「死して屍拾う者なし」
なんとも残酷な言葉である。
犬死というが、まさに、そうである。
この言葉は、時代劇ドラマ『大江戸捜査網』で毎回使用される有名なナレーションである。
「我が命我が物と思わず、武門の儀、あくまで陰にて、己の器量伏し、ご下命いかにても果すべし なお死して屍拾う者なし! 死して屍拾う者なし!」
隠密同心 心得の条の言葉である。
隠密は、命を賭して、主人の命に従い、敵の秘密を探る。敵に見つかれば、自ら命を絶つ。非常な使命を負った人間である。
だから、死んでも、死体はそのまま放置され、弔ってもらえない。
時代劇の世界の出来事と思いたいし、これは、武家社会にあった過去のことと思いたい。
しかし、現実に起きている。
ウクライナでは、亡くなった一般市民、ウクライナとロシア双方の兵士が、戦争により亡くなっているが、弔ってもらえない人たちが多数いる。
そもそも、あまりにも悲しい死である。自ら望んで戦地に赴いた人はほとんどいないだろう。ロシアでは強制的に戦地に送られたり、ウクライナでは祖国を守るために戦っている。
戦争は絶対にダメだ。
どうして、戦争をしようと思うのか。
権力者の暴走により、戦争が起きる。
たった一人の権力者により、戦争が起きる。
この悲しい現実に、憤りとやるせなさを覚える。