ワイン工場で、変死体が発見されたとの通報を受け、私がいる所轄刑事課の刑事たちが現場に急行した。

 捜査の指揮を執るのは、ベテランのA警部。

 私はA警部の下で働くヒラ刑事だ。

 赴任して初めての殺人事件なので緊張していた。

 若い女性が地面に横たわっていた。美しい女性だが、もう息をすることはできない。

「他殺だな。死因(しいん)は・・・」

 A警部はワインを眺めて言った。

 首の周りに青いあざがあるので、首を絞められて殺害されたものと推測される。

 私はA警部の発言に耳を疑った。

 ワインを見ながら試飲(しいん)は・・・、と言った。

 試飲をしたいのだろう。不謹慎な態度だ。

「試飲されたいとの発言は、いかがでしょうか?」