨りガラスを貼った古い扉を開ける。
入った瞬間に私のアンテナは何か得体の知れない何かをキャッチした。
カウンターには二人の寿司職人が居る。
寿司屋というものは扉が空いた瞬間に威勢のいい「いらっしゃい!」が聞こえて来る物だと私は思っている。
それが入った瞬間に一瞬奇妙な間を挟んで、その後に勢いの無い「いらっしゃい」が聞こえて来た。
恐る恐る席に座る。
母親に小声で訪ねると、どうやら大将は昔と一緒の人らしい。
まあ歳はくってるが、カウンター越しには確かに母が通っていた頃に立っていたその人が今も立っている。
どうやら店にはお客は我々だけらしい。
どうひいき目に見ても、流行っているという感じには見えない。
期待がどんどん不安に変わって行く。
どうやら最初の一瞬の間は、いきなりお客が入って来て店の人間達が驚いたという間だったのだろう。
母の顔も少し強ばっている。
奥から女の人がお茶を持って来た。
それも恐る恐るである。
私の心の中の不安は段々と恐怖に変わって行く。
これから私達はどうなってしまうのだろうか。
ふと目の前を見るとネタケースにネタが無い....
まさか宅配専門でもなかろう。
いい知れぬ何か、そう、重力の様な物に体の自由を奪われて行く。
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